一話
M中-ド田舎市ド田舎町、唯一の中学校。私の通う中学校で、ごくごくつまらない学校。
それでも合併されているからクラスは7クラスほどあって、生徒の数もほどほど。といってもまぁ田舎者の集まりで、面白いことなんて何もない。そんな最高にしょぼい学校に通っている私、S子。取りあえず、皆様よろしく。
私がうちのクラスで一番仲がいいのは、K子と禿げかけのY。K子はいたってありきたりな顔立ちの中学2年生。多分一回では覚えられないほどの平凡さ。最近自分はむしろYとよく会話するけれど、Yだって大よそありきたりな中学男子であって、イケメンなどではない。むしろうちの学校にはイケメンなんていない。
「しかもYは、禿げかかっているんだよな。」
Yとの会話中、ふとつぶやいた一言にYはキレかける。
「ちょっとお前、脈略もなしにそれかよ!言っとくけどなぁ、これは禿げてるんじゃねぇ。デコが広いだけなんだ!」
「禿げ初期症状者はみんなそう言うんだよ。」
「憐れんだ目で見るなよな!S子!」
K子はいつものやり取りに飽きたみたいにあくびしている。
「暇ねぇ。」
「うん。まぁ確かに。」
Yが懸命に前髪でおでこを隠そうとするのをぼんやり見つめながら、校庭をみた。野良犬が呑気そうにグランドを走っている。生徒は午後からの授業を前にしてみんな揃って眠たげで犬になんて気付いていないみないだ。気付いたところで、中学生で犬を追っかけまわすなんてことは、さすがの田舎者でもやらないが。
先生が教室に入ってくるのを横目で見つつ、犬と交互に見比べた。本当にうちの数学教師は犬に顔が良く似ているのだ。
放課後―。
「S子、図書館に行くなら一緒に連れて行ってくれよ。」
例のごとくYがやってくる。
「いやだよ。一緒に図書館一週間皆勤賞になるだろ?付いてくるなよ、ただ宿題するだけなんだから。」
「家だと勉強はかどらないからさ。Tも一緒に来たがってるし、お前はK子誘えばいいだろ?」
「だいたい、あそこはおしゃべり出来ないから、そんなに大勢で行っても意味ないだろ?」
「うーん。それじゃ、箱モノに行けばいいだろ?」
勝手に予定を立ててしまうY。いつのまにTまで誘ったのか…。箱モノに行くのはいいとしても、あそこは高校生も多いから、中学生が混じって変な難癖をつけられないか心配なのだが。