第十四話
金網に囲まれた教練場に、涼たち一組の生徒が整列している。春のうららな陽気が彼らを包んでいた。
魔道具足の授業は既に数回行われていた。基本的な動作、飛行に関してはほとんどの生徒が習熟していた。
「本日から実戦訓練を始める。まず魔道具足について説明する。魔道具足は魔力に反応して熱エネルギーを発する6号魔素が用いられている。魔道具足には様々な装備を付けることができるが、魔力量はそれぞれ個人差がある。」
谷澤はよく通る声で説明する。谷澤の手元にはバインダーが見える。魔力量に応じて搭載できる装備の数や種類が変わると続ける。
「基本装備として、魔導砲と魔導障壁発生器があるが、その他にも追加スラスターや照準補正器がある。例えば魔力量が9000mpなら、基本装備で4000mp、追加スラスター四本で4000mp、照準補正器で1000mpを対応させるのが目安だな。各装備の必要魔力量と性能を鑑みて、自分に合った組み合わせを考えろ。」
谷澤はそう言って、様々な装備と必要魔力量の一覧がまとめられた紙を生徒たちに配る。皆、思い思いに頭を捻る。谷澤は毎年の恒例の光景に少し微笑ましく思うのだった。
「いずれにせよ、実戦訓練の中で調整していくものだ。8月には兵学校との演習もある。1年生でも校内選考に勝ち抜けば出場の可能性がある。軍の幹部も多く観覧するから、出場を目指して訓練に励むように。」
そう言って、谷澤は実戦訓練の開始を号令するのだった。
実戦訓練は、教練場をいくつかの魔導障壁で区切って行われる。魔導銃は破壊力のない訓練用を使用する。被弾は各魔導具足のコンピューターがシミュレートし、撃破判定が行われる。
公輝と先日翔子と揉めた西方訛の女子生徒が実戦訓練を行うようだ。公輝の乗る具足はちょうど、谷澤が例示した通りの装備になっている。
相手は追加スラスターは二本だが、障壁発生器を増設しているようだ。
谷澤の号令で訓練が始まる。
公輝は開始の声と同時にスラスターを吹かし、上空に舞い上がる。スラスターの青い炎が具足の軌跡を描く。
公輝はジグザクに飛行しながら、相手の出方をうかがう。相手は地上から動かず、魔導砲で公輝に狙う。
数発、青白い光線が放たれたが、公輝を捕らえることができない。
公輝は一度、上空で静止する。魔導砲の光が、具足の頬の近くを掠める。具足内のモニターには相手の具足が明瞭に捉えられ、照準補正器によって、相手に照準が定められる。
公輝は最大火力で狙い撃つ。
青い軌跡は、相手の具足に吸い込まれるように伸び、当たり判定がモニターに表示された。
その後、同様に最大火力の砲撃を4,5発当てたところで、撃墜判定となった。
地上に舞い戻った公輝は、具足の胸部を開放し、降りる。相手をしていた女生徒は小走りで向かってくる。
「さすが、公輝君やな。勉強もできるし、具足の操縦も上手いの、ほんまにすごいわ。」
少し間延びした西方訛で、語りかける彼女は、負けたのになぜか嬉しそうだ。公輝はせやろ、と右の口角を上げる。
谷澤が2人に近づき、講評を述べる。
「小川は障壁を重ねて、地上で固定砲台を企図したんだろうが、そもそも射撃が当たらなければ勝てない。障壁を重ねても破られる。射撃の腕を磨くか、照準器の搭載も考えてもいいかもしれないな。魔力量も考えると固定砲台のようなのは向いていない。」
暗に魔力量の少なさを指摘された小川は少し不満げではあるが、谷澤の講評に礼を言う。谷澤は公輝に顔を向け続ける。
「大川は、戦いの感が鋭い。標準的な装備構成だが、動きといい、射撃のタイミングや精度といい初回ながら及第点だ。ただ、良くも悪くも標準的だから、何か一つ強みを作ったほうが良い。」
予想外に褒められた公輝は嬉しそうだが、どこか居心地が悪そうだ。普段、谷澤に注意されてばかりで、慣れないからだろうか。
公輝は谷澤の講評を反芻するが、強みといっても、初回の訓練では何も想像はつかなかった。
参考がてら、翔子や涼の訓練を見学しようと切り替えるのだった。
色々立て込んでまして、なかなか更新できてませんでした……。




