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月を詠む  作者: 都合
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対話3



私の存在を見てもらえている。


一人の人間として、大切にしてもらえている。




これが、どれほど嬉しいか。いいえ、「嬉しい」では言い表せない。この気持ちを正確に表す言葉を、私は持ち合わせていない。




この、気持ちは。







刀を向けられた父は、交渉決裂と思ったのだろう。にこやかにしていた表情が一気におぞましいものになっていく。私たちを憎悪の対象のように睨んでくる。


「そうですか、そう仰るなら仕方ありませんね」


先ほどと同じだ。きっとこの後、業を出して襲い掛かってくる。ワンパターンの行動に、私もツクヨミ様も自然と構える。ここは、敵の本拠地といっても過言ではない。何が来るか分からない。


「月華、私から離れるな」


「はい」


ツクヨミ様は前を見据えたまま、私に声をかける。私はツクヨミ様の真後ろに移動して、様子を伺う。すると、出入り口の方から足音が鳴り、それは黒い粒子と共にすぐにここに入ってきた。


何体入ってきたのかは、確認することができなかった。ツクヨミ様がすぐに前に出て、私を後ろにする。出入口は狭かったので、業は一気に襲い掛かることができず、次々と心臓を刺されて黒い粒子となり霧散していった。


しかし、やはり数には敵わない。徐々に押されて、囲まれてしまう。じりじりと近づいてくる業に、万事休すかと思った瞬間、左手でツクヨミ様に抱き寄せられる。それと同時に風が舞い、反射的に細めた視界には陽の光と、鬼灯の実が降り注いだ。




「一人に寄ってたかるなんざ粋じゃねぇな!」


「いじわるする人って、かっこ悪~い」




派手な登場をしたスサノオ様とアマテラス様は、ツクヨミ様と共に一斉に業を倒していく。スサノオ様は刀で業を吹き飛ばし、その隙にアマテラス様が妖術で心臓を打ち抜いていく。業は次々に霧散して、姿を消していった。


「ど、どこから現れた…!?」


突然現れた2人に、父は驚き困惑している。それも無理はない。ここは室内で、風が舞うような場所ではないし、突如姿を現したのだから。私も少し驚いている。


「別にどこからだっていいじゃない。私達は妖なんだから」


普段の穏やかな様子とは打って変わり、冷酷な態度をとっている。業の追撃が止んだタイミングで、父の目の前まで歩いていく。そうか、きっと、父の心を読んでいるのかもしれない。アマテラス様の妖術の中には、人の心を読むことができるものがある。現に、私はそれで夜の里に嫁ぐことになったのだ。


「ふぅん…」


意味ありげな様子で父を凝視し、一言。




「お前、どうしようもないな」




その美しさからは想像もつかない程の、低い声が鳴り響いた。

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