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9 息を吐くように嘘もつけるようになりました

魔王の王座で魔王を犯した。

感想は、最低だったの一言につきる。

いくら美しくたって、もともと手足のない女を犯す趣味は全くなかったし、快楽など全くないのだから仕方ない。しかも相手は魔王だ。

魔王は最初こそ驚いた顔をしていたが、ずっと俺の方を見続けていた。

特にいやがる言葉を吐くこともなく、目をそらすこともしない。

それは、魔王というプライド故か・・・とにかく俺は面白くなかった。

苛立つ気持ちのまま、ただ何度も犯した。

途中で魔王の身体が再生し、俺の背に縋り付くように手を回したので驚いたが、

そのとき魔王の目はうつろで、ほとんど無意識だったようだ。

この無表情魔王の弱った部分が初めて見えた気がして、そのままにしてやった。

魔王のくせに、体温は人と同じようにあった。

すこしだけ苛立ちが消えた。


意識を失った魔王を、魔王城から遠く離れた隠れ家に連れて行った。

人里はなれた森の奥にあり、俺が魔族の拷問に使っていた部屋があった。

聖剣の姿を変え、魔王を拘束する。

魔王の魔力が一気に縮小するのを感じた。

裸で身体を横たえた魔王は、もはやただの美しい女でしかなかった。

その姿にあらぬ気持ちになりそうになり、急いで目をそらし、部屋を出て行った。






その後、何度か魔王を犯した。



どうやら魔王は頭が悪いらしい。

馬鹿のひとつ覚えのように俺の名前をその美しい声で呼ぶ。

その上、この行為が屈辱ではないという見え透いた嘘もついた。

魔王が勇者に犯されて、屈辱でない訳はない。

その証拠に、最近は最中に苦痛の表情を示すことが多くなった。

どうやら最初の頃無表情だったのは、ただのやせ我慢だったようだ。

あと何度か犯したら、そろそろ始末する頃合いかもしれない。


(しかし、まだ足りない・・・・まだ・・・)


そんな日々が続き、俺はひどく疲れていた。

どうやら、この行為は俺の精神にひどいダメージを与えるらしい。


(しばらく、やつから離れた方がいいかもしれない。)


おれは、ふと思いつき、久々に師匠の元へ訪れることにした。





師匠は名を馳せた、ものすごく有名な旅の剣士だった。

初めて出会った時は、既に50歳のおっさんだったが

20代の現役バリバリの時は、今の俺より強かったんじゃないかとさえ思う。


師匠は重い病気を患っていた。

治すことの出来ない死の病だった。

旅の途中でそれを知った師匠は旅をやめた。それからは小さな村はずれの森の中に、ひっそりと暮らしている。

俺は秋も深まった紅葉の中にある小さな師匠の家を訪ねた。


「師匠」

「おう、シオン。」


突然訪問した俺を、師匠はいつも変わらず迎え入れてくれた。ベットの上だが。

しばらく見ない間にまた随分痩せていた。


「お前、聖剣手に入れて、魔王城に向かったんじゃなかったか?」

「なんだよそれ、どこからの情報だよ。」

「そりゃあ、世界の勇者様のお話は自然と耳に入ってくるもんさ。」


ガハハと笑いながら、細くなった腕で俺の背をたたく。

師匠は俺を「勇者様」として育て上げたことを、何よりも誇りにしていた。

実は俺が、師匠のいう理想の勇者様像とはかけ離れた人間になってしまったことには気づいてない。

家で、魔王を監禁して陵辱しつづけてると話したら、一体どんな顔をするだろうなぁ。と思いながら笑顔で師匠の話に応える。


「残念ながら、まだだよ。聖剣を守っているっていう魔族はめちゃくちゃ強いらしいからな。もうちょっと鍛えてからじゃないと、いまの俺じゃ、とても歯がたたねえよ。」

「そうなのか?お前も随分強くなった気がするが、おれも鼻が利かなくなったかな。」


このように息を吐くように嘘もつけるようになりました。と心の中で師匠に報告した。


「師匠、随分痩せたけど、ちゃんと食べてるのか?なにか精のつくものでも取ってきてやろうか。」

「ガキが心配してんじゃねえよ。まずは自分の心配しろ勇者様。おめえも見てない間に、随分やつれたじゃねえか。ちゃんと寝てんのか?目に隈があんぞ。隈が。」


最近は、行為の度に魔王の姿がリツカの姿に重なり、夜はよくあの日の悪夢を見るようになった。

その度にうなされて起きてしまうので、寝不足ではあった。


「・・寝る間を惜しんで修行してるんだよ。心配すんな。」

「そうか。まぁほどほどにな、と言いたいとこだが・・・」


と師匠が珍しく言いよどんだ。


「何だよ」

「俺はもう長くねえ。」


それは、俺が師匠に拾われてから、初めて聞いた師匠の弱音だった。


「・・・なに・・をいって・・」

「自分の身体のことは、自分が一番良く分かってる。おそらく、冬はこせねえだろう。」


俺は頭が真っ白になった。

師匠がこの手の嘘をつく訳はないと分かっていても、冗談と言って欲しかった。

もはや、この世界で身内と呼べるのは師匠だけで

俺を勇者として見てはいても、一人の息子としても見てくれている、唯一の人だった。


「別に、おまえが魔王を倒せるかどうかってのは、心配してねえ。ただ、魔王を倒した後のお前の晴れ姿を見れないかと思うと死んでも死にきれねえのよ。さっさと魔王なんぞ倒して、俺を安心させて逝かせてくれよな。」


そういって、青白い顔をした師匠は笑った。

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