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007 バベルの塔

007 バベルの塔



「どおりゃああっ!」

 俺は巨大な氷塊を寸手で躱す。

 背後から襲い掛かる青い竜は、氷の槍を雨あられの様に吐き出して来た。俺は必死でその弾雨を掻い潜る様に右に左に回避を繰り返す。掛け声は気分だ。せめて気魄だけは負けん!所詮大きめの蝙蝠位しか無い俺の移動速度よりも竜の方が早い。まともに逃げ切る事は不可能だった。


「なんであんなにデッカいのにフワフワ飛んでるんだよ!」


 必死に羽ばたく俺に失礼だろ!


『えっと、剣と魔法のファンタジー世界だから?』

「そんな事わかってるよ!」

 てかなんで疑問形なんだよ!

 あと、頭だけの主人公が羽根を生やして空を飛んでるのはホラーだよホラー! モンスターの枠もはみ出しかかってるから!


『いや、意外とキモカワ──いやグロカワで女子高生に人気が出るかも知れませんよ~』

「出るかっ!んなモン! この世界の何処にピチピチ女子高生ギャルがいるってんだよ!」

『う~ん、ギャルには無理かもです~てかもはや死語ですよね~~ギャルって』


 ブホォッ!

 目の前を火球が掠める。炎は直撃せずとも俺の羽根を焦がしていった。威力半端無い!

 どうやら飛びながらタメの多いブレスを諦め、単発の弾幕を張る方針に切り替えた様だ。何気に憎いくらい知恵が回る。デカイのにさすが正当なる竜だ。

 そこへさらなる雹弾がまるでクラスター爆弾の様に爆散した。数千発の雹弾は完全な弾幕を形成し俺から逃げ場を奪った。

「ちぃっ! ZuWatch役に立てよ!」  

 俺は咄嗟にバックの中を探り触手で引っ張り出した。良かった六本あって!何気に触った物が視えるんだよ!ハイスペックなのかね?

『直上! 火焔弾来ますよ──っ!』

「ちいぃいっ!」

 二匹は巧みに射線を確保しながら、俺を挟み込む様に追撃を繰り返して来る。必ず一匹が視野の外に身を置く様に移動して来るのだ。

「うおおおっ!弾き返したる! 上にな!」

 俺は咄嗟にZuWatchを正面の雹弾に振り翳し、そのまま真上に弾き返した。少しは止めれるか!? と思ったが赤い竜の方が遥かに上だった。直前まで迫った火焔弾はそこで──爆散したのだ。

 目の前の雹弾を躱したと思った直後火焔弾が大きく揺らいだと思った次の瞬間──

「──拡散弾だったのか」

 唖然とする俺の直上で数十発の炎の塊に爆散し──猛然と降り注いで来た。


(雹弾は足止めだったのか?)

 そう、俺を止め、大技を直撃させる為に、威力の弱い範囲攻撃で回避では無く防御を選択させ、そこへ撃ち込みやがった。


 頭上を覆い尽くす炎の雨


「死んだ……」


 いや……まだだ!

 竜だからって人を舐めやがって、どうせ虫でも潰すつもりで襲って来やがったんだろうが、タダでは済まさん!

 たが何処に逃げる!

 下に──いやダメだ!

 咄嗟に俺はZuWatchを振り翳し、広がる爆炎に突撃を敢行した。全周防御は無理でも一瞬ならいける!……いけるよね?

「どらゃあああああっ!」

 俺は頭上を覆う炎の壁に突撃した。

「頼むぞ!完全防火なんだろっ!」


 俺は炎の壁に飛びこんだ。

 全てを賭けて。

 ドンッ!!!

 ZuWatchの周囲に展開する障壁が炎の壁を穿つ!一瞬の衝撃の後、俺は炎の壁を飛び出した。下に逃げれば地面に妨げられ、炎の海に飲まれると判断した俺は、ZuWatchの性能に全てを託したのだ。一瞬だけもってくれと。

「勝った!」

 ジュウウウッ

「ほあっぢゃあああっ!焼けてる!触手が焼けてるよぉっ!」

 煙を上げ俺は翼を翻す。少しぐらい焦げたのが何だ!生き残ればそれでいいんだよ!

