ケーキ
「こんにちは、月華ちゃん」
とある日の昼下がり、自室のドアをノックされたので返事をする。入室してきたのは意外な人物だった。
「アマテラス様、お久しぶりです」
私はすぐに立ち上がり、アマテラス様に駆け寄る。お会いしたのは、廃病院が最後だったので、落ち着いてから話をするのは初めてだ。アマテラス様は、手に持った小さな箱を掲げてウィンクする。
「ケーキ買ってきたの、一緒に食べましょ」
聞いたことのない単語にきょとんとしてしまう。けーき、とはなんだろう。アマテラス様の言葉から、食べ物なのは分かるが、どんなものなのだろう。
「はい」
良く分からないまま、返事をする。アマテラス様が誘ってきたのだから、悪いものではないだろう。私が生返事をしたことが分かったのか「うふふ」と声に出して笑ったアマテラス様は、人差し指で私の額をつついた。
「んも~、良く分かってないのに返事したわね。可愛いんだから」
そうだ、アマテラス様は心を読むことができる妖だ。それを思い出し、良く分からないまま返事をしたことが気恥ずかしくなってしまう。
「とっても美味しいのよ。さ、食べましょ」
椅子に座ると、共に自室に居たツツジが手際よく準備をしてくれる。あっという間に、テーブルにけーきと紅茶が用意された。目の前の皿には、三角柱の形をした物体が置かれている。この間食べたカステラと似たようなものなのだろうか。上にはイチゴが乗っていて、部分的に白くコーティングされている。
「うふふ、ケーキ初めて?」
アマテラス様は既にケーキを口にしていた。私は、「はい」と返事をして、同じようにケーキを食べる。
「ん、美味しいです…!」
甘い。カステラとは違う、とろけるような甘さと果物の酸味が口に広がる。
「良かった~」
私達はケーキの美味しさに舌鼓を打ちながら、その手は止まることなくケーキを食べ進めた。




