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月を詠む  作者: 都合
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対話4

「なっ…!」


父はアマテラス様の迫力に怯み、その場から一歩下がる。納得がいかないのか、手を握り締めて、怯えつつも口を開く。


「財を求めて何が悪い…!」


それはまるで、子供の言い訳のような、浅はかな言葉だった。


「お前たち妖には分からないだろう!外界から身を隠して、こそこそと生きているお前たちには!私たち人間は、世界と競り合わなくてはならない!その世界を相手にするには日夜働き、成長をしていかねばならん!遅れを取るわけにはいかないのだよ!そのために財は必要不可欠!これは後々の日本のためでもあるのだ!!」


話をしているうちに「日本のため」という大義名分を得たのか、急に強気になり語気が強くなる。確かに、人間は世界中にいて交易も盛んに行われている。日本は島国ということもあり、他国は簡単には攻めることはできない。しかし、それでも小さな国だ。対等に接するためには、技術、研究、財は求められる。しかし、しかし。だからと言って。


「人を犠牲にするのは、許されることではありません!」


自然と声が出たのは、怒りからか、はたまた。


「月華…」


一歩前に出た私に驚いたのか、ツクヨミ様は心配そうに私の名を呼ぶ。それに応えるように、ツクヨミ様の顔を見て頷く。そして再び父に向き直った。


これでだめなら、私は。決断を下す。


「ミツ、何も知らないお前が父である私に物申すか」


「はい。でも、もう何も知らないわけではありません。夜の里に嫁いでから、話を聞き、私なりに考えました。その上で、ここにいます。」


怯むな、負けるな、先手を打て。きっと父は私が相手だと強気に来るだろう。私には、ツクヨミ様のような威圧感なんて出せない。だから、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。


「何の躊躇いもなく、業は人を襲っています!そこまでして求める財は本当に必要でしょうか?お父様のしていることは間違っています!」


聞いてもらえるかどうかなんて分からないけど。きっと、私の声なんて届かないだろうけど。それでも、間違っているということは伝えたい。


「お前は何も分かっていない。良いから、こちらに来なさい」


「お父様!私の話を…!」


「ミツ!来なさい!」




少しも届かなかった。所詮私は、ただの検体で、所有物だった。


少しくらい、私が話せば、なんて。もしかしたら、考えを改めてくれるかも、なんて。少し期待してしまっていた。それも虚しく、夢物語になってしまった。




私は、上のシャツのボタンを2つ外して、首筋を見せつける様に襟を引っ張る。少しだけ左に首を曲げ、より目立つようにする。


一瞬だけ、動揺させれば良い。


「お父様、知っていますか?妖は人間と同じく食事で栄養を取りますが、人間の血でも代用することができるんですって」


全くの嘘である。だが、私の血を求めている父には、動揺する大きな材料になるはずだ。ツクヨミ様は私の話を聞いて意図を察したのか、後ろから抱き着いてきて露わにした首筋に唇を寄せる。


優しく振れるそれが少しくすぐったかったが、何とかこらえて止めの言葉を吐く。


「血を全部吸われて、木乃伊にでもしてもらいましょうか?」

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