訪問者
三題噺もどき―きゅうひゃくにじゅうに。
ピンポーン
「……」
毎日のように変わらず、ベッドでゴロゴロしていると。
玄関のチャイムが鳴らされた。
家に私以外の誰かが居れば動かなくて済んだのだけど。
生憎、今この時間は私しかいないので私が動くしかない。
「……」
荷物が届くと言う話は聞いていないが……。
母の知り合いからの荷物ならば、事前に来ることを教えられる。
それ以外の通販は基本的に置き配をしているのでチャイムが鳴ることはない。
「……」
他の可能性としては、飽きもせずセールスに来たか。
こりもせずに宗教勧誘に来たか。
はたまた、回覧板が回ってきたか。
「……」
そのどの場合も面倒なので、母も忘れていた荷物であれと思う。
あれこれと考えながら、ベッドから起き上がり、気持ち急ぎ足でリビングへと降りていく。
格好が格好なので、ソファの上に投げられていた上着を羽織り、玄関へと向かう。
「……」
モニターはあるのだけど、玄関から遠いので使われることはない。
なんとなく違和感とか嫌な予感がすれば見るけれど、今日は違う気がする。
荷物ならもう一回チャイムが鳴らされ、郵便で―す、と声がかかるが。
……そんな様子もない。
「……」
玄関にある細いモザイクのかかった硝子越しに見ると。
何やら小さな―とはいっても幼稚園保育園生のサイズではない―が玄関に立っていた。
はて。確かにこの辺りに子連れの家はあるが、子供だけで我が家に来ることがあるか?
「……」
何かとは思ったが、話を聞かない事にはどうにもならないので。
鍵を開き、玄関の扉を押し開ける。
風が強いのか、やけに重たく感じた。
「こんにちは!」
「こんにちは」
立っていたのは小学生中学年くらいの、少しぽっちゃりぎみの男の子だった。
上下黒の半袖短パンといかにも小学生の夏休みの格好って感じだ。
どこの子かは私は知らないが、母が見たら分かるかもしれないな。
「どうしたの?」
私も短パンを履いていたので、下半身が玄関の扉から出ないようにしつつ、そう尋ねる。
何かを手に持っているようでもないし、届け物というわけでもないようだ。
何やらもじもじとしているが……挨拶は元気よかったのに。
「あの、」
「うん?」
「ボールが、入っちゃって……」
「あぁ、」
どうやら我が家の裏に住んでいる子供のようだ。
毎日飽きもせずにボールを蹴ったり走り回ったりしている音や声がよく聞こえる。
近くの公園にでも行けばいいのにと常々思っていたりする。あそこはブランコもジャングルジムもシーソーもあるし、バスケットゴールもある。遊ぶには持って来いだろう。
「……」
まぁ、多少距離があるが。
それにこの暑さの中子供だけというのも親が許さないのだろう。
それで、家で遊んでいて、木製の塀で囲まれている我が家の裏に、ボールが入ると言うは、また違う話のような気もするが。
「とってきていいよ」
「―!ありがとうございます!」
礼儀の正しいいい子のようだ。
一緒に裏に行こうかと思ったが、玄関で待つことにした。
裏手に回り、ボールを無事見つけ、玄関側に戻ってくる。
「あった?」
「ありました、ありがとうございました!」
ぺこりとお辞儀をしながら、サッカーボールを抱えて戻っていく。
すぐに他の友達か兄弟かの声が聞こえ始め、賑やかな声が再開された。
毎日ほんとに飽きもせずによく遊ぶものだ。
彼らは宿題は終わっているんだろうか。もう夏休みも終わるだろう。
「……」
かく言う私も残り少しだけ宿題が残っているが。
来週も変わらず登校だが、宿題をする時間だと言われた。
……なら休みでよくないかと思うが。
「……」
はぁ。
部屋に戻って寝るか。
お題:夏休み・シーソー・サッカー




