仮装じゃなくて本物だったのですが…これを初彼女と読んでもいいのだろか?
ハロウィン…それは…出会いあり別れあり…だがそれが人で保証もないのだ。
10月31日
「よっしスクラップ交差点行くぞー!」
「おぉーーー」
そう。今日は待ちに待ったハロウィン。今年成人になった俺たちはついに西都のスクラップ交差点で毎年行われるハロウィンイベントに親なしに参加できる。つまりやりたかった仮装ができるってことだ!これほどうれしいことはない!
「お前はなんの仮装で行くんだ、陽斗?」
「俺はネット話題になった踊るパンプキンの仮装でいくつもりだけどそっちは?」
俺は友達の蓮に聞いた。
「俺は無難に吸血鬼かな…」
こいつはイケメンだ…本当に本当にイケメンなんだ。いや嫌いじゃないよ?でも。でもでも
そのせいで俺彼女いない歴=年齢だぞ?
「吸血鬼って、おま、俺はパンプキンだけど本当に吸血鬼で行くの?俺めっちゃ浮くじゃん!」
「大丈夫だろ。お前は顔いいし」
「よくねぇよ。あとそれお前が言うなよ」
俺は彼を少しにらみ仮装過疎の準備をする。
「まぁとりあえず着替えてくるわ」
「りょ~」
俺は一度彼と違う部屋に入り踊るパンプキンの衣装を来た
「K・T・A・Z・E!!西都!」
広く人でごった返す交差点と並ぶ飲食店。これが夢にも見たイベント。
「よっし!全力で楽しむぞ!」
「んじゃ俺はお前から離れとくわ」
「は?N・A・Z・E?」
「イヤ、お前さっき自分で言ってたじゃん。俺がいると自分が浮くって。頑張って~」
「はっ!ちょ、おま」
伸ばした手は彼に届かず、人ごみに押し流されていく。気がつけば、俺は完全にはぐれていた。
「…まぁ、でもそうか…」
いや、よくねぇよ!いや確かに浮くとは言ったよ?言ったけどさ!そもそも仮装時点で浮いてるだろ!…いや、それは言い過ぎだけど…でもさ!
…まぁいくら文句言っても変わらないし、俺なりに楽しんでみるか。
俺はそのまま人ごみをかき分け、いったんフォンキーホーテに向かった。
「なるほど。こっちのほうが安いのか。でもこっちのアクスタも捨てがたい…」
友と別れて早一時間。俺はアニメグッズエリアで押しのボーカルロボットのアクリルスタンドをあさっていた。
今迷ってるのは低音ドトの水着アクスタにするかそれともメイドアクスタにするか迷っているのだ。
水着は限定だから買いたいが、メイド服を着てジト目になっているのもまたいい…。
もう一層どっちも買っちゃうか?いや、でもそれはどうなんだ?
俺が迷っている理由はこのキャラクターはそこまで有名じゃないから変えるときに買っとかなければ次いつ会えるか…うーん…迷う…
「あ、あの…」
か弱い声が聞こえた。声のほうに目をやるとアニメ「獣娘」の狐のキャラクターのコスプレをした女性が話しかけていた。
「あの、あなたも低音ドトのファン?なんですか?」
その女性はそういい俺の持ってるアクスタに指を刺した。
「え、えぇ…そうすね…」
うわ…カワエエ…こんなオタクみたいなのに話しかけてくれたなんて…
しかもドトを知ってるなんて…
ってまずい見とれてる場合じゃない!話しかけなければ!」
「そ、その好きな曲とかって」
うわぁぁぁ何言ってるんだ俺ぇぇぇぇ!「好きな曲なんですか?」って明るく聞けよ!
あぁ…こうやってどんどん恋人にできた女性が消えていく…
「え、あ、その」
ほら見ろ困惑してる、本当に終わってるな俺…
「わ、私、’’夜に咲く桜’’が好きです」
「あ、いいですよねその曲。僕も大好きです!」
「本当ですか?いいですよね」
まずい。楽しい。こんな変なコスプレしてる俺にめっちゃ話しかけてくれるしあぁ…幸せです…
あれからあの勢いで酒屋に向かい一緒に飲みオタク話に花を咲かせていった。
というのは覚えている。
「あっ!起きました?」
…なぜこ、うなった?
「俺、何してたんだ?」
脳がパニックになってる
「えっとですね、お酒を飲みに行って、酔っぱらった私たちを蓮さん?って人が見つけてくれて私の家まで送ってくれたんですよ♪」
蓮…あの野郎…絶対図っただろ…
「えっと、すまんこんなみじめな姿見せて」
「いえいえ。私もほとんど覚えてないですから」
この子…もしかして天然?
