【プロローグ①】とある世界での出来事
それは、或る日突然世界の何処かに現れ、世界の一部を取り込み、最果ての虚無の世界へと引き込む。その空間は他の空間とは異なり、何処までも続く無限の漆黒であり、無機物・有機物を含め、存在すべてを否定する空間だった。
その空間には、時間の流れがなかった。そのため、引き込まれた物体は、まきこまれた引き込まれた瞬間に流れる時間を停止させられて、永遠にその瞬間を生きていく事になる。
この虚無の世界は、神すらも飲み込むのだ。
何時、何処にそれが出来るのかは、世界を創りあげた創造神でも、廃れ行く世界を無に還し、新たな世界の礎とする破壊神ですらも解らない出来事だった。また、それが引き込んでいった先が、世界の何処にあるのか、どんな理を有しているのか、世界の絶対なる2柱も理解の及ばない事だった。
2柱は、この世界の事を『虚無の世界』と呼ぶようになる。
虚無の世界に引き込まれたモノたちは、何人たりとも存在できない世界の於いて、その活動を停止しすべてを無に還していく。
それがすべてだった。
閑話休題。
太古の昔、この虚無の空間に、1柱の絶対神が落ちてきた。この空間に落ちてきたモノは、どんな存在であれ、その存在を維持する事は困難になる。
しかし、この絶対神は、己が管理していた世界を後継に譲り、存在していた世界を当てもなく放浪する、世捨て人ならぬ世捨て神として、有り余る余生を暮らしていた。
そのため、その身に持つ力も膨大だったため、その存在を維持し続けたのだった。しかし、新たなものを創りだす事は、後任の神にケンカを売る行為だと知っていたゆえ、その力だけは使う事が出来ないように封印を施してあった。
この出来事が、この虚無の世界に、生命を育む環境を創りあげる事に成功した瞬間だった。
絶対神が、この虚無の世界に落ちてきてから、幾星霜の年月が流れていく。
時折できる次元の裂け目から、様々な『モノ』がこの空間に引き寄せられてきた。空間に引き込まれた『モノ達』は、空間内ではその存在を維持できずに、次第に空間に溶けていき存在を”無”に変えていく。
それは、物質を維持するために大事な要素が、この虚無の空間には存在していなかったからだ。唯一この世界に生きていく事が出来る絶対神は、そんな光景を気の遠くなる年月の間見つめてきた。
そう。あれが、この世界に落ちてくるまでは・・・・・。
途方もない時間が経過した頃、この生ける物体が絶対神しかいない虚無の空間に、あるモノがこの空間に引き込まれた。
それは、数多の星々を従えた1つの小さな銀河だった。その名もなき銀河には、銀河を創った2柱の神が一緒に虚無の空間に引き込まれていた。
これが、何人も生きる事を許さなかった『虚無の空間』に、生命体を育む環境を創り上げる一石になった事は言うまでもない。
この小さな銀河を創りあげた神の名を、創造神『クインメシア』と、破壊神『ダークメシア』。
この銀河もまた、数多に落ちてきた者たち同様に、その存在を維持できずに消えていくかに思えた。しかし、この銀河は、創造神クインメシアがいたため、その運命に挑み続けて数億年が経過する。
絶対神は、銀河を守護するクインメシアとダークメシアにある提案を持ち掛けた。
「この空間に落ちてくる数多の命を救うため、そなたらの力を借りたい。」
絶対神は、空間内に落ちてきた『モノ達』が、生きていける環境を創りあげたのだった。
クインメシアとダークメシアはまだ若く、小さな銀河を創り出し、さあこれから生物を“創造”していこうかと思った矢先に、次元の裂け目に捕らわれてしまい、この空間に落ちて来てしまったのだ。
途方に暮れていた2柱は、絶対神の提案に同意し、銀河の中にある1つの恒星系を提示する。銀河はまだ生まれて数十億年ほどしか経ってなく、銀河を構成する恒星系以外は、何処も灼熱の大地だったからだ。
三柱は、この惑星の名を『テラフォーリア』と名付け、次元の裂け目より現れる数多の物質を迎え入れていく。
そして、この星に生命体を根付かせ、文明の礎とするため、自身の身体から3柱を新たに創り出す。
遍く物質をその身に迎え、育む環境を管理する空間神『スぺーリシア』。
遍く物質に悠久に流れる時間を与え、生死を管理する時間神『タイムリア』。
遍く物質を、その空間に引き留め、循環させる環境を創りだす重力神『グランヴィア』。
新たな物質を創りだし、不要になった物質をあるべき姿に戻し、世界の中でその物質を維持・管理する対となる神である創造神『クインメシア』と、破壊神『ダークメシア』。
そして、絶対神自らが、世界を固定し、新たな世界に創り替えるべく、虚無の世界の一部を切り取り、そのうえで次元神『ディメンシア』と名乗った。
こうして、この空間に1つの世界が誕生した。
世界を創り出した六柱の神は、固定した世界が崩壊しないように自身の体の一部を切り取って世界樹として創造し、唯一生命体が暮らす事が可能な惑星に根付かせる。さらには、それぞれの眷属となる神々を創造し、惑星の各地へと派遣する。
この神々のネットワークが、いつしか地脈と龍脈となって世界中を流れ出し、マナと呼ばれる魔力の素を創り出した。そしてこのマナは、この世界に降り立った生命体のすべてに取り込まれていき、いつしか生命体の体内で循環を始めていく。
