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月を詠む  作者: 都合
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道中

「花嫁様は婚礼についてどこまで存じておられるのでしょうか?」


帝都から里へ向かう道中、案内人の男が口を開いた。「どこまで」という質問の意図が読めず考えたが、なにせ婚礼についても昨日初めて知ったことだ。正直に言って問題ないだろうと思い、話すために息を吸う。


「業の共闘のためと、昨日父から聞きました」


すると、案内人は肩を上げ、「えっ」と小さく放った。面で表情は見えないが、驚いたのだろう。


「で、では、誰と結婚するか、どこに向かっているかなどご存じではないのですか?」


先程よりも、少し声が大きくなっている。やはり驚いたのだろう。彼の気持ちは良くわかる、私も昨日同じ気持ちだった。


「えぇ、何も」


私の状況を察したのか、案内人は簡単にこの婚礼の顛末を話してくれた。




業の状況は私が思っている以上に深刻なものであった。進化を繰り返す業は、個体にもよるが妖にも拮抗する力を持っているという。強い妖力を持った妖が退治をしているが、それも業の進化によっては今後状況が変わってくるかもしれない。業の分析は人間の方が進んでいるので、共闘は賛成する。だが、今まで交流のない人間に対する信頼がない。その信頼の証として花嫁をもらい受けた、ということらしい。


「なぜ、私が選ばれたのですか?」


父に言われた時から思っていた疑問、なぜ私なのか。あの時は聞けなかったが、今なら聞ける。


「それに関しては私はわかりかねます。申し訳ございません」


案内人は深々と頭を下げた。慌てて「いいのよ」と彼の謝罪を受け入れ、頭を上げてもらう。目的地までどれくらいかかるか分からないが、それまでに、できるだけ情報は仕入れておきたい。彼に話の続きをお願いする。


「花嫁様は、夜の里の里長、ツクヨミ様の奥方になられます」


「ツクヨミ様?神様?」


ツクヨミ様。ツクヨミって神様のツクヨミ様のことだろうか?思わず首をかしげてしまう。


「いいえ、ツクヨミ様は獏の妖で、強大な妖力をお持ちの方です」


まるで自分のことを誇るかのように、胸を張って答える案内人。どうやら、ツクヨミ様は彼には慕われているらしい。


「そう、なのね」


できるだけ情報を仕入れておくつもりが、案内人の口から出てくる言葉が突拍子もなくて、理解が追い付かない。その反面、分かったこともある。夜の里、獏の妖、ツクヨミ様。目の前の案内人は狐か猫の妖だろうか。そうなると、夜の里には、様々な妖がいるかもしれない。今のように、話をできる妖が多いといいのだけれど…。


そう考えていると、さらり、と頭を撫でられるように急な睡魔に襲われ、そのまま意識を手放した。

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