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  作者: 那由多
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第五話

「ここか。」

「あぁ。」

政庁と同じく黒い上着で顔を隠した男二人が学園長しつの前にたたずむ。

一人は大柄でもう一人は小柄だ。


「俺はここまでだ。これ以上動くと今後の活動がしにくくなるからな。」

「それもそうだ。ここから先は任せろ。」


小柄な男が姿を消す。


「さて、仕事の開始だな。」

残ったもう一人の男は学園長室の扉を蹴り開けた。






「サーシャ、なんか今音しなかった?」


廊下のT字路でシーラは突然足を止めた。

「音?特になんにも聞こえなかった気がするけど。」


サーシャは振り返る。

「あっちの方からなんかゴーンって音がした気がするんだけど。」


シーラは進行方向とは違うもう一方の方を指さした。

「あっちは学園長室とか、教員棟の方だけど・・・・」

「もしかしてまだ誰か逃げ遅れてる人が居るのかな?」

「うーん・・・しょうがない一度様子を見に行くよ!」

「うん。」

再び二人は走り出した。





「誰も居ないね。もしかしたら私の気のせいだったのかも。」

「まだそうとも決まってないよ。」

「うん・・・・・あれ、サーシャ、なんか学園長室が開いてない?」


二人は廊下の先にある学園長室の様子がいつもと違う事に気がついた。

「え?あ、ホントだ、なんか開けっ放しだ。行ってみよう。」


学園長室に入った二人はすぐ違和感に気がついた。

「ドアが蹴破られてる!?」

「シーラあれ見て。」


サーシャが指さした方をシーラが見るとそこには大穴が開けられていた。

「サーシャ、何?あの大きな穴・・・・」

「・・・・シーラ、これはものすごく拙いかもしれない・・・」

「拙い??どういうこと?サーシャ。」


サーシャが険しい顔をする中、シーラはおろおろとすることしか出来ない。

「逃げるよ。シーラ!」



「悪いがそれは無理だな。」



二人の会話を遮るように男の声が響く、黒い上着で顔は見えないが

大柄なのが見て取れる。


「だ・・誰??」

「学園に侵入者!?」


シーラとサーシャはすぐさま警戒する。


「生徒か、悪いが見られたからにはこのままには出来ないな。消えてもらうしかない。エレクトリシテ

プロテクシオン

二人の媒介が光輝く、男の攻撃にサーシャはすぐさま防御魔法を展開させるが

力の差は明かで少しずつ押されていく。


「くっ・・・・」

「ほう・・学生にしては出来る方だな。俺の攻撃を多少は抑えるだなんてな。だがここまでだ。」

「キャっ!!」

「うっ・・・」


男の攻撃が増し、サーシャのシールドが破られ、二人は飛ばされそれぞれ

部屋の壁に激突する。


「まだまだ!!フラーム!!」

サーシャは諦めず反撃する。


「攻撃もそこそこだな・・・だが、まだまだ甘い!!!ハッ!!」

「なんですって。私の攻撃は跳ね返すだなんて・・・」

「サーシャ!!」

サーシャは防御の態勢を取るが間に合わない。


「くっ」

サーシャの身体は傷だらけになり所々大量の出血が見られる。

とても走って逃げれる状態ではない。


「サーシャ!!大丈夫??」

シーラはサーシャに駆け寄った。


「シーラ、ここは私が何とかするから、早く逃げて!!」

「でも・・・」

「早く!!」

シーラは手を握りしめ唇をかみしめる。


「・・・・・やっぱりそんな事できない!!グラース!!」

シーラの媒介が光輝き、男に向かって魔術を放つ。

「シーラ!!」

「お前は弱いな。そんな攻撃では友は守れないぞ。エレクトリシテ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!!!」


シーラは正面から男の攻撃を真っ向から受け壁をぶち抜き

隣の教室まで飛ばされぐったりしている。


「シーラ!!!」

「ふん、俺に立ち向かって来たのは評価するが、そんな心の弱さでは倒せんぞ俺は。さて、今の奴はしばらく動けんだろうし、まずお前から始末してやる。」


男はサーシャの方へと顔を向ける。

なんとかしないと・・・・その時サーシャの手に何かが触れた。

今日ラボでシーラが作った痺れ薬だ。


「くっ・・・・これでもくらえ!!」

サーシャは己の作った痺れ薬を投げつけ男へと当たる。

「痺れ薬か、こんな子どもだまし俺に通用すると思うのか!!」

「やってみないとわかんないでしょ。私諦め悪いの。フラーム!!」

「まったく、くどい!!!グラース。」

再びサーシャは壁に激突し、失神したようにぐったりとする。


「学生にしてはたいした根性だ・・・・それに・・・」

男は両腕を出す。腕は痺れ薬の影響でぷるぷると震えていた。

「幾分か舐めてかかっていたようだ。だが、これで最後だ。」

歩み寄ると男は巨大な氷柱を作り出す。

「死ね!!!!」

サーシャにとどめを刺そうとしたその瞬間、男は殺気に襲われ動きをとめる。



「なんだ、これは・・・・」


殺気の元は先ほどシーラが飛ばされた方だった。

「・・・・やめろ・・・サーシャに・・手を出すな・・・」


全身傷だらけのシーラがよろよろと歩いてくる。

左腕はおかしな方向へ曲がり、足取りはおぼつかない。


「ほう、お前思ったよりも根性あったのだな。てっきりあれでもう立ち上がれないかと思ったんだが。」


シーラはサーシャの方へ眼を向ける。

傷だらけで血だらけのサーシャがぐったりと倒れている姿が見て取れる。

「サーシャ・・・・」


シーラの脳裏にはいつも優しいサーシャの姿がよぎった。

落ちこぼれで、小心者で自信が無くて、いつも失敗ばかりの自分、迷惑をかけてばかりなのに

いつでもサーシャはシーラの側に居てくれた。いつも守ってくれた・・・・



『シーラは出来ない子じゃなくて自信がないからあと一歩を踏み出せないだけ。自分を信じな。』


いつもサーシャはそう言ってくれた。だから!!


「うちはうちの力を信じる・・・プロテクシオン


シーラはサーシャに防御魔術を掛ける。

「いつもサーシャがうちを守ってくれた・・・だから、今度はうちがサーシャを守る!!!」

「その傷でまだ俺に挑んでくるのか。」

「うぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


シーラが声を上げると周囲の空気が一変した。

パリン・・・・

「なに!?」

シーラのピアスが砕け落ちる。


「あの制御装置を破壊するなんて。こいついったい。」

ヴォン!!!!」


バーン!!!!!!!


シーラが魔術を放ったとたん学園の校舎が崩れ落ちた。

「ちっ・・・ここは撤退するしかないな。」

男は瓦礫を避けながらその場を撤退する。



「サーシャ・・・・」

うちサーシャを守れたかな・・・・

シーラの意識はそこで途切れた。



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