第十八話
公輝が大陸外にいた頃、涼は男子寮で勉強会に参加しようとしていた。
勉強会といっても、男子寮における上級生、下級生が自発的に行っているものであり、月に一度、交流を図るものだ。男子寮において複数行われているもので、皆が参加するというものでもない。それぞれ生徒たちは好みの勉強会に出席するのだった。
そこでは軍事的な発想や、政治的な意見が共有されていた。
その中の一つ、桜花会に笹井が涼を誘ったのだった。
会の名前の由来にもなった談話室、桜花の間が会場である。涼は笹井につれられて、中に入る。
桜があしらわれた絨毯が引かれており、無垢材で彩られている。
部屋の真ん中には重厚な木の長机が置かれており、軽食が供されている。その他、丸テーブルがいくつか配されており、立食形式のようだ。
30センチほどの壇上にはマイクが備えられ、上級生が準備しているのが見える。
上級生に誘導され、笹井と一つの丸テーブルの前に立つ。テーブルには会の進行表が書かれた紙が置かれている。
同じテーブルには4人の上級生がおり、それぞれ紫と青の肩章を着けていることから、2年生と3年生だと分かる。
涼の制服には赤の肩章がつけられている。
それほど間を置かずに、紫の肩章をつけた者が壇上にあがる。上背と溌剌とした表情からは、いかにも好青年といった印象を受ける。
「桜花会会長の3年生、板垣です。5月の桜花会を始めます。いつも通り順番に研究発表をしてもらって、その後は懇親会です。1年生で初めて参加する人もいると思いますが、気楽に話を聞いていってください。」
板垣はそう言って壇上から降りる。壇上の横に備え付けられた演台で司会が会を進行する。
「まずは2年生の高松さんの『魔導戦艦に対する魔導具足の優位性』です。」
資料が壇上の白幕に投影される。
このような具合で10分程の発表が3人ほど続いた。
「最後は板垣会長の『社会保障費の増大と大陸利権の拡大』です。」
板垣の発表は理路整然としており、他の発表者と比べて、質が高いものだった。
内容を要約すれば、以下の通りだった。呉帝国や新帝国、三韓連合王国を巻き込んだ80年前の東方大戦によって皇国は大陸領土を喪失したが、大陸の利権は未だに保持している。経済発展が見込まれている、申城周辺の鉄道利権を中心とする権益をより拡大することで社会保障費を補おうというものだった。
板垣の発表が終わり、懇親会が始まった。
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