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月を詠む  作者: 都合
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作戦会議

翌朝、街が本格的に動き出す前。私たちは帝都を散歩してくると屋敷を出ていた。やってきたのは帝都にある洋館。外観は古くて人が住んでいる気配がなかったが、中は綺麗に整えられている。


「おはよう、月華ちゃん」


中にはアマテラス様がいて、暖かく出迎えてくれる。リビングのソファーに座るように促され、端の方に座る。ツクヨミ様は中に入った瞬間に変化を解いて、男性の姿に戻った。


「あ~!なんで戻るのよ~、勿体無い」


「化ける意味がないだろう」


アマテラス様は腰に手を当てて抗議するが、ツクヨミ様は冷たくあしらう。そして、私の隣に腰を下ろした。やはり、化けているときと体つきが全然違う。身長はもちろん、骨格から変えているのだろう。不思議である。


「遅くなった!」


バタンと大きな音を立てて洋館に入ってきたのはスサノオ様だった。後ろにはヒイラギ様もいる。


「よし、みんな集まったし、分かったことを共有しましょう」


にこやかに手を叩いたアマテラス様は、その表情を一変させ真剣な表情になった。


「まずは私ね、月華ちゃんの血は帝都の外れにある廃病院に持って行っていたわ」


廃病院、更に帝都の外れとは。これはまた隠れて実験をするにも丁度良い場所だろう。


「中を色々見てきたけど、業の進化もそこで行っているみたい。手順が書いている冊子もあったわ」


こんなにあっさり見つかるとは、さすが妖といったところだろうか。アマテラス様は更に話を続ける。


「昨日そこにいたのは、月華ちゃんのお父さんと先生だけね。でもあの規模だと、他にも関わっている人はいると思うの」


やはり、やはり。父は業の進化に関わっていた。まただ、心に靄がかかる。いや、余計なことは考えないようにしよう。今はただ、現実を受け止めよう。考えるのは、それから。


「大丈夫か?」


ツクヨミ様は小声で言葉をかけてくれる。私は頷いて「大丈夫」と意思表示をする。アマテラス様とスサノオ様の2人は、私たちの動きに反応してこちらを見たので、それを機に昨日会ったことを話す。


「実家の屋敷は変わった様子はありませんでした」


私に続いてツクヨミ様も話し出す。


「もしかしたら使用人の女と男も業のことを知っているかもしれないな。女の方は私たちに『戻れ』と言ったが、男は私たちを歓迎した」


ツクヨミ様の話にアマテラス様も頷く。


「それ!私も聞いていたけど、あの感じは知ってそうよね~。月華ちゃん、女性の方とはどんな関係?」


使用人の女性、乳母のことだろう。


「物心がついた時から、身の回りのお世話をしてくれた人です」


私は乳母との関係性を話す。言い終えると、私の話の続きを待つような沈黙が流れた。


「まさか、それだけじゃねぇよな?」


沈黙に耐えかねたスサノオ様は、私の顔を覗き込んでくる。その表情は「納得がいかない」と言いたげなものだった。私にはその表情をする理由が分からない。


「そ、それだけ…です」


なんとなく気まずくなってしまい、俯く。ツクヨミ様は私の肩に手を回し、引き寄せる。スサノオ様を手で払うような動きをしてくれたことによって、私は気まずさから解放された。


「乳母とは普段から顔を合わせていたのだろう?何を話したりしていたんだ?」


ツクヨミ様から改めて問われる。そして思案。それでも、私と乳母には特筆すべきことはない。彼女は寡黙で、真面目に仕事をしていたと思うし、余計な話などしなかった。




「お嬢様、とてもお綺麗です。ですから、大丈夫です」




あの時ぐらいだった。私が夜の里に嫁いだあの日。彼女は目に涙を浮かべて、業務以外の話をした。それ以外は、ただ、変わらず身の回りのお世話をしてくれていただけ。


「普段は特に何も。挨拶と彼女の業務に関わることを話すくらいでした」


そうか、そうか。そうなのか。私と乳母くらい一緒に過ごしていれば、何かしらの関係性が築けるものなのか。そうか、だからスサノオ様は、私と乳母の関係性の一言に納得がいかなかったのか。

例え、他がそうであったとしても、私はそうではなかった。それに気が付いてしまったのが、なんとなく寂しいと、そう思ってしまった。

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