ある時、この新たに生まれた世界に、1つの概念が、概念を構成する架空世界ごと次元の裂け目より取り込まれてきた。
その概念は、とある世界の技術で作り出された、架空世界にある概念であり、そのゲーム世界ごとこの世界に取り込まれてきた。
もともと固定化されていない架空の世界と概念であったそれらは、この虚無の空間に固定化されたこの世界の概念と似通っており、ごく自然に世界の中核と融合する事に成功する。
この世界同士が融合する際、架空世界の概念が不安定な世界故、安定しているこの世界の概念に合わせて自らを改変する。
架空世界の神々の持つ権能は、この世界に存在する自らの権能と類似の権能を持つ神に取り込まれていく。
架空世界が持っていた構成概念は、この世界の構成概念と融合し、新たな構成概念を構築。その結果、生命に取り込まれて成長してきた『マナ』が、『魔力』として生命体の体内で変革を起こす事になる。
そして、架空世界に存在した魔法と呼ばれる概念現象が、この世界に誕生する事になる。
魔法と呼ばれる概念現象は、いつしかこの世界に住まう生命体によって魔術と呼ばれるものに進化。
文明が興っては滅びる事を繰り返しながらも、魔術はそれぞれおんの文明時代において、急速な発展を繰り返し、また滅びの原因の一つともなっていく。
そして・・・・。
文明が興っては滅びる事を繰り返すうちに、当初は知的生命体のすべてが魔術を使用できていたのが、いつしか一部の保有魔力量の多い者しか使用できなくなっていく。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
何時、何処にそれが出来るのかは、世界を創りあげた創造神でも、廃れ行く世界を無に還し、新たな世界の礎とする破壊神ですらも解らない出来事だった。また、それが引き込んでいった先が、世界の何処にあるのか、どんな理を有しているのか、世界の絶対なる2柱も理解の及ばない事だった。
2柱は、この世界の事を『虚無の世界』と呼ぶようになる。
虚無の世界に引き込まれたモノたちは、何人たりとも存在できない世界の於いて、その活動を停止しすべてを無に還していく。
何処かの世界に存在する数多ある惑星の1つ。
その惑星に住まう生命体が、大規模魔術を発動させた。
その世界では、人族連合(人間種と亜人種と獣人種の連合体)と魔族連合(魔族種と鬼族種)が、長きにわたり戦争を繰り返していた。その戦争は、停戦と再勃発を繰り返しながら数百年間続き、もはや何が原因で戦争が始まったかも、双方の歴史書には記される事はなかった。
この戦争に勝利するために、人族側が苦肉の策として用意した出来事。
それが、異界から勇者を召喚する事だった。
勇者召喚のため、魔法理論を組むのに約5年。
理論から実際に、召喚魔法を発動させるための魔法式を組むのに約2年。
召喚魔法の詠唱を詠むのに、交互に魔術師を変えながら行う事約7日7晩かかった。
そして、魔力が最も世界に満ちる皆既月食の日を選んで、召喚魔法を発動させた。
その一方でまた魔族側も人族側に勝利するため、魔王となるモノを異界から召喚する。
もとより、魔法的見地からすれば、人族連合よりも優れているのが魔族連合の強みでもある。魔王召喚のための術式構成は、人族側よりも優れ、わずか1カ月で魔法理論を組むところから、召喚儀式までを進めてしまうほどだった。
そして、魔力が最も世界に満ちる皆既月食の日を選んで、召喚魔法を発動させた。
つまり、このどこか知らない世界では、魔法と呼ばれる現象が、日常生活の溶け込んでいる世界である。
その2つの召喚魔法が、偶然にも同じタイミングで行われた事を知らずに・・・・。
召喚自体は双方とも成功し、この世界では新たな勇者と魔王が誕生する事になる。
人族連合には、男女四人の若者が、異世界より召喚される。
一方、魔族連合側も、魔王とその幹部となるモノを複数の世界から召喚する事に成功する。
この召喚された者たちにより、数百年間続いた戦争は、あっけないほど短期間で終焉を迎える。
その影響で、いくつかの世界に次元の裂け目が出来、いろいろなモノが世界を渡っていく。
そのうちの1つの裂け目が、とある世界に存在する、自動車専用の長大トンネルの中に出現した。
そして・・・・。
そのトンネル内を、たまたま走行していた者たちをすべて飲み込んで、次元の裂け目は短時間で消滅をする。
何処までも続く漆黒の闇の中、一際明るく光り輝く一筋の光点が現れる。
それはまるで、大宇宙に輝くはぐれ星のように決まった軌道を持たず、ただひたすらに、頑なに何処までも直進していく。
光は、突然幾筋の帯に分裂し、数百個の光の塊となって光速に近い速度で闇の中を突き進んでいく。分裂した光の塊は、何かに導かれるような軌道をとり、ある塊は、途中で失速して漆黒の闇に消えていき、ある塊は、速度を維持したまま先頭を突き進んでいく。
それはまるで、今生の別れを体現するかのように・・・・・。
とある光の塊が、闇の中をまっすぐに進んでいく。
闇の中に存在する唯一の銀河系、その中に存在する惑星の一つに、光の塊は突入していく。
惑星の大気圏に突入すると、さらにいくつかに分裂して、大部分は惑星にある大陸の各地へ、一部は、残念ながら大洋のど真ん中へと別れて激突していく。
この日、この惑星に存在する6本の世界樹が、眩しく光り輝くという現象が確認されたという。