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月を詠む  作者: 都合
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気持ち2

並んで縁側に座る。中庭の沓脱石には、私とツクヨミ様の下駄が置いてある。隣に座るとツクヨミ様は私の肩に羽織をかけてくれる。ふわり、といい香りが鼻を通る。今まで何度かあった事なのに、今はそれすら照れくさい。


「それで、話というのは?」


改めて聞かれると、どう話し出していいか分からなくなってしまう。


「えっと…、私の気持ちの話なのですが、その、ツクヨミ様に聞いて欲しくて…」


口を開くと同時に心拍が一気に上がる。緊張からか、呼吸も少し浅くなる。


「分かった。ゆっくりでいいから、落ち着いて」


途中で話が途切れてしまった様子の私をツクヨミ様は落ち着かせてくれる。こういう優しさが、私の気持ちを揺さぶる。自分でも落ち着かせるように、胸に手を当てながら話す。


「自分でも何故かは分からなくて、説明ができないのですが、ツクヨミ様のことを考えると、胸が締め付けられるような感覚になるんです。」


話出すと堰を切ったように、取り留めのない気持ちが言葉として溢れてくる。


「私自身を見てくれること、私の伴侶と言ってくださったこと、私を大事にしてくれること、それがすごく嬉しいと思うんです。私が、業のことを受け止めきれて、父の前に立つことができたのは、ツクヨミ様が隣にいてくれたからで、他の人とでは成しえなかったと思います。それで、それで」


浅くなった呼吸を整えるために、意識して深く息を吸う。ツクヨミ様は黙って私の話を聞いてくれている。


「月華、という名を貴方から頂けたことが、すごくすごく幸せで。名前を呼ばれる度に、その幸せが広がっていくような気持になって、それで」


あぁ、なんでだろう。分からない気持ちの核心に近づくに連れて、気持ちが高まって、自然と涙が滲む。


「も、もっと、触れてほしい。私も触りたい。ずっと一緒にいたいと、そう、思うのです…」


言い切ったと同時に、一粒、ぽろりと涙が頬を伝う。その軌道が分かるくらいに、熱い。ツクヨミ様を見ると、目を見開いて驚いた表情をして、私の言葉を咀嚼するかのように呟いた。


「ずっと一緒にいたい、そう思うのか?」


私の顔を覗き込んで確認される。涙を拭う指の熱が頬に伝わる。私は、黙って頷く。


「そうか…そうか!」


見開いた眼が、柔らかく細められる。引き締められた唇が、ゆっくりと口角を上げる。そして、力強く抱きしめられた。想像もしていない、突然のことで、涙が一気に引っ込んでいく。どうしてツクヨミ様が私のことを抱きしめてくれるのか、それも分からない。


しばらく抱きしめられて、腕の力が緩む。しかし、その腕はまだ背中にまわっていて、私たちの距離は息がかかる程に近かった。


「私も同じ気持ちだ」


丁度、月明かりがツクヨミ様を照らしていて、その光が美しさをより際立たせる。目じりは下がり、瞳の夜が色濃くなる。唇は緩やかに弧を描き、それはそれは、美しい。そう思わせられた。




「私はそれを、恋、と形容している」




それは、私には尊すぎる、2文字だった。

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