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異世界大戦 チート魔力量で、兵器を操り無双する  作者: 針時計
士官学校編

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12/20

第十話

 入学式から1週間が経とうとしていた。4限は地理学の授業のようだ。うららかな陽気が窓から差し込み、眠気を誘う。教室の長机は、黒っぽい色のためか、ほんのりと熱をため込んでいた。


 「前回の授業では、世界の地理について概観しました。まずは前回の復習から始めていきます。」


 軍事科目の教官と違って、教養科目の教諭は心なしか声が穏やかだ。軍人ではない、この教諭は大巻といった。

 黒板には地球が映し出され、教諭が棒を使って操作している。


 「皇国から海を隔てて、西の半島には三韓連合王国、大陸の北部には新帝国、南部には呉帝国が位置します。南西には東南連邦、大陸をさらに西に進めば……。」

 

 前回の復習であるからか、皆ノートに書き込む者は少ない。しかし流石は名門校なだけあって、みな真剣に聞いている。涼の横の男を除いてだが。

 公輝は船を漕いでいる。


 「地理学は、現実とリンクさせるとより身が入るものです。さらに西側、西方諸国へと通じる海峡を領有している、最近、皇国とシーレーンの問題で紛争状態にある国は……。大川くん、分かりますか。」


 大巻教諭は穏やかな声で、公輝を指名する。

 名を呼ばれて顔を上げた公輝は黒板を見て、新アッバース帝国、と自信ありげに答える。

 大巻教諭は少し驚いた顔をして続ける。


 「そうですね。この国は、かつての古代帝国の後継を称し……。」


 公輝は涼の方を見て、にやっと口角を上げた。

 涼はその図太さと頭の回転の早さに、感心しつつ呆れるのだった。



 砂漠に陽が昇って1、2時間は経っただろうか。乾燥に強い小さな草を除けば、砂と岩のみの世界が広がっていた。遠目には日干し煉瓦によって築かれた城郭が見える。

 城郭の中には青いタイルで彩られた、美しい街が広がっていたが、今もし、ここを訪れる人がいても、街には一瞥もくれないだろう。

 轟音を響かせながら、茶色に塗装された、99式魔導具足が光弾を放つ。4機の編隊が3組、計12機の機体が砂漠の上を、飛んでいた。

 部隊の最前の機体は遠目でも目立つ。大口径の魔導砲を両手に二挺構え、背部のスラスターの数は他の機体の二倍はあるだろうか。

 その一個中隊、扶桑皇国新アッバース帝国派遣部隊は、前方を飛ぶ敵一個中隊を追跡していた。

 追われているのは遠目に見える、城塞都市の守備隊のようだ。

 突如、前方を飛ぶ敵が反転する。

 それを合図に最前を飛ぶ機体が、二挺の魔導砲を、守備隊にではなく、岩山に向けて連射し始めた。

 轟音は砂漠の大地を揺るがし、岩山は砂を崩すように崩壊した。

 少し間があいて、崩壊した岩山が内部から爆発する。


 最前を飛ぶ機体の中で、一人の男が笑っていた。

 初老にさしかかる彼は身長こそ、平均より小さかったが、筋骨隆々であった。髪はオールバックに固められ、見開かれた大きな目は、見るものを威圧するだろう。

 彼は気炎を吐く。


 「やっぱ、打ちまくるのはたまらん。これでこそ戦争、これこそ戦争だ。軍人冥利ってもんよ。」


 待ち伏せしていた敵機を葬った彼はそのまま、残存の守備部隊の殲滅を僚機に命じる。

 戦闘が終わるまで、10分と経たなかった。


 占領した砂漠の城塞都市、ヒバでは新アッバース帝国派遣部隊の打ち合わせが行われていた。

 城塞都市の中でも一際目立つ、青いタイルに覆われた、台形の塔の隣、かつて神学校であった建物に部隊の幹部が集っていた。

 壁や柱には、びっしりとしかし、上品に植物の装飾が施され、梁にはアーチが多用されている。

 部屋には美しい彫刻が施された重厚な木の長机が置かれている。

 部屋に集う幹部は皆、立ったまま机に広げられた地図や資料をのぞき込む。


 「流石は宮川大佐、陸軍の一人戦艦と言われるだけあります。待ち伏せを予期するその慧眼も素晴らしい。」


 後続の陸上部隊の大隊長が褒め称える。意外にも得意気な顔をしたのは、宮川ではなく、魔導具足部隊の小隊長たちだった。


 「いや、敵の待ち伏せのおかげで、壁外で戦えてよかった。この美しい都市を壊さないように戦うのは骨が折れるからね。」


 宮川は大きな口を開けて豪快に笑う。噂よりも紳士的な様子に、大隊長は驚く。


 タイルを忙しなく靴が叩く音が聞こえ、勢いよく扉が開かれる。


 「大変です。宮川大佐。大佐に本国への帰還命令が出ています。」


 宮川はその大きな目を見開き、動かなくなった。

 火急の用は、戦況に関するものではなかったたが、宮川にとってはそれ以上に重大事だったようだ。


 帰還命令の詳細はこうだった。

 宮川は、1週間前に傷を負った部下を見舞ったのだが、寝台の部下に拳骨を食らわせた。

 その行為自体は仲の良いじゃれ合いのようなものだったが、随行していたジャーナリストがたまたま写真に収め、本国の記事で取り上げられてしまったのだ。

 もちろん本国では批判が殺到し、有明国防大臣直々の沙汰となった。


 「あの、クソ爺、国防予算削りやがるし、今度は俺から戦争を取り上げるのか。」


 宮川は長机のうえの資料を払いのけ、それでもおさまらず、長机に拳を叩きつけた。

 可哀想な長机は、真っ二つに裂ける。部下と大隊長が宮川を押さえようとするが、止められない。

 結局、宮川が暴挙は五分ほど続いた。

 止まったときには、宮川の大きな目から涙が滝のように流れていた。

 巻き込まれた大隊長は、強く打ったのかこちらも涙目で腰をさすっていた。


 


 


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