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月を詠む  作者: 都合
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遭遇

窓から蝶が舞う。これはツクヨミ様が御者に出した伝達の蝶だ。急遽、帝都を出ることになったため、御者に迎えを呼んでいるのだろう。ある程度の場所まで送ってもらったら、乗り換えて帰る、という算段だろう。


車内は静まり返っており、車のエンジン音だけが響いている。ばあやが用意してくれた運転手だが、それでも油断はできない。私のことを気遣ってくれているとはいえ、本人の口からは何も聞いていないのだ。警戒しておいて損はないだろう。


前から後ろに景色が流れている。敷き詰められるように建っていた建物が、疎らになっていく。人々の往来がなくなって、緩やかになっていく。それは帝都の外れに来たことを意味していた。


「こちらで十分です」


突如、ツクヨミ様が運転手に告げる。その言葉に反応して車は一時停車する。


「あの、何もないのですが、よろしいのですか?」


運転手は戸惑っている。それも無理はないだろう。どこまで送って行くのか知らないにしても、ここには何もなさすぎる。もしかしたら、私がどこに嫁いだのか知らないのかもしれない。ツクヨミ様も女性の妖に化けているが、一見すると人間と大差ない。それを鑑みると、彼の反応は至って順当だ。


「迎えが参りますの…」


鈍い衝撃音。ツクヨミ様が言葉を発したが、それはすぐに遮られた。聞いたことのない音が耳をつんざく。それは車の前方から鳴っており、反射的に目を向けるとフロントガラスの部分が放射線状にひび割れていた。


「うわぁ!」


運転手は驚いて声を上げて外に飛び出す。私とツクヨミ様も続いて外に出た。車は確実に停車していた、帝都の外れといっても、大きな野生動物が飛び出してくる場所でもないように思える。では、一体これは何がぶつかったのだろうか。


それはすぐに判明する。車の少し前方、ぶつかったと思われる対象が居る。それは倒れているわけでもなく、うずくまっているわけでもない。何事もなかったかのように、まるで最初からそこに居たかのように。黒い粒子を纏ったそれ。




色を失った、私が立っていた。




それは、私と目が合うと口角を上げて、大きな一歩を踏み出す。その飛距離は到底人間のものではない。素早い動きがゆっくりに見える。まるで時間の流れが一気に遅くなったみたいだ。ゆっくり見えているはずなのに、私は何も動けず、目も離すことができなかった。


だから、次の瞬間引き寄せられた力になすがまま身を預けていた。視界の端に、小さな淡い光が数多く舞っている。腰を強く引き寄せられてたどり着いたのは、ツクヨミ様の胸元で、いつの間にか元の姿に戻っていた。

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