「あっ、俺帰ります。この服だときついんで」
「え?じゃぁ連絡先交換しましょうよ!」
勢いがいい、いや勢いが強いって言ったほうがいいな。
「お、おう。はい」
俺は携帯電話のQRコードをだしそれを彼女が読み取った。
「んじゃまた」
「はーい!」
家に帰る途中
「そういえばもうハロウィンは終わっちまったのか…ってうん?」
目を疑った。
携帯には10月31日とある。
でもたしかに俺は昨日ハロウィンを楽しんだはずだ。
「気づいちゃいました?」
背筋が凍るような感覚を覚えた。
「私がこの姿で歩き回れるのはハロウィン(今日)だけなんですよ」
「え?」
うん?どういうことだ?まって頭の中が現実味のない状況にオーバーヒートしてるんだけど…
「え、いや、君は、人だよね?だって、人外なんて、いるはず…」
「いいえ」
時が止まった気がした。
「人外なの」
「じっ…」
あまりの驚きと収集できない情報で頭がパンクし俺はその場で気絶してしまった。
だって彼女が人外だなんて誰がわかるんだよ!
いや、確かにね。飲んでる時なんか耳がピクピク動いてたりつけ尻尾が動いたりしたけど。
「最新の技術ってすげぇ」としか思ってなかったぁぁぁぁ!!
多分普通の人なら気づくよねさすがに気づく!なのにあの時俺は泥酔してたから変な思考に…
うわぁぁぁぁぁ!やってしまったぁぁぁぁ!やばいよ!!人外とか!そんなのフィクションでしか聞いたことないよ!!
「( ゜д゜)ハッ!」
え、またあの天井…ってことは…
「また起きたんですね?」
「もうやめてぐれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
あぁ〜!そうだこれは夢だ!!ハロウィンを楽しみにしていた俺の夢!!だから現実味がないことが起きているんだ!!俺は勢いよく頬をつねったが痛みを感じた。
夢じゃない!嘘だ!これが現実だなんて…
「…煮るなり焼くなりなんでも好きにしてください…」
あっ、これ助からないわ。これ多分死ぬ。俺この美少女に食われて死ぬわ。
短いけど楽しい人生だった…
「…なんでもですか?」
耳がぴくっと動いた。
「えぇ。もう煮るなり焼くなりなんでも好きにしてください」
瞬間。俺と彼女の間に沈黙が走る。
「…その、人外と人ってわかり会えると思う?」
「えっ?」
「あぁもう!こうやって回りくどく言うのは尺に触れるから直球で行くよ!!私とあなた。つまり人外と人間はお付き合いできるかって聞いてるの!!」
力強く放たれた言葉が俺の中を駆け巡る。
???????
どういうことだ?えっ?食べられないの?俺食用じゃないの?
「…仮に付き合えたとしてもハロウィン(今日)に閉じ込めとく必要なんてないでしょ」
「私は見ての通り人外。こういう時しか外出ができないの。だから…だから能力を使ってあなたといる時間を長引かせたの」
…よく考えれば。断る意味なんてないはずだ。だって目の前でこんな美少女が俺に告白してきたんだ。共通の趣味を持ち、酒の場では一緒に楽しく雑談出来る。おまけに優しいときた。
こんな美人を俺はないがしろにするのか?
彼女は’’今’’困ってるんだ。彼女はまるで七夕を待つ織姫のように一年中孤独に耐えながらハロウィンを待っている、彼女は’’今’’苦しんでいるんだ。俺は…俺は苦しんでる人を見殺しにする勇気はない!
「…可能性はあると思う」
「‼️」
「俺達が付き合えるかは世間的にはわからない。でも可能性はあると思う」
「可能性…?」
「でも!」
俺は大きく声を上げた。
彼女はその声に驚き耳と尻尾の毛を逆立てる。
「付き合ってください。くらいは俺の口から言わせてくれよ」
再び沈黙かが走る。
彼女の目に涙が浮かびこちらに飛びついてきた。
「…っはい!」
彼女のその笑顔は涙でぐちゃぐちゃだったが、俺はそんな彼女を愛おしく思った。
…仮装じゃなくて本物だったけど…それでも俺は彼女を初彼女と呼ぶ…
二人は今後も幸せに生活するのだろう。私にそれを見ることはできないだろう。
二人の幸せを祈って…




