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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第6章】国境の町へ向けて
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【06-07】再びのスタンピート(その1)

強制召集の警鐘がなり、急いで冒険者ギルドメニューザイ・コロラド支部へと向かう。


「たった今、シベリアオス帝国側のギルドから連絡があった。コロラド王国側の冒険者たちは、このまま国境砦に張り付いて、応援要請に備えよと。」


取るモノもとらずに?ギルドに到着した私たちに待っていたのはこの言葉。

そうして、ギルドマスターの命令で、私たち冒険者は徒党を組んでメニューザイ砦へと向かう。そして、解放されている砦の屋上部分から、シベリアオス帝国側の町を見下ろした。

そうして城門から視えたモノは、町の外壁の遥か彼方から襲いかってくる、暗闇に浮かぶ無数の赤い瞳の群れと、・・・・・・夜空を覆い隠す土埃。そして、上空からもまた、何やら真っ黒な雲みたいな塊が、轟くように押し寄せている光景だった。


この砦周辺にはダンジョンはないため、ちょっと前までのオークドカレッジの(当時はオークド村)のように、常に魔物大暴走スタンピートの脅威にさらされているが、今日来なくてもいいと思うのは私だけだろうか?

来てしまったモノは、しょうがない事だけど・・・・・・。


現在、コロラド王国側にいる私たちは、(シベリアオス帝国からの)応援要請があるまで待機中だ。

しかしだ。

地上を往く魔物に関しては(要請があるまで)待機でも構わないが、上空を往く魔物に対しては、あまり関係ない気がする。


「ギルドマスター。下の魔物に対しては、(シベリアオス帝国からの)応援要請があるまで待機でも構いませんが、上の魔物に対してはどうなんですか?あれも、向こうさんで対処できるんでしょうか?」


私は疑問に思った事を、隣にいる(コロラド王国側の)ギルドマスターに聞く。なおそのギルドマスターの隣には、コロラド王国側の兵士たちの隊長様がいるのだが・・・・・。


「そうだな・・・・・。こういった場合は、どんな事があろうとも待機だな。たとえ目の前の町が、魔物に襲撃されていてもだ。

これは、要請もなく他国の戦力が国境を超えた場合、戦争行為とみなされる恐れがあるため、こんな制約があるんだ。ただし、こちら側に何らかの不利益があると認められた場合は、要請がなくても戦力を投入する事ができる。

まあ、そこの判断が、ちょっとばかし難しい部分なんだが、そのあたりは、隣にいる隊長殿が判断してくれる事だ。」

「軍隊同士の戦闘の場合は、その例外規定は適用されないが、今回のような魔物大暴走スタンピートの場合は、上空を飛んでいる魔物がどんな種類なのかを確認できた段階で、攻撃を開始してもいい事になっている。」


ギルドマスターの説明に、隊長さんが追加で説明を付け加える。私だけなら、今の段階でどんな編成なのかを理解できるが、今回のような場合は、命令を出す隊長さんが確認できなければいけないとの事。

つまり、隊長さんのGOサインが下った瞬間から、魔物に対して攻撃を加えてもいい事になるわけだ。もしくは、向こう側から要請が出た段階となる。

戦争行為に見られかねないから、国境を軍が越える行為は、要請があるまでできないのは理解できる。ちなみに今回のような魔物大暴走スタンピートでの強制召集を受けた場合、私たち冒険者は最寄りの冒険者ギルドだ建っている国家に便宜上組み込まれる事になる。

それはこの強制召集自体が、町を治めている領主なり村長なりが出す依頼だからだ。依頼元が国家の属する領主なり村長なりなので、必然的に依頼を強制受諾する冒険者は、その国家に属する事になるわけだ。

その結果、軍機に縛られる事になるので、今回のような場合は『相手国からの要請があるまで国境付近で待機』となってしまうんだと。


まあ、それはいいとして、今の状況だとどちらが早いかな?

シベリアオス帝国からの応援要請が早いのか、魔物大暴走スタンピートの魔物たちが国境を超えるのが早いのか・・・・・。

時間との勝負だね。

そんな事を考えながら、遠くに目る無数の赤い点を塗ら見つける私たちであった。なお、私たちが何故司令官の隣にいるのかは、私たち『ご主人様とメイドさん』の8人が、オークドカレッジを襲った魔物大暴走スタンピートの殲滅立役者だと、ギルドマスターと司令官は知っているからだ。


そうこうしているうちに日が沈む。

これから真っ暗な夜になる。今日は何故か月が1つも出てなくて、さらに分厚い雲が空を覆っているため、本当に真っ暗闇である。

そんな中、遠くに目る無数の赤い点。

すべて魔物たちの瞳が赤く光っているのだが、ここまで多いと少し不気味な感じがする。今この砦町に襲いかかってきている魔物の数や種類を把握しきれていないので、町中が少し混乱している。特に、シベリアオス帝国の町では。


