「理想を語るには覚悟が足りないようですわね」と悪役令嬢は言った。
シリーズで登場人物と冒頭文を共有する短編「悪役令嬢、かくのたまへり」第六話
*
スパダリ令嬢 無双譚!
王国の力関係を理解できない王子が、王都の治安を守護する令嬢に婚約破棄を突き付けた!
しかも、傍らに儚げな令嬢を連れて。
けれど、その婚約破棄には裏がある!
王子と令嬢の理想と、隠された私情。
軽薄だと思われた恋は、破滅の未来さえ呑み込んだ純愛だった。
悲劇的な結末の中で、悪役令嬢は何を思うのか。
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【冒頭:婚約破棄から断罪へ】
とある時代、とある王国。欧州ではなく、他のどこでもないどこか。世の数多地図になく、誰かの持つ地図にはその名を記すという。いくつかの国家に隣接する、強大ではないが弱小でもない、どちらかと云えば穏やかな国。
その妄言は、王家も参列する壮麗な舞踏会の場で吐き出された。
「私、ヴァロア王国王子クロヴィス・ド・ヴァロワは、長年交わされていた侯爵令嬢エレオノール・ド・メルクールとの婚約を破棄すると、ここに宣言する」
発言の主は、当人の述べるようこの国の王子。未だ成人はしていないが、必要な教養は取得し終え、そろそろ公務にも関わろうかという年頃。一般には聡明と見做され、穏やかな為人で見目麗しく、国民の人気も高い。婚約は王命をもって結ばれ十年の間維持されたが、今此の瞬間、他ならぬ王子自らの宣言をもって、その努力は水泡に帰される。
「エレオノール、貴様は侯爵令嬢であり私の婚約者である立場を利用し、下位の者どもを虐げ、特にこの男爵令嬢ジュリエット・バローには人とも思えぬ所業でその心身を傷つけたこと明白である。その様な者に王家の者の婚約者など務まろうはずもない。即刻その立場を剥奪し、罪に対する罰として国外追放を命ずる。王都の侯爵邸へも、領地へも寄ることは許さぬ。即刻、この国を出るがいい」
自国の王子による突然の蛮行に、参列していた貴族諸侯は、当初愕然としつつも、周囲にある者と密めいて語り合い、会場内は押して引く細波が満ちるようさざめき出す。王子は我が意を得たりとほくそ笑み、王子の周囲に侍る側近たる少年達が、貴族達の中に厳しい視線を投げ、一人の令嬢を睨み付ける。
靴音高く歩を進めるその令嬢は、誰よりも優美で気高く、不敵な笑みを浮かべていた。
*
(本編へ)
「婚約破棄、承りました。これにより貴方方は、我々と袂を分かつことを覚悟されたものと承知いたします。よって、これより我等五公侯家は王家との約定の全てを破棄し、元王家を王家と認めぬものとします。また王都との関わりを遺棄し、あらゆる権益を停止します。王国は筆頭侯家を暫定王家とし、元王家を伯爵へと降爵するものとします。異存ありますか」
冷静に冷淡に告げるエレオノール。取り巻き達はいきり立ち、「不敬だ」「何の権限あって」「できるはずもない」などと言い募るが、貴族達は沈黙を貫き、王子と傍らの少女は、少なくとも傍目に泰然として、
「勝手にするがいい。我等には、多くの味方がいる」と嘯く。
エレオノールはほんの僅か間まつげを伏せ、けれど決然と、
「我等は、少なくとも我がメルクール騎士団は混乱を望みませぬ。努々、お忘れなきよう」
片膝を引き、ドレスを摘まんで頭を垂れる姿は、この場の誰よりも毅然として、また美しくもあった。
*
数日前。
エレオノールは、婚約者である王子クロヴィス・ド・ヴァロアに呼ばれ、王宮の一室にて向かい合っていた。相手は、クロヴィスの他に、側近と称する二人の少年、そしてジュリエット・バロー男爵令嬢。少年二人がソファの後ろに立ち、エレオノールの婚約者であるはずのクロヴィス王子と無関係なはずの男爵令嬢が、肩を並べ、ソファに身を沈めていた。
「それで、どういったご用で」
