第二話
「はーぁ。」
先ほどの教室でシーラは大きなため息をつく。
その瞳には涙が浮かび、時折鼻をすすらせている。
「なんでうちこんなに出来ないんだろう。」
雑巾で緑色の物体を丁寧に拭きながらつぶやく。
しかし汚れは広範囲に広がっておりまだまだ時間がかかりそうである。
「シーラ?」
少女の声にシーラは振り返る。
「サーシャ!?どうしたの??」
「どうせあんたが沈んでるんだろうと思って話聞きにきた。」
「サーシャ・・・・」
シーラの瞳から大粒の涙が流れる。
「あ、話すならちゃんと手を動かしながら話しなよ。いつまでたっても終わらないから。」
そう言いながらサーシャは汚れていない席に座る。
シーラは頷くと雑巾で掃除をしながらぽつぽつと話し始めた。
「どうすればうちちゃんと出来るんだろうって思うの。」
「うん。」
「もちろん一つ一つゆっくりやれば出来る事だし、今日の薬品だって何度も作ったことあるよ。ただその他にもやらないといけないことが多いときは“ときどうしよう、どうしよう”ってパニックになっちゃうの。でもパニックになろうがやらないとどうしようもないじゃん?」
「そうだね。」
「だからその時出来る限り一生懸命やるんだけど、どうしても普段よりやり方が荒くなって失敗が増えてどうしようも動けなくなっちゃうの。」
「うん。」
「で、先生に怒られるんだけど。怒ってもらえるのは私のためを思ってくれてるからだって事はちゃんと判ってるんだよ。これでも・・・・ただ自分でも出来てないって自覚が有る分、自分でも思っている事を冷静に指摘されると本当に情けなくて情けなくて自分がどうしようもなく嫌になる。」
「うん。」
「それでみんなよりも出来てない自分にも嫌気がさして、おまけにみんなに嫉妬してる自分もいるから余計に自分が嫌になるの。」
「シーラ、気にしすぎなんじゃないの?」
それまで聞き役に徹していたサーシャが口を開いた。
「確かに失敗は多いかもしれない、でも必要以上に気にしすぎてるから前に進めないんじゃないの??一つ一つはきちんと出来てるんだからもっと自信持ちな。」
「自信・・・・」
「そ、自信。私は入学してからずっとあんたを見てんのよ。その私を信じなさい。シーラは出来ない子じゃなくて自信がないからあと一歩を踏み出せないだけ。」
サーシャはシーラの頭を優しくなでる。
「自分を信じな。」
「うん!話聞いてくれてありがとうサーシャ。」
「いえいえ、それはそうと週末に出かけない?」
「週末?うん大丈夫だよ。今のとこ。」
「本当?よかった!楽しみにしてるよ。さ、掃除もあと少し。パパッと終わらせちゃいな。」
「はーい。」
シーラとサーシャはお互い笑顔を向ける。