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8 お前、頭がわるいのか?

目を覚ますと、そこは私が思い出せないほど長い間座り続けた王座ではなかった。

王座のある広間よりだいぶ小さい小屋のような部屋に

私は裸で横たわっていた。

中は陰鬱としており、様々な拷問器具と思わしきモノが置いてある。

その部屋の一角の牢屋に、私は閉じ込められていた。


牢屋から一番離れた角に一つだけ扉があり、その扉の小窓から唯一光が差し込んでいた。


(シオン・・・?)


起きた瞬間に、魔王城での出来事が思い出された。

私はどうやらシオンにここへ連れてこられたらしい。

そう思い、彼の姿を探そうと身を起こそうとすると、私は自分が拘束されていることに気づいた。


ジャラッ

既に再生されていた両腕と両足は、銀色の鎖でそれぞれ拘束されていた。

首にも同じ銀色の首輪が取り付けられ、そこからのびた鎖が壁に固定されていた。


(力がでぬ・・・)


普段であれば、このような拘束具は粘土のようにたやすく千切れるが

なぜか、その銀の鎖に触れていると力が出なかった。

不思議に思い、その鎖を観察していると、突然扉が開いた。

シオンがそこに居た。


「よお。気分はどうだ?魔王サマ。」


彼は、にやりと歪んだ笑みで笑いながら、こちらに向かって歩きだす。

彼は魔王城で見たときのような、鎧や聖剣を身につけておらず、軽装だった。


私は、昨日散々彼をじかに見て触れたにも関わらず、未だに彼がそこに存在してるのが信じられなくて、じっと彼を見つめていると、彼はさらに笑みを深めた。


「さすがに腕と足が生えてきたときはビビったわ。さすが魔王サマ。そこらの魔族とはケタが違う。本物の化け物だな。」


笑いながら、彼は近くの椅子に腰を掛ける。


「シオン」


「名前を呼ぶな。」


それまで機嫌良く笑っていたシオンは、一気に眉間に皺を寄せた。

口をつぐむと、彼は鎖を指を指した。


「力がでないだろ、その鎖。聖剣って便利でさ、ある程度姿形を変えられるんだ。そして聖剣の鎖に拘束されてるお前は、ほとんど力を使えず無力になるってわけ。」


ほんっと、聖剣て便利だよなぁ と感想を漏らす彼の言葉に、なるほどと思いながら同意する。

本当に対魔王に特化した剣だ。


すると、シオンは立ち上がり、牢の鍵を空けて中へ入ってきた。

間近にシオンの気配を感じて胸が高鳴り、腕がビクリと反応した。

その反応にシオンはニンマリと笑みを浮かべた。

そして、ぐいっと私の顎を掴み、


「俺が怖いか?魔王。勇者である俺に散々犯されて屈辱か?」


クククと笑いながら、シオンは私の唇をなぞった。


「お前のそのデタラメに美しい身体が、芋虫のように姿を変え、なす術もなく蹂躙されてどんな気持ちだ?」


そう耳元で囁く彼の言葉に、応えようと口を開く。


「シオン」

「気安く呼ぶな!!」


ガンッと殴られ、シオンは一瞬で鎖を聖剣に変えると、魔王城でしたことと同じように剣を振り下ろした。







どれくらい時間が経っただろうか。

行為が終わり、彼は私の血で汚れた服を脱ぎ捨てていた。

その表情は全く晴れておらず、ひどく不機嫌そうな顔で脱いだ服を一瞬で燃やしていた。


私はそんな彼を眺めながら、行為の最中に再生した腕で身体を起こした。


「シ・・オン」

「・・・お前、頭がわるいのか?」


さらに眉間に皺を寄せながら、シオンが視線だけをこちらに向ける。


「なぜ・・・こんなことをする・・・?」

少しの怠さを感じながら、シオンに問いかける。

「あ?」

「見たところ、この行為が好きではなさそうだ・・・」


行為の最中、シオンはいつも苦痛そうだった。

長い間、シオンを水盤から見つめていたが、彼にこういった性行為の趣味があったとは思えない。

そんな彼の姿を見ていたくはなかった。


何言ってるんだ?というようにシオンはこちらを見つめ返す。


「んなの決まってるだろ。復讐だよ。お前に屈辱を与える為の・・・」

「ならば、この行為は意味がない。」

「は?」

「私は、この行為が屈辱ではない。」

「・・・あぁ?」


シオンに直接触れられ、常に彼を感じることが出来る、この行為に

私は全く嫌悪感を抱けないでいた。

腕と足の痛覚は麻痺させているし、痛みはない。

下腹部の疼きのような感覚は、むしろ癖になりそうな、そんな気すらした。

この行為がただ彼に不愉快な気持ちしか与えないのであれば、無意味な行為だと思った。


「・・・おまえ、身体を切られて、勇者に犯されているんだぞ。」

「私は、シオンに犯されるのが嫌ではない。」

「・・・呼ぶな。」

「・・・・」

「変態かおまえは。」

「わからないが、とくに今までこのような行為を望んだことはない。」


そういって、シオンを見つめ続けていると

再び顎を掴まれた。


「そう言って、俺にこの行為をやめさせようと思っても無駄だぞ。

俺はお前に死にたくなるほどの苦痛を感じさせてから、殺す。

命乞いをしたって無駄だ。」

「・・・命乞いをする気はない。」


シオンが私に復讐をしたいという気持ちは当然だ。

あれほど魔族を憎んでおり、魔族の頂点に立つ私を、シオンが殺さないはずがなかった。

しかし、出来る限りながく生きたいとは思っていた。

こんなことを思うようになったのは、シオンとこうして触れ合うことが出来たからだろうか。


シオンは数秒私を見つめると、目をそらし顎を離した。

彼は一瞬で、部屋に浄化の魔法をかけると、部屋を出て行った。


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