剣士ポリアナのマイペースな前線防衛
「お前、アホかっ!?」
バラードは、目の前の緊張感のない光景に激怒した。
もっとも、愛情を持ってのものなのだが。
「だって、人形さんたちいると楽しーよ? ひゃくにんりきって感じだし」
「あのなあ……」バラードはため息をつく。
「前線基地の中を人形まるけにするなんて、傀儡子でもやらないと思うぞ? アスファ達に何か大きな荷物を持たせるから重要な物資でも入ってるかと思えば……」
「お人形さんは大切な友達だよ。だから、じゅーよーぶっし」
「いやいや、大切な友達なら城に置いて来る方が安全だと思うんだがな~」
「おうえんしたいって言ってる」
「お前……」
「この、ネコのマルケロ君も言ってる」
「まさか、本当に人形と喋れるのか!?」
「ううん、喋れないけど?」
「じゃあ、何なんだよ」
「昨日、夢で見たんだ」
「あ、そう……」
バラードは、明日の激しくなるであろう戦いがちょっと不安になった。
けれど、それはちょっとの事だ。なぜならポリアナは、その呑気な性格からは想像できない優秀な戦士で、「アウルファイン」でもトップクラスの能力を持っているのだから。
結局、翌日の防衛戦は帝国側の8000兵を、共和国側は10分の1である800の兵をほとんど損害を出さずに撤退に追い込んだ。砦の窓に置かれた沢山の人形たちは、一体として傷つく事も無く、その逃げて行く兵士達を、永続的かつ呑気な顔で見送ったのだった。