差し出された紅茶のカップを優雅に傾け、エレオノール。
本来、呼び出されたからとそれに応じなければならない立場にない。王国は、王を主と頂く王制を敷くが、王などは所詮、領主貴族の力関係を調整するための神輿に過ぎない。諸侯の意向次第では、幾らでもすげ替えが利く。故に、メルクール領軍元帥にして最高司法官であるエレオノールの威光は、王家の、たかが王子如きなど歯牙にも掛けない。それでもここにいるのが、体裁だけのものとはいえ婚約者同士であるからに他ならない。にも拘わらず、隣に女を侍らすとはどのような了見なのか。本来なら怒りのまま糾弾しても良いところを、エレオノールの心は凪いだまま揺れることすらない。
「君に仲間になって欲しいと思っている」
王子の言葉は予測されていた。それはつまり、この中でエレオノールだけが蚊帳の外であり、彼らは結託して何事かを企んでいる。一方で、そのことをエレオノールも重々承知しており、その上で距離を取っていた。関わり合いになりたくないと言うよりは、関わってしまっては敵対せざるを得ないだろうことが予期されていたから。彼らもまた、そのことを承知しているはず……と思っていたのだが。
「何を仰るかと思えば」
エレオノールは、ふと笑みを浮かべる。そこに色恋の情などない、微塵もない。対場を奪われんとする嫉妬の念も、恨みも憎しみも、向けるべきあらゆる感情が欠落している。強いて言えば、呆れだけが残っている。
「私達には理想がある。その理想を叶えるため、君にも力を貸してほしい」
そう言うクロヴィスの表情は真剣で、何ら悪びれるところもない。彼は真面目に、助力を求めているのだ。粗略にした婚約者に向けて。
「我々は……」
エレオノールは、クロヴィスが不穏を言い出す前に掌を翳して、彼の言葉を遮る。
「貴方方の理想とやらは存じております。それがどれだけ危ういことかも。私の立場で、それに乗ることなどできようはずもないこと、ご承知のことと思っておりましたが」と、横に侍る男爵令嬢を見る。ジュリエット・バロー男爵令嬢。いくら四子といえど、王子と結ばれるにはあまりに身分が足りない。その様な者を傍に侍らすのだから、自分のことは意中にないものと思っていたが……と言外に。
そのジュリエットは、エレオノールの視線を受けて、身を跳ねさせる。何ともあざと態とらしい。
「私達は愛し合っています。そのことは申し訳なく思っています」
場違いな言葉は、ジュリエットの口から。彼女は言う。
『愛こそ全て。愛のない結婚なんて意味がない」と。
更には、『愛がないなら解放してほしい。クロヴィスを自由にして』などと、まるでエレオノールが王子を縛り付けているかのように。あげくには、『愛し合う者同士が結ばれべきなのです』と、悦に入って。
何度も聞かされた。その度に『お好きなように』と言ってきた。言う度に、『無理はしないで。本当は、クロヴィス様のことが好きなのでしょう。だから嫉妬するのでしょう。素直にそう言ってください』とありもしないことを。あり得るはずもないことであるのに、『愛されていない貴女が嫉妬するのは間違いです。潔く、身を引いてください』などと言い募る。
どうすればそうなるのか。エレオノールは頭を抱える思いだが、本来理解力のあるはずのクロヴィスまでもがそれを否定しない。恋することが馬鹿になることと同義なら、エレオノールはそんなものはいらないと思う。
そして、いよいよとなれば、
「私達は、良いお友達になれると思うのです」とジュリエット。
もはや何を言わんとしているのか理解の範疇を超えている。
「だから、私達をどうか手伝ってください」
エレオノールは、隠すことなく溜息を吐く。淑女としてはありえない。けれど、そうせざるをえないほどの虚無感と脱力感。
ジュリエットは言う。
「私達には理想があります。その理想を叶えるために……」
「お待ちなさいな」
エレオノールは、深く深く溜息を吐き、その露骨な素振りに、ジュリエットの言葉も途切れる。
