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月を詠む  作者: 都合
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遭遇2

私の姿をした業は、殴りかかってくるように、飛び掛かってくる。ツクヨミ様は私を抱きしめたまま、素早く懐から扇子を取り出して、その拳を受け止める。


その音は、人の肉からは発せられるものとは考えられないような金属音。鍔迫り合いのような音が鳴っていた。ツクヨミ様は、受け止めた拳を薙ぎ払い、業と距離を取る。右手には小さな光が集まって、収束したと思ったら刀が現れた。


「下がっていろ」


風が舞う。それに順じて、陽に照らされた白銀が煌めく。何度、この方に救われるのだろう。そして、どうしてこんなに安心できるのだろう。その大きな背中に絶大な信頼があるのは、どうしてなのだろう。


私は大きく頷き、少し後ろで尻もちをついている運転手の元に行く。この様子だと、運転手は動けないだろう。それなら、2人でまとまっていた方が良いはずだ。


薙ぎ払われた業は、すぐさま態勢を整えて、もう一度飛び掛かってくる。ツクヨミ様はそれを鞘で受け止め、刀を下から振り上げる。刀身が脇腹に入り、そのまま肩まで一撃で切り裂く。その一連の動作はまるで、水が流れ落ちる様子を連想させた。


切り裂かれた部分から黒い粒子になって散っていく、かと思いきや。その粒子はまた集結し、再び私の形を形成していく。


「気分が悪い…!」


ツクヨミ様は吐き捨てるように言葉を放って、業へ踏み込んで、一閃。時を止めたかのような素早さ、さながら閃光の如く。その一突きは正確に心臓を貫いていた。


再び、業は黒い粒子になって散っていく。それは集結することなく、空に離散していった。


「月華…!怪我はないか」


業を倒したことを確認したツクヨミ様は、振り返って駆け寄ってくる。


「大丈夫です。ツクヨミ様は?」


「私も大丈夫だ」


羽織を脱いで、私の肩に掛ける。いつも通り、袖に腕を通す。今の今まで着ていた羽織は、ツクヨミ様のぬくもりが残っており、不思議と心を落ち着かせた。


ツクヨミ様は、尻もちを付きっ放しの運転手に手を差し伸べて、彼を立たせる。運転手は照れ臭そうに礼を言い、車の様子を見に行った。

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