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月を詠む  作者: 都合
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帝都へ

往来する人々、ひっきりなしに通る車、私の手を握る大きな手。その手を辿ると、洋服を着たツクヨミ様にたどり着いた。


遡ること数時間前、朝ご飯を食べた私の元にツクヨミ様がやって来て、帝都へのお出かけを提案された。もちろん、断る理由などないのですぐさま快諾の返事をし、夜の里を出発して今に至る。


普段と違うのは、普段は着物を着ているツクヨミ様が洋服を着ているということ。紺色の基調としたチェックのスーツ。スタイルの良さが際立ち、ハットはミステリアスな雰囲気を醸し出している。


見惚れてしまうとは、このことか。そして、隣にいるのが私でいいのかと気後れしてしまう。ツクヨミ様とのお出かけとあって、できる限りのおめかしはしてきたが、それでもできることは限られてくる。結局、あまり普段と変わらない装いになってしまったのだ。


「どこか行きたいところはあるか?」


帝都の街中を当てもなく歩く。街を歩くだけでも私にとっては新鮮で楽しい。それに、「行きたいところ」と言われても、私にはそれらを選択するだけの知識がない。


「いえ、希望はありません。こうして街を歩くだけでも新鮮で楽しいです」


「そうか。では、私の買い物に付き合ってくれ」


どうやら、街中を当てもなく歩いていると思っていたのは私だけだったらしい。ツクヨミ様は歩みを止めて、道路沿いにある一軒の店に入る。中に入ると、そこはブティックで、一目見ただけでも分かる高級な洋服が並んでいた。


「いらっしゃいませ」


男性の店員が深々と頭を下げる。丁寧な所作から気品が漂い、高級店らしさが伝わってくる。


「洋服一式を見繕ってくれ」


そういって、ツクヨミ様は私を店員の前に差し出す。「私の買い物」と聞いていたので、この状況に驚いてしまう。


「かしこまりました」


驚いている間に、店員は私に店の奥に進むよう促す。ツクヨミ様の方を振り返る間もなく、仕切られた空間に移動した。



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