第四話
「ごめんねシーラ付き合わせて。」
「良いよ。うちもやらないといけないって思ってたし。」
街へ出て数日後、シーラとサーシャは学園のラボにこもっていた。
翌日に迫った課題の提出のためである。
「それにしたって痺れ薬なんてもん課題に出さないで欲しいわ。」
「まぁ作り方めんどくさいしね。」
てきぱき作っているサーシャとは対照的に、シーラは丁寧に一つ一つ確実にこなしていく。
「薬品作りが一番苦手だわ。ちまちま細かくて性に合わん!!」
サーシャは髪を思いっきり掻く
「とか言いつつ成績トップじゃない。」
「違う、トップはあいつ。」
「あいつ?あぁ、王子様か。あの人は別格なんでは?」
シーラは一度手元から顔を上げる。
「成績は学園始まって以来の優秀さ、おまけに格好良くて性格も良い。付いたあだ名が王子様って完璧すぎて近寄りがたい、あの人に近づける女子達は凄いなって思うもん。」
「ちがうあれは女子が空気読めてないだけ、本人はあんまり近づいて欲しくない空気放ってんじゃん。それになんかあいつの笑顔うさんくさくて。私苦手。」
「うさんくさいってサーシャ・・・・王子にむかって。」
「王子だろうがおじいだろうがうさんくさいもんはうさんくさいの。ほらシーラちゃっちゃと手を動かす。また薬品爆発させるよ。・・・・私完成!」
「え、ちょっと待って。」
シーラは眼を手元に戻すと急いで作業を再開する。
「さて、行くよ。」
「今日も暴れるぜ!」
黒い上着を着て顔を隠した男女が政庁の屋上に立っている。
「ほどほどにするんだよ。あくまで陽動だ、本隊の二人が動きやすいようにするのが私らの仕事。判ってるね。」
「当たり前だ。行くぜ。」
男が声を放った直後爆音が辺りに響き渡った。
「あぁ、やっと出来た。」
シーラは完成した痺れ薬を大切そうに抱く。
「シーラはゆっくり作れば本当に良いの作るね。」
「良いの?どういうこと?」
シーラは言葉に首をかしげる。
「薬品の透明度が高い方がより純度が高いでしょ。シーラの方が私のよりも色がより透明度が高くて深い色合いで綺麗。」
サーシャの言葉にシーラは照れて顔を少し赤くする。
「ありがとう。」
「いいえ、じゃ、そろそろ戻ろうか。」
二人してラボを出ると、外が騒がしいことに気がついた。
「なんか騒がしいね。どうしたんだろう・・・」
「シーラ、なんか嫌な予感がする。一度教室行こう。」
「おい、お前らそこで何やってるんだ。」
二人に気がついた男性教諭が近づいてきた。
「先生、どうしたんですか?」
シーラがおそるおそる尋ねる。
「今、政庁が攻撃されてる。生徒は急いで寮に戻って待機だ。早く戻れ!」
「!!」
「なんですって。被害状況は?そんなに酷いんですか?」
「まだそこまで報告は上がってきていない、とにかく一度戻れ。」
「はい、ありがとうございます。シーラ行くよ。」
「うん。」
サーシャはシーラの手を引いて寮に向かって走り出した。
「政庁が攻撃ってどういうことなんだろ!」
「わかんない、ただあんまり状況は良くないだろうね。それにしてもこの時期にこの街を攻撃だなんてどこのどいつがやってんのよ。」
二人は校舎の中を全力で走る。いつもならばまだ多くの学生が居る時間なのだが、もう既に避難をしているのか今は二人以外に人影が見当たらない。
「とにかくシーラ、私らに出来る事は寮に戻っておとなしくすること、それだけ。だから早く戻らないと。」
「うん。」