表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大戦 チート魔力量で、兵器を操り無双する  作者: 針時計
士官学校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第十二話

 入学してから数週間が過ぎた金曜日。桜はほぼ散ってしまい、新緑の季節となっていた。教室には暖かい日差しが差し込んでいる。

 六限目が終わり、涼と公輝、翔子は教室で雑談に花を咲かせていた。


 「そういえば、今日は何の日でしょう。」


 唐突に公輝が質問する。涼も翔子も見当もつかない様子だ。公輝の誕生日とか、ありきたりな回答をしてみるが、いずれも外れのようだ。

 公輝は冗談めかして大きなため息をつき、答えを示す。


 「給料日やん。なんで覚えてないんや。俺は昨日、楽しみで寝れんかったぐらいやのに。」


 涼も翔子も合点がいった様子だ。そのまま三人で給料の使い道について歓談する。涼は貯金、翔子は弓道の道具の買い替えに使うようだ。

 そのまま話は、給料を原資金に遠出しようという話になる。


 「明日どっか行くなら、近場がええよな。俺、西の出身やから、大浜にでも行って小籠包とか食べたい。」


 大浜は皇都周辺にある、昔からの港町で、呉帝国や新帝国の出身者が集住する大陸街が観光地になっている。

 誰も異論はないようだったが、涼は近衛邸に顔を出す予定だっため、昼過ぎの集合となった。



 公輝は初の大浜ということもあり、集合時間より2、3時間早く向かい、一人で散策に繰り出そうとしていた。普段は規定に従い、七三分けにしている公輝だが、今日は前髪を下ろして軽くセットしている。

 服装も無地の白いTシャツに黒いスラックスという、ラフな格好だ。

 駅から大陸街に向かうには地下道を通らねばならない。さすが観光地というべきか、地下道は黒光りする漆が壁に塗られ、暖色の照明が高級感を演出している。

 所々に、大陸街の料理店の宣伝が掲載されている。意気揚々と大陸街に向けて歩く公輝だったが、横目に小さな女の子が下を向いて泣いているのを見つける。

 白髪で、短くボブに切りそろえられた髪と、白い制服は、黒を基調とした地下街でよく目立つ。

 その制服が海軍兵学校のものだと、すぐに気づいた。公輝は声をかけるか躊躇ったが、同じ軍の関係者のよしみで話しかけた。


 「お姉さん、大丈夫なん。その制服、海軍兵学校のやろ。なんか困ってるんか。怪しいものちゃうで、俺も実は士官学校の生徒なんや。」


 逆に怪しそうな口上を述べた公輝は、顔を上げた少女と目が合う。

 大きな目に涙をためた様子は、どこか小動物を思わせた。髪は地毛のようだったから、留学生かと思ったが、そうではないらしい。


 「大陸街に行こうと思ってたのに、財布を寮に忘れちゃって……。慣れないことするから……。」


 涙声でそう話す彼女は、山下雪というらしい。相当の出不精らしいが、クラスメイトがよく話している大陸街が気になった結果がこうだった。

 どうにも放って置くことができない状況に、公輝は助け舟を出す。


 「ちょうど、給料日で小金持ちやから、出資したるわ。」


 一万円札を差し出し、立ち去ろうとした公輝の腕を少女がつかむ。


 「一緒に回ってくれたりしますか……。」


 そう、心細げに言う少女を放っておける公輝ではなかった。


 大陸街は四層から五層になる、伝統的な建築が立ち並んでいる。扶桑における建築と似ているが、瓦屋根の端が天を向いており、柱に朱色が配されているところが違う。


 ほとんどの建物の一階部分では、食べ歩き用に小籠包や肉饅が売られている。

 公輝は6個入りの焼き小籠包を買って、雪に渡す。雪は公輝が止める前に一口で頬張り、熱さに悶え、その味に喜色を示す。

 そのころころと変わる表情に、公輝は自然に笑顔になっていた。


 「公輝くんは食べないの。」


 雪は大きな瞳で公輝を見つめる。この後、涼や翔子と食べ歩きの予定があるが、何故か言い出せない。

 焼き小籠包は確かに熱かったが、絶品だった。

 このあと、結局肉饅も堪能するのだった。

 ほとんど公輝が話していたが、雪はコロコロと笑う。公輝の西方訛がお気に召したらしい。


 食べ歩きが一段落して、大陸茶の店に入っていた。

 磨かれた木を基調とする店内は、落ち着く。

 急須でジャスミン茶を注ぐ。

 次の予定があるとどう話すか悩んでいたところで、雪が先に切り出す。


 「今日は、本当にありがとう。そろそろ帰らないとお父様に怒られる。私、こういうこと一緒にできる友達いないから、とても楽しかった。お金も返さないとだから、また会えたりしないかな。」


 送金してもらえば手間はないとも思うが、もう一度会える口実を得られるのは都合が良い。それほど公輝はこの少女のことが気に入っていた。


 「それだったら、せっかくだし連絡先でも交換しようや。」


 魔導端末を差し出して見せながら、公輝は提案する。

 一瞬、悲しそうな、申し訳なさそうな顔をした雪は、魔導端末は持っていないと答え、また再来週の13時にこの店で会えないかと聞くのだった。


 今時、魔導端末を持っていないのは珍しい。連絡先の交換を暗に断られたのかと思ったが、それなら待ち合わせをするのも不自然だ。

 ともかく、快諾する公輝だった。


 雪と別れたあと、公輝は涼や翔子達と大陸街観光の二周目に繰り出したが、限りある胃袋にはかなりの負担だったようだ。

 観光中、白色が頭から離れなかった。



 

 


 






 

 

 

一日サボってしまいました……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