ちなみに、魔物が襲い掛かっている方面は国境を挟んだ向こう側、シベリアオス帝国からなので、今のところ私たちコロラド王国側には大きな混乱はない。

事実、国境を挟んだ向こう側からの応援要請がない限り、コロラド王国側からのアクションは行わない事が取り決められている。住民の避難誘導に関しても、何らかの依頼がない限り国境の門が開かれる事はないのだから。


「暗くなってきたな。誰か、明かりを灯せ!」


隣にいる司令官の号令で、城壁の上部に松明が無数に点されていく。しかし、遠くにいる魔物には松明の明かりでは届かないため、何の役にも立っていない。


「誰か!広範囲に光を灯せる魔術師はいるか!いたら返事してくれ!」


結構な数の魔術師が司令官に応えているが、全員が光の魔法の使用に躊躇している。

・・・・・まあ、それも仕方のない事だ。

司令官も、もしかしたらという感じで呼び射かけているので、魔術師たちの拒否の姿勢には怒る事もできない。この世界で普及している明かり系統の魔法は、照らす範囲が増えるほど魔力消費も比例して増えていくのだから。

それは、魔術でも魔導具でも同じだ。

いろいろと改良するための研究は進められているらしいが、これと言って効果の高い研究結果が発表されいないのが現状である。

まあ、ここは仕方がないから、私が立候補するか・・・・・。


「私が創った魔術なら、周囲10㎞四方を昼間のように照らす事ができます。ついでに言えば、消費魔力もごくわずかで、約12時間ほど照らす事が可能です。」


とりあえず私は、少し沈んでいるところに明るい話題を提供してみた。1日の長さは24時間なので、(約12時間持続するという事は)実質夜明けまで照らし続ける事が可能だ。


「君のオリジナルなら、詳しい理論などをこの場で教えてくれとは言えないな。それに、今は時間がない。できるのならば、今すぐにでもその魔術を発動してくれ。」


司令官の言質を得て、私はこの場で魔術を発動させる。もちろん無詠唱であるが、一応魔術名だけは唱えておく。


「【疑似太メイキングシ陽創出ャンシャイン】」


私が魔術を発動した瞬間、砦の約100m上空に、真っ白な球体が出現し、周囲10㎞四方を昼間のように明るく照らし出だす。いきなり広間のような明るさになった砦内や町中では、皆が呆然とその光景に取り入っている。

しかし、司令官も言った通り時間がない。

・・・・いや、時間がないのはコロラド王国側ではなく、むしろシベリアオス帝国側だろう。背後から強力な光に照らされて驚いているようだが、彼らは後ろの事よりもむしろ前に注視してもらいたいものだ。


それはそうと、今回は、ヨシナリが持つスキル守護者の鎧ガーディアンアーマーと、我らが旦那様ナオミチ君の持つスキル一夫多妻強化(ハーレム大王)にはお世話になりっぱなしだ。

守護者の鎧ガーディアンアーマーは、任意・常時発動型のハイブリットスキルなので、ヨシナリが仲間だと(潜在意識下で)思っていてさえくれれば、仲間だと思っている者全員に対し、その者の身の危険が迫った際に防御するスキルだ。奥様のマキは当然護る対象だとして、私たち6人も対象であってほしい。今のとこ度大丈夫そうなので問題にはしていないが・・・・・。


そして、我らが旦那様ナオミチ君の持つスキル一夫多妻強化(ハーレム大王)は、つい先日、正確に言えば、この世界における(3日3晩に及ぶ)一般的な結婚式(男と女の大運動会)が終了した2日前になってその効果を発揮しだした任意・常時発動型のハイブリットスキルだ。

このスキルは、ハーレムを築いた本人とそのハーレムメンバーに対し、ハーレムメンバーの人数に比例してすべての能力値が強化さる。つまり、(囲った女の子の)人数が多ければ多いほど、能力値が比例して強化されていく事になる。

現在ナオミチ君の奥様となっている人物ハーレムメンバーは、私・コトリ・ハルナ・ミオ・ぺニアの5人。1人増えるごとに2倍3倍と増えていくので、私達全員を囲んでしまった現在、6人全員の能力値は最大720倍となっている。

普段の生活でこんなあほみたいな能力値になっていたら、生活も何もあったモノではない為普段はほとんど封印しているが、戦闘時になれば話は別だ。どの能力を増やすのかも自由自在(今日の午前中に確認してきた)なので、各自が思い思いの能力を強化している。