「えっ!?」

 その時、目の前に巨大な口が広がり、俺を咥えこまんと迫る。

「あれ? 竜?」

『そりゃ真上から火焔弾を落とされて真上に突っきれば目の前に居ますよね~』

「おひぃ~~!」

 俺は閉じられる口を必死に躱し、ほぼ直角に急旋回をかました。油断したのか竜の方は俺を捉え損ない、慌てて襲い掛かった勢いで急降下勢いを止める事が出来ず、そのまま真下の〈ドズウンッ!〉青い竜の真上に激突した。

「ウゴオオオッ!」

「グガアアアアアッ!」

 知恵の回る竜も、さすがに状況判断を誤ったのか、まさか爆散する火焔弾を突破するとは思わなかったのだろう、二匹は激突し、絡み合うように墜落していった。


『まさか上に来るとはさすがに想像も付かなかったんでしょうね~』

 しかし、それでも地面に激突しながらも、諦める気は無いのか、再び動き始める。土煙のなか、俺に向かって雹弾や火球を次々に放って来た。


「しつこい奴等だ!」

『聖域の守護獣ですから、死ぬまで襲って来ますよ~』


 俺は焦げた触手を物ともせずに、翼を羽ばたかせ、必死に塔を目指す。あと少しだ! せめて倒れた建物の辺りまで逃げ込めれば何とかなる!

 その時、背後から巨大な殺気が迫る。

「復活はええっ!」

 直撃コースにある雹弾をバレルロールしながら躱し、そのまま低空に舞い降りる。

 すると竜は地面に接触し、再び高空に舞い上がった。

「よし、低空では俺の方が小回りが効いて有利だ!」

 と言うか舞い上がる余裕が無いんだけどな。それに地表すれすれを飛べば上空から急降下しての攻撃はさすがの竜でも難しいのだろう、襲いかかって来ない。

 だだ〈ドオンッ!〉と火球が地表をえぐる。俺は爆風をキリモミになりながらすれすれを躱し、地表を縫うように飛んだ。

『まるで、射的の的ですね~~』

「反撃なんか出来るか!」

 そう、竜と撃ち合う事など不可能なのだから。


 二匹の竜は火球と雹弾をありったけの魔力を込めて放って来る。巨大な火柱や氷柱が間断無く俺を狙っていた。

 俺はやっと倒れた建物のエリアに辿り着いたこれで身を躱せる筈だ。

「いくら何でも建物の陰なら飛び込めま──」

 次の瞬間、真横から赤い竜が飛んで来た。速度は圧倒的に上なのだから、躱し続ける他は無い。そして六回建てのビルを丸ごと押し倒し、ちょこまかと逃げる俺を生き埋め逃げるしようと目論んで来た。

「──ダメか!」

 ダメだ! まるで遮蔽物になら無い。紙のように引き裂かれるビルはなんの障害物にもならなかった。

「にゃろうっ!」


『あと少し! あの石柱が境界です!』

 そう言われて振り返ると、モノリスの様な石柱が幾つも並ぶのが見える。そして──その奥で──一人の少女が──フワフワと浮いて俺を見ていた。

「ギャルだっ!」

『今そこにこだわる!』


『ウレシイゲド、ギャルをナノルニハスコシナガイキシスギカナ?』


 白いワンピースの様な服を揺らしながら、間の抜けた声で笑う少女は、妖しげな光を放って、俺を誘っている様だった。


(何かあいつの方がヤバいんじゃね?)


 しかし、俺に悩む余裕は無い。背後から迫る火炎弾と雹弾はありったけの魔力を込められたものだった。直撃すればたとえZuWatchで防いでもタダでは済ま無いだろう。


「毒を喰らわ皿までも──か」

『は、はやく! 間に合いませんよ!』


 次の瞬間、俺は爆風と凍りつく冷気を感じながら、結界に飛び込んだ──いや、吹き飛ばせれたのだ。


「どわぁああっ! 悩む隙も無いのかよ!」


 コロコロとまた転がる俺は、やっと止まった場所から、そっと後ろを振り返る。

「……入って…来れ無いのか?」

 それだけでは無かった。

 炎も氷も、石柱で完全に止められているようだった。爆炎もこちら側には届か無い。

 二匹の竜はジッと俺を睨み付ける。


「無理矢理に突破しないのは、それが不可能だとしっているから──なのか?」


「正確には、出られないんだけどね」


 そして、俺の真上に、フワフワと少女が舞い降りるて来る。


「出られない?」


「そう、神の結界は、あらゆるモノを遮断するのさ」


 そして、どう見ても女子高生位にしか見えないその少女はこう続けた。


「ようこそ、ここはバベルの塔、神々に近付こうとして、神の怒りを買い、天罰を下された我らバビロニア王国の聖地だ」


『そして狡猾な蛇に騙され、知恵の実の果実を食した、最初の民にして、最初の言語を産み出したオリジン-オリジン-オリジン──【初まりの人】の末裔です』


 そうオシリィは言った。


「【初まりの人】だって?」


 俺は美少女を見上げ、真剣な声で聞いた。決して顔色を変えず、動揺を、おくびにも出さない様に、じっと見上げた。


(ノーパンかよ)


 俺は美少女を見上げ──少しだけご褒美を貰った──様な気がした。




 不可抗力だよね?

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