そしてエレオノールは、壁際に侍る王家の侍従を手招きする。彼に預けたのは、家伝とされる一振りの剣。必要以上に装飾のごてごてしたそれは、家中の伝承に『聖剣』とされる。この世に二振りとない理外の剣。今まで使える者のなかったそれを、エレオノールは、十全に能力を引き出し使いこなす。それゆえの領軍元帥。領主の娘というだけで就ける地位ではない。だからこそ王宮騎士と衛士以外に許されるはずもない剣の持ち込みを、エレオノールは許されている。否、それを拒むことは王家といえども、許されない。
柄を握るエレオノール。慣れた手つき。あたかもそれが自明であるかのように。剣を、引き抜く。
「何を」
咄嗟に腰を浮かせようとする王子。背後に侍る少年達にも緊張が奔る。
が、構うこともなくエレオノールは一言、「光よ」と。その言葉と同時に、剣から放たれた光が部屋を満たす。数瞬。満ちた光が部屋に馴染んで元の明るさに戻ると、エレオノールは剣を鞘に戻した。何事もなかったかのように、けれど場を占める空気は明らかに変質する。
「聖剣の権能ですわ。この部屋の音が漏れないようにしました。貴方方は自覚した方がいい。自分たちがいかに危うい橋を渡ろうとしているかを」
「そうか」とクロヴィス王子。理解が及んでいるのかどうか。この男、ここまで愚かだったろうか。
「貴方方の理想とは、王侯貴族とそれ以外の庶民いう身分制をなくしたいというのでしょう」
エレオノールが言う。
「民主主義です」とジュリエットが王子に先んじて。「国家の主人は国民です。全ての民衆です。為政者は、その代表に過ぎません。そうあるべきなのです」
「その通りだ。一部の人間が生まれながらの特権を振りかざし、多くの人々を虐げるような制度は間違っている」
王子の言に、どの口が言うのかと思うも、言及するに及ばなかった。被せるようにジュリエットが語り出す。
「人は生まれながらにして自由で平等なのです。人は人であるが故に、人としての尊厳を持ち、誰もがそれを尊重し、社会を形成する。無為に殺されない、奪われない、傷つけられない。そんな当たり前のことが当たり前に行われる世界に、私達はしたいのです」
熱の籠もった、それは演説のようだった。
「貴方方の理想に否を言うつもりはありません。『理想』としては、気高いものです。ですが……」
エレオノールは言い淀み、そして、「それは、貴方方二人が結ばれるための『理想』ですか」と問う。
「それもあります。けれど、それだけではありません」
決然としたその言葉の、その背後に、言葉にならない何か躊躇いのようなものが潜む。
「そうですか。その思いに、庶民の男性は関係しますか」
エレオノールの問いは、彼女自身が少々意地が悪いと感じてしまうものだった。
「全ての庶民のための理想です」
ジュリエットは言葉を挿げ替えるも、それだけに本音が垣間見える。
「そう」
エレオノールは、幾何かの感慨を込めて頷く。
「だから、急ぐのね」
エレオノールの決めつけた言い分に、ジュリエットの笑みが刹那だけ消える。
「私達には多くの仲間がいます。皆、私達の理想に賛同してくれました。私達は動き出しています。もはや、止まることはできません」
「性急に過ぎます。断言しますが、絶対に失敗します。私が介入したところで、五公侯家の意志は変わりません。変えるには、時間が必要です。膨大な、時間が」
「それでも」
男爵令嬢の掻き肩を抱き、王子は言う。
「それでもやり遂げなければならない。この世から、これ以上の悲劇を生まないために。もう一度言う、君の力が必要だ。どうか力を貸してほしい」
期待の籠もった四対の眼差しを受けながら、エレオノールはぶれることのない姿勢で席を立つ。そして、言い残す言葉。
「メルクール侯爵家は、王国の混乱を望みません」
*
公の場での婚約破棄と断罪の後。
王都は、第四王子らのクーデターにより、王権を失った。