閑話休題。


再起動を果たしたコロラド王国側の面々(たぶんシベリアオス帝国側も同じだと思ってはいるが)が目にしたモノは、空飛ぶ魔物たちが何故か滑空状態になって、次々と地面にいる魔物たちを巻き込んで墜落していく姿だった。

その数は全体の約8割程度で、8最後尾にいた者以外は、すべて落下している模様だ。

そして、地面に落下した後に地を往く魔物たちに轢かれてその命を刈り取られていく光景だった。


「たぶん・・・・・。」

「たぶん、なんんだね?」

「推測ですが、先ほど私が発動させたこの【疑似太メイキングシ陽創出ャンシャイン】、これが原因だと推測します。この魔術は、その名の通り疑似的に太陽を出すようなモノ。つまり、いきなり現れた太陽に目を焼かれた魔物たちは、視界情報を奪われて(脳が)混乱した結果、落下いしていったんだと思います。」

「・・・・・あの空飛ぶ魔物たちにとっては、理屈は知らないが致命傷を与えたと?」


私の言葉を引き継いで、司令官が答え合わせをします。私は、司令官に同意の頷きをして、推測の続きを話します。なんともまあ、魔物にとっては哀れというほかない結果だが、私たち防衛側にとっては、最大脅威の約8割が勝手に自滅していっただけだ。

地を往く者にとって、空からの攻撃は一方的であり、攻撃するにしてもその手段は限られてくる。その攻撃手段を持たない者たちは、一方的に蹂躙されていくだけだ。


そうこうしているうちに、その2割まで減った空飛ぶ魔物が第1陣として、シベリアオス帝国側の城壁に攻撃を開始した。


「あれって、ワイバーン?それにしても数が多いね。」

「・・・・そうだな。あれはドラゴンでも下位種族になるワイバーンだな。ヒカリちゃんが出したあの魔術でも、目をやられなかったんだからな。さすがはAランクの魔物だ。しかし、今回の魔物大暴走スタンピートは、何時ものとは違うな。」


私たちは、ドラゴンはおろかワイバーンすら殺しやり合った事はないが、【疑似太メイキングシ陽創出ャンシャイン】のよる強烈な光の攻撃にも耐え抜いた魔物だ。それなりに強い事は確かだ。しかし、殺しやり合った事がないので、その強さ自体は想像するしかない。

それよりも、聞きずてならない単語が・・・・・。

なお、ダンジョンがない町や村においては、魔物大暴走スタンピート自体が日常茶判事なので、”いつもの”という単語自体はスルーしておいても大丈夫である。


「いつもの魔物大暴走スタンピートとは違うって、どういう意味ですか?」

「ああ、向こうでもこっちでも、この町に限って言えば、魔物大暴走スタンピート自体は日常茶判事でな。ほら、ここは魔境のど真ん中だろ?

言ってしまえば、魔物たちのテリトリーなわけだ。だから、魔物大暴走スタンピート自体は、大小の差はあれど、月に2~4回程度は起こっているんだ。ダンジョンがあれば話は変わるが、この町の周囲にはダンジョンがないからな。」


フムフム、ダンジョンですか。

そういえば、あの鉱石を加工すれば、ダンジョンコア自体は人口でも創れるんだけど、ここで話してもいい内容かどうかの判断に困っている。現状、その加工ができるのは、私だけだからね。転移魔術の時と同じで、それだけに時間を割かれそうで怖いのだ。

私は、(この世界で)自由に生きたいのだよ。

聖女様関連の神事は仕方のない事とはいえ、それ以外はあまり柵を持ちたくはないのだ。


まあ、それはいいとして。


シベリアオス帝国側の城壁に取り付くワイバーンの群れ。その数は、約50匹ほど。そして、遥か彼方で滞空して、こちらを睨んでいるように見えるあの魔物たち(10匹くらいいるようだが)は何だろうか?

ワイバーンよりも後ろにいる事から、魔物の種類についてだいたいの想像は出来るが、はっきりするまでは黙っておく事にする。


「しかし、ワイバーンノブレスって、城壁すらも溶かすんですね?」

「いや、あれは溶けるというよりも、腐って崩れるといった方がいいな。ワイバーンノブレス攻撃は、当たった場所を腐らせるんだ。そして尻尾の先が触れただけで、生命にとっては猛毒になる。」


尻尾については、ゲームの設定(ファンタジー設定)そのままだったが、ブレス攻撃については知りませんでした。

そうですか。

ブレス攻撃に当たると、何でも腐らせてしまうんですか。それはまた、嫌な攻撃方法ですね。

そうこうしているうちに地を往く魔物たちも到着してしまい、腐って崩れ落ちた城壁から街中へと侵入する姿を捉えてしまった。

それを見ていた私たちのもとに、シベリアオス帝国側からの伝令が、息を切らせてやってきたのだった。

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