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1話 幼馴染は僕のことが嫌い





「おい…おい!」

そんな怒声にも似たような声で僕のぼんやりとした意識はだんだんと覚醒していく。


「んぁ…ふぁぁ、よく寝た、おはよう灯華(とうか)

「おはようじゃないわよ!あんた自分のしてることわかってんの!?」

「別にいつも通り授業中に寝てただけだろ、何もそこまで怒らなくても」

「は?今日がなんの日か忘れたわけ…?今日は転校生が来る日だから起きてなさいって言われていたでしょう!?」

「あぁ、確かにそんことも言われてた気がするな、でも別にいいだろ、僕が寝ていようが誰かに迷惑がかかるわけじゃないし。」

「ほんっと、あんたのそういうところ大嫌い。」

「それで?その転校生ってのは?」

そんな事を言った直後、灯華の後ろからピョコッと出てきた少女の姿に僕は衝撃を受けた。


「はじめまして…ではないかな?私は夏川美乃里(なつかわみのり)って言います。昔一緒に遊んでいたんだけど憶えてる…かな?」

夏川美乃里。その名前は僕にとって馴染み深い名前だった。僕がまだ幼かった頃灯華も交えて3人でよく遊んでいた旧友が転校生としてまた目の前に現れたのだ。


「美乃里?随分と久しぶりだね、元気してた?」

「うん、私は元気だったよ。そういう成瀬くんはどうだったの?」

「…僕も元気だったよ、高校生活を満喫してた。」

「?そうなの?それならいいんだけど」

「………」

「とりあえず僕は邪魔みたいだしあとはクラスの皆で楽しんで。」

「あっ…ちょっと!待ちなさいよ雨ヶ谷…行っちゃった…」

あぁ…また私はやってしまった。今さら後悔しても遅いのに、今まで彼がどれほど苦労したかを一番知っているのに、近くでずっと見てきていたのに、自分の気持ちに素直になれずにまた彼を突き放してしまった。嫌われただろうか?彼の背中が遠ざかっていく。でも当たり前なんだ、彼が塞ぎ込むようになったのは、あんなすべてを見透かしてして、絶望しているような目にさせてしまったのは私なんだ。


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───



授業の始まりを告げるチャイムが校内に鳴り響く。僕はそんな中、太陽が燦々と照りつける屋上に一人座っていた。

「にしても美乃里か、久しぶりに会ったけど変わってなかったな。」

それに比べて俺は…

「こんなところで何してんだよ。」

「うぉっ、びっくりした。急に背後から現れるなよ。」

「びっくりしたとか言ってる割には真顔だけど…」

「そりゃぁ俺の表情が死んでいるのは天性の才能だからな。」

「触れづらいこと言うなよ…で?なんか悩み事?だいぶ唸っていたけど。」

「いや、何でもないよただの独りよがりだから。」

「?」

「まあいいや、それで?お前もサボりか?鳳城(ほうじょう)。」

「ま、そんなとこかな。最近何事もモチベーションが出なくてねぇ。でも俺はお前と違っていつもはちゃんと授業受けてるから成績の心配はないさ、数回のサボりくらい見逃してくれるだろ。」

「どうだかな。ま、そろそろチャイムも鳴るしクラスに戻りますか。」



───



クイクイ

「?どうしたの美乃里。」

「勘違いだったらいいんだけどね、成瀬くん口では元気って言ってたけど私は思えないの。説明するのは難しいんだけどね、表情が前の時より暗くなっていて掴みどころがないような感じ?」

「そっか…やっぱり美乃里は気づくよね…」

「やっぱり成瀬くん何かあったの?」

「この情報はどこにも漏らさないでね?」

「わかったよ、心の内に秘めておくよ。」

「…雨ヶ谷…いや成瀬は美乃里が家の事情で引っ越したあとすぐに両親を失ったのよ。」

「……え?」

「事故だったらしいの、家族で旅行から帰ってきていた時に制御を失ったトラックに轢かれてしまったらしいわ…」

「そんな…じゃあなんで成瀬くんは私に元気だったなんて…」

「ううん、問題はそこじゃないの、成瀬くんはそこから母親の妹に引き取られたの。そこで徐々に両親を失った傷は癒えていったの。それから中学2年生になる辺りまでかな、私はずっと成瀬と一緒に居たの。成瀬はずっと私を信頼していてくれた、私も成瀬のことをずっと大事に思っていたの、それで私は気づいたのよ成瀬のことが好きだって。」

「………」

「そうやって成瀬に対する気持ちが分かってから成瀬にどう接すればいいかわからなくなったの。そうやってる内に成瀬は私の変化に気づいたの、そういう事には人一倍敏感だからね…そこから成瀬くんは私を避けるようになった…いや、もともと私が避けてたのかな…」

私は内心分かっていた、成瀬にこの気持ちを伝えるべきだと、伝えて誰よりも近くで支えてあげればいいと。


「そんなことが続いてたある日、私は成瀬くんに言われたの。」

「ねえ、このまま居ても灯華が辛いだけだよ、僕たちもう関わらないようにしよう。」

「私は目の前が真っ暗になったわ、成瀬くんから一番聞きたくなかった言葉。そこから成瀬くんは別人のように変わってしまったの、生きてはいるけど感情がほぼないし、何を考えているか分からない表情をずっとするようになった。」

「そう…だったんだ…」

「そこから私は成瀬くんとどう関わればいいか分からなくなって強い言葉を言うようになってしまったの。成瀬くんの苦労をずっと見てきたのに…」

本当にいつ考えても都合が良すぎると自分でも思う。自分が好きになって素直になれなくて傷ついていた、成瀬くんにまた傷を負わせてしまうなんて。


「私が知ってる成瀬くんがああなった原因は全て話したわ。最低よね…私って…」

「ううん、そんなことないよ。灯華ちゃんは成瀬くんとちゃんと向き合おうとしてそうなったんだよね。成瀬くんとのすれ違いが起きてこんなになってしまったなら、ちゃんと成瀬くんと話せばきっとわかってくれるよ!」

「そう…かな?」

「大丈夫、きっと分かってくれる」

「ぁ…」

私は美乃里に優しく抱擁された。その久しぶり感じた人肌に私は情けなく泣いてしまった。



───



放課後私たちはファミレスに来ていた。

「そうだよね、ちゃんと成瀬くんと向き合うべきよね。」

私はあの後美乃里に説得され、今度成瀬くんとちゃんと話をすることになった。

「美乃里、本当にありがとね、美乃里が居なかったら私こうやって成瀬と向き合うことすらできなかったから」

「全然いいんだよ、私は2人の関係がこれ以上悪化するところなんて見たくないの。」

「ほんっと、美乃里はやさしいなぁ。」

そんな会話をしていると、不意にスマホがなった。

「誰からだ…成瀬くん…?」

電話の着信相手は成瀬くんだった。私は迷わずに電話に出た。もう後悔しないために。

「もしもし、雨ヶ谷どうしたの?」

「あなたは成瀬くんの家族かお友達ですか?」

「?えぇ、はいそうですけど。」

私は電話の相手が成瀬くんではない事に一抹の不安を感じた。この不安が勘違いであればいい、そう思っていた。だが電話から聞こえてきた衝撃的なひと言が灯華を絶望へと追いやる。

「成瀬くんは先ほど事故に遭い。今だ生死不明の状態です。」

「………え…?」

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