外部的には、五公侯家により王権を奪われたこともあるが、クーデターの首謀者たる段四王子が王権の放棄を宣言し、現国王と次期国王たる王太子を追放、幽閉した。王宮は、官僚による行政機関に置き換えられ、クーデターに賛同した元貴族による議会が設置され、翌年には国民による『選挙』を施行すると宣言された。多くの貴族が王都を去ったが、民衆は新たな政治体制を歓迎した。元々権威も威勢も大したことのない王家に対し、軍や、王直轄領内でも大きな反発はなく、平和裏に革命はなった。それら全てが、王子達による事前の根回しのお陰だと、人々は賛美した。世は、自由と平等の甘美な夢に浮かれた。
……それが、一月前のこと。
今の王都には、革命の熱気は冷め、暗い影が落ちようとしている。
都市封鎖。孤立化。
何のことはない、周囲の領主貴族が、『民主化』なるものを怖れ、実力行使に出た。それも、軍事力による専横ではない。法に基づく『断交』。人の交流が鎖され、物流が滞る。旧王領内の地方官は、かつての代官貴族が暫定的に引き継ぐが、彼らの中から五公侯家側に寝返るものが出る。一地方ではない、幾つも幾つも、堰を切るように。そして、都市は孤立する。経済は成り立たない。人の生活は窮乏する。平等であっても、自由であっても、ひもじくてはそれらを謳歌することは叶わない。民衆は掌を返す。多くは旧王制下でも、不自由のない者たち。豊かでなくとも食うに困らなかった人々。王制といえども、貧しき者には施しの施策もあった。それらが、止まる。
それからまた、一月の時間が過ぎる。
旧王都から程近い、とある保養地。閑静な湖畔に建てられた邸宅に集まったのは、以前王宮に集った五人。あの時とは立場の異なる、自由都市宰相とその妻、秘書官である二人。そして、変わらずメルクール領軍元帥であるエレオノールは、五公侯家を代表しての参加。
「我等は統治を放棄する」
断腸の思いで宣言する宰相クロヴィス。使える二人も暗い表情で俯く中、一人平静を装うのは宰相夫人ジュリエット。
「賢明な判断です」とエレオノールは感情の籠もらぬ声で。「細かな取り決めは後日。貴方方の処遇もまた」
「私個人の責任ということにはならないかな」
かつての王子が苦い笑みを浮かべ言う。そんなことはあり得ないと承知の上での笑み。
「あり得ません。五公侯家は、怒り心頭です。内乱にせぬため、国を割らぬため、そして外国の干渉を受けぬため、軍事行動を封印しました。彼らは、本質的に『騎士』です。戦いで身を立てた者の後継。体制を揺るがしかねない言説を撒き散らされ、大いに面子を潰された彼らが、彼らの本文である戦いを封じられた。その不満は、私といえど抑え切れるものではありません。生け贄は必要です、それも相応の規模で。でなければ、それこそ国が割れる。そんなことは、貴方も望まないでしょう」
「そうだな、君の言うとおりだ。何もかも、君の」
両者の視線が交差して、幼少の頃から婚約者として交流してきた日々が蘇る。悪い思い出ばかりではない。幼い頃には、互いに無邪気に戯れあったこともある。いつからだろうか、彼が笑顔を繕うようになったのは。本音を隠し、建前だけで生きるようなったのは。
エレオノールは、問う。
「どうです、満足なさいましたか」
エレオノールの言葉は、皮肉にまみれたもの。その自覚は、彼女にもある。が、止めることができなかった。
「最終的に、大きな目標には達しなかったが、それでも目的の一つは果たせたよ」
皮肉と皮肉と受け止めながら、クロヴィス。晴れやかと言うには、あまりにも苦り切った表情で。
「お母上の敵討ちですか」
「知っていたのか」
「想像はしていましたが、尻尾は掴めませんでした」
かつて一度、まだ婚約者同士であった頃、腑に落ちぬ事があって調べようとしたことがあった。が、他領であることもあり、ましてや王家の内実に迫ることは、エレオノールであっても手が届かなかった。
