みゅーっとダンジョンマスターになりました。
「ここはどこ?私は誰?」
目が覚めて、おおよそ一辺6mの石壁の窓のない部屋にいたら誰しもそう思うだろう。しかも、自分の名前さえ思い出せないのだから強ち冗談にもならない。
「ダンジョンマスターの覚醒を確認しました。」
不意に、中性的で淡々とした声が流れる。
「おめでとうございます。あなたは、第44177582迷宮、以下この迷宮とします……のマスターとして、第12迷宮〈地球〉より召喚されました。つきましては、誠に勝手ながらこの惑星〈クラリア〉のダンジョンマスターとして必要な身体構造の改造を行った上で、記憶の大部分を消去させて頂きました。なお、その際、迷宮の運用に必要な最低限の知識を挿入させて頂きました。予めご了承ください。…………」
何と言うことか。さらっと地球で過ごした僕の21年の人生とその先を潰して、この第何千何百万迷宮の主にさせられるとは……。確かに、僕の覚えてる限りの地球では目が覚めたら見知らぬ部屋に寝ているなんて事はないはずだし、光源のない部屋で明るくも暗くもなく普通に視界が確保されてたりと、この声を信じるに値する事象は多々ある。……ダンジョンマスターだっけか。とりあえずその最低限の知識とやらを活用してみるか。
まだ長々と続く事務的な説明を聞き流しながら、
「スライム1体を、召喚。」
「また、クラリアでは……スライム1体を0Pで召喚します。よろしいですか?」
誰の声かわからない説明が中断され、確認ボイスに変わる。応、と返すと、僕の目の前に白い魔方陣の様なものが展開され、
「みゅー。」
スライムが、召喚された。