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月を詠む  作者: 都合
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遭遇4

「その必要はない。私たちはもう帰る」


ツクヨミ様は飄々とした態度で答える。私は背中にしがみついたまま、少し顔を出して父の様子を見る。


「いやなに、娘は喧嘩したと話していたので。父として帰すのはまだ心配なのですよ」


父は朗々と話をする。近くには、フロントガラスがひび割れている車、刀を持っている妖。この状況にはそぐわないものであった。


「そのような事実は無い、聞き間違いだろう。妻が実家の様子を気にしていたので連れてきたまでだ」


父の言葉に少し不服そうな声色になる。そして、一方の父は「妻」という単語に反応した。


「これはこれは、里長様でしたか。ご挨拶もせず申し訳ございません。娘がわがままを言ってしまったみたいで…」


先ほどよりも間延びした話し方。それは媚びを売っているようで、コロコロと変わる父の態度から不気味さを感じ取れた。


「問題ない。私たちはこれで」


ツクヨミ様は振り返って私の腰に手を回して、父の前から立ち去ろうとする。私もそれに合わせて歩みを進める。すると背後から父が声をかける。


「お待ちください!娘は…!」


それは、切羽詰まったような様子で、どうしても私を引き留めたいという思惑があるように思ってしまう。夜の里に嫁ぐ時は、あんなに淡泊だったのだ。今のこの執着するような様子が異常とまで思ってしまう。


「まだ何か?」


怪訝そうな低い声で答える。父は、ツクヨミ様のあからさまな態度に怯みつつ、それでも負けじと話し出す。


「そ、その。そう!娘の体調が気がかりでして…!帰る前に診察を受けさせてやりたいのです…!」


取ってつけたかのような理由に、ツクヨミ様も私も呆れてしまう。体調が気がかり、ではなく、業の進化のために私の血が欲しいだけだろう。


「分かった、すぐに帰って里の医者に診せよう」


「い、いえ、ですが…」


父は何とかして私に診察を受けさせようとしている。


「ミツさんは私がずっと診察しておりましたので、こちらで診た方が安心かと…」


父の援護をしたのは、後ろに控えていた医者だ。アマテラス様によると、彼も業の進化に関わっている。父と同じく、私を引き留めたいのだろう。


「その必要はない」


しばらく押し問答を繰り替えした。父は、医者に目配せをして、それに頷いた医者は車に戻っていった。やっと帰れると思ったのもつかの間。


「そこまで強情なら仕方ありません。この手は使いたくなかったのですが…」


わざとらしくため息をついた父は、憐れんでいるような眼を私たちに向ける。急な態度の変化に、恐怖心が煽られる。何か嫌な予感がする。その予感はすぐに当たった。


医者が戻った車から、黒い粒子があふれ出した。その粒子は先程遭遇した業が発するものと同じで、車の陰から5体の業が出現した。

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