1 私は生まれた時から魔王だった
私は生まれた時から魔王だった。
生まれたその瞬間から王座に座り、多くの魔族を従えて生きてきた。
魔族を支配することを望まれ、特に何を思うまでもなく望まれるまま悠久の時を生きてきた。
魔族は魔力を食らう。
私が生きているだけで魔族の糧となり、彼らは何の気概もなく生きることが出来た。
魔族にとって私は生きる源であり、つまり彼らが私を守り、従うのは当然で。
私が下した命令を守れなかったものを、罰として消し去るのもあたりまえのことだ。
魔族もそれを不満に思うこともなく、当たり前の様に受け入れ、多くの魔族が消えていった。
わたしは魔族が望むまま、人間も支配した。
人間は、彼らにとって趣向品のひとつであり、
食べるもの、犯すのも、壊すのも最高の一級品であるらしい。
私には、そもそも趣向品というものが何なのか検討もつかないので、全く興味がなかったが
魔族達の楽しみであるならと、一定の数を保てるように気を配り、あとは魔族達の好きにさせた。
そのような生活が、何十年、何百年、何千年・・・
いったいどのくらい過ぎたのか
ただただ日々を過ごしていたとき
私が生まれた瞬間から身につけていた首飾の黒い宝玉が、突然光を放ち白く変化した。
首飾りの突然の変化に、私は、そうえばこんなものを身につけていたな と
気にも留めず、白い宝玉から目を離した。
すると、いつも私の座る王座の傍らに立っていた、黒い翼を持つ赤髪の魔族が
その黒い肌を心なしか青く染め、すぐに王座の前に跪いた。
「我が君」
その瞬間、この魔族が、自分の一番近くに仕える
ロキという名の翼種族であったことを思い出した。
「なんだ・・・?」
こうやって言葉をかわすのも、昨日のことであるようだし、何年ぶりのことであるように思われた。
「どうやら勇者が生まれたようです。」
・・・ユウシャ?
ああ勇者か と、その瞬間理解した。
私が生まれる百年前
先代の魔王が、勇者に命を奪われたのだ。
唯一、魔王を死に追いやることができる存在。それが勇者だった。
長い歴史の中、何度も魔王と勇者は現れ
どちらかを死に追いやる。
それは、決められた歴史だった。
「そうか。」
そして、私はそうであると決められたように
勇者を探し出して殺すように命令した。