気持ち
「話してあげて。きっと喜ぶから」
そう言ったアマテラス様は「近々また来るわね~」と陽気に自分の里へ帰っていった。その陽気な様子を見たツクヨミ様は不思議そうにしており、首をかしげていた。
その後は、ツクヨミ様のお仕事を少し手伝って、部屋に戻りツツジと過ごす。窓の外を眺める癖は抜けないが、ツツジは一緒に眺めて話をしてくれる。一日が過ぎるのは早く、気が付けば夜も更け、寝る支度をする。
寝ようかと思い、寝室に向かっていた時に思い出す。
「話してあげて。きっと喜ぶから」
お昼に言われた、アマテラス様の言葉。この気持ちが何なのか、話をするにも内容がまとまっていないけれど。もし、もし。この話をすることでツクヨミ様が喜んでくれるのなら。
そう思うと、自然と足が動いていた。
◇
空は色濃く変化して、昼間よりも一段空気を落としているような静けさが広がっている。何故かそれが落ち着いて、私にとって心地の良い時間帯になっていた。進める足は迷いなく、目的の場所まで向かう。
途中で空を見上げる。ひと際月明かりが眩しいと思っていたら、どうやら今日は満月らしい。欠けのない、綺麗な月が夜を照らしている。これが太陽の光を反射しているというのだから、不思議なものである。
「どうした?」
前方から床の軋む音と共に聞こえてきた声は、目的の場所にいるはずの人物だった。寝る前だからか、浴衣姿でその前は少しはだけている。いつもは見えない肌が見えていて、目のやり場に困る。肩には、いつものを羽織を腕を通さずにかけている。
「あ、あの…。少し話したいことがあって…」
心構えの前に話が始まってしまったので、しどろもどろになってしまう。思わず俯くと、横の髪がはらはらと流れ落ちる。
ツクヨミ様は目の前まで来て、その流れ落ちた髪を掬って私の耳にかける。わずかに触れた手の暖かさ。それをもっと、と思ってしまう自分がいた。
「そうか、中庭でもいいか?」
手が離れて、それを追うように視線を上げる。私は大きく頷いて、歩みを進めたツクヨミ様についていく。