「私の母、前国王の側妃を殺したのは、王自身だ」
「やはり、そうでしたか」
人格者と言われる前国王。その裏の顔を、クロヴィスは知っていた。
「生き延びるため、誰にも言えなかったけどね。あの男は、悪辣だった。賢王ではあったけど、人としては最悪の悪魔のような男だった」
「殺したのですか」
「時間を掛けてね。今となっては、誰も気に掛ける者もない」
「そうですか」
「なにより王宮を解体して、母をきちんと埋葬し直すこともできた。堂々と供養することができるた。それが何より嬉しかったよ。もちろん、後悔はたくさんあるけどね」
そういうクロヴィスは、窶れた頬を綻ばせた。
「貴女はどうですか、ジュリエット」
「私は満足よ。不満も後悔も何もないわ。ひと時とはいえ、クロヴィスと夫婦になれた。あの身分社会の中では、絶対にあり得なかったのに。どんなにあがいても、どんなに強がっても、成就できる恋じゃなかった。貴女とクロヴィスが破局したところで、私に回ってくる順番はない。どこかの適当な公爵だか侯爵だかの令嬢が宛がわれるだけ。それどころか、二人揃って幽閉なんてこともありえたもの。私は幸せよ。心の底からそう言える。この先どうなろうとも、ずっと一緒だもの」
「そう、それに」エレオノールは言い淀む。
「ええ、そう。私の養い親。私と妹を虐待していた鬼畜共。きっちり始末して殺ったわ。お陰で、妹も無事に結婚できた。思い残すことなんて何もないわ」
エレオノールは、深く深く息を吐く。
「結局、貴方たちの理想は……」
「理想はあったわ。それは間違いなく。だってこんな住みにくい世の中嫌だもの。あなただってそうでしょ、同じ記憶を持つ貴女なら、こことは違う世界の遙か未来に生きた記憶のある貴女なら、分かってくれると思うのだけど」
そう言ったジュリエットの笑顔は、久々に屈託のないものだった。
エレオノールは苦りきった笑みを浮かべ、
「貴方方の性急さのせいで、何世代か『民主化』なんてものは遠退いたわ」と。
「そう、それは残念ね」
さほど残念そうでもなさげにジュリエットが言う。もう今さらなのだろうが。
「確かに貴方方は覚悟が決まっていた。この結末も予測できていたとしたら。けれど、本気で『民主化』なるものを目指すなら、貴方方には覚悟が足りない。自分達が時代の礎になって無駄死にする覚悟が。結局、貴方たちは、自分の理想に酔いながら、ちゃっかり自分たちの妄執を果たして、その結果自滅しただけ。はた迷惑この上ないわ」
エレオノールは、憤りを隠さず吼えるように言う。
対してジュリエットは、クロヴィスにしなだれかかり、
「ごめんね、だって幸せなんだもの」
互いに見詰め合って微笑む。その様子を見守る二人の少年も、微笑ましげに。
「ああ、もう、やってらんねー」
全身をソファに投げ出してエレオノールが嘆きながら吼える。
「貴女、前世はヤンキーでしょ」
「そういう貴女は、ギャルでしょうよ」
誰が言い出したか、酒でも飲まなきゃやってられねぇとなって、大量の酒とつまみが運び込まれ、どんちゃん騒ぎは朝を過ぎても続いた。
不吉で厳つい黒塗りの、鋼鉄製の馬車が湖畔の靄を乱して訪れるまで。
とある王国の、有能ではあったが後世に凡愚と評される王が、その地位を追われた。次代の王が即位し、多くの貴族がそれを支持し仕えた。貴族の国家への関与が深まり制度が整えられ、商業が集中化し国家が栄えるに付け、「王権」が権威を増す。そんな時代の過渡期に起こった、些細な出来事。
【登場人物】
クロヴィス・ド・ヴァロワ
:優秀なる無能。王と王妃の寵愛を受けるが、婚約者に見放される。
エレオノール・ド・メルクール
:知性的で凛とした、古き良き名門の凄みを体現する侯爵家令嬢。
ジュリエット・バロー
:身の程知らずで欲望に忠実な男爵令嬢。
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