二話
あれこれ言ってる間に、箱モノの前に立っている中学生4人。箱モノとはつまり、何を目的として作ったのか誰にもわからない多目的センターのことだ。そこに無駄においてあるテーブルとイスは当初の何らかの使用目的を一切無視して学生たちのたまり場になっている。
果たしてそれでいいのかー私の知るところではないが、ともかくここの管理者も近頃では公認の現状だから問題はないだろう。むしろこれだけ広い公共施設使わないよりも使った方がいい。それも健全に(というのも建てられたばかりのころ、ここで何らかの詐欺が横行していたという噂だ。そんなよからぬ大人に使わせているよりは、学生が勉強の場にする方がよっぽどいいに決まっている)。
「そこのテーブルが空いてるなー。」
「うん。じゃあそこでいいよ。」
適当に決まる座席。
「今日は英語の予習と数プリと・・・なんか他にあったか?」
「古典の訳が明日当たるかもよー?」
「それは当たらないことを願っておこう。」
「おい、そんなこと言ってないで、やっておけよ。」
「だってあの禿げどうせ出席番号順でしか当てないぜ―だからどうせあたらねーよ!」
そんなYにみんなからのつっこみ。
「禿げってお前が言うなよ!」
ちょっ・・・これはでこが広いだけだって言ってるだろー!という感じで進む宿題。いや進んではいないのだが。
「あーだるいな。」
きて5分もたっていないのにTのため息。
「せめて一文字でも書いてから、つぶやいてくれ。」
K子と私はしょうもない男子2名を放って、英語と格闘を開始。
「Y、そういえば、この間貸した漫画返してないだろ?」
「あーそうだったな。今度返すよ。」
「それ言うの3回目。返す気ないだろー?」
「返すって。ちゃんと返す。」
「ほんとかよー。いや、別に返してくれなくてもいいからさー。次の新刊買ったら俺に先に読ませて?」
「わかったよ。」
「それでさー・・・」
「T君!」
K子が久々に鋭い視線をTに浴びせる。それからはしばらく沈黙のまま数十分。