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月を詠む  作者: 都合
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月の光

「場所を変えるか」


そう提案されて、ツクヨミ様の私室から、中庭に移動した。名前を変えることになったが、具体的にどのような名前にするのか聞いていない。今も、ツクヨミ様についてきて中庭に来ただけで、移動している間は、お互い無言だった。


新しい名前。どうしたらいいのだろう。ツクヨミ様が考えてくれるのだろうか、それとも自分で考えるのだろうか。そうなったら、難しい。なにせ、名前など考えたこともない。初めてのことは、時間がかかってしまう。


新しい名前、ツクヨミ様に付けてもらいたいな。などと、思ってしまった。そう思うのは、傲慢で、とても烏滸がましいのだけれども。


前を歩いていたツクヨミ様が振り返る。その姿は、月明かりに照らされていて、神秘的で、見惚れてしまうほどだった。






「月華」






それはまるで、寵愛を言語化したような。それはまるで、壊れ物に触れるような。それは、それはまるで。


心拍が一気に跳ね上がる感覚、体内でこだまする心拍は、外にまで聞こえてしまっているのではないだろうか。そして、心臓が握りつぶされているのではないかと錯覚するほど、胸の奥が緩やかに締め付けられる。こんな感覚、初めて。


「嫌だったか…?」


返答のない私を見て、ツクヨミ様はかがんで私と視線を合わせる。頬を撫でるように、顔にかかっていた髪の毛を耳にかけてくれる。微かに触れた手に反応して、また心拍は跳ね上がった。


「いえ、素敵な名で、つい、惚けてしまいました」


瞳を閉じて、添えられた手に頭を預ける。


「げっか、月華。私の身に余るほど、綺麗な名です」


かみしめる様に、自分の名前を繰り返す。嬉しいと、切ないが混ざったような、知らない感覚。これはなんと言うのだろう。こんな感情、知らない。




「綺麗なお前だからこそ、似合う名だ。月華」




初めて。胸を締め付けて、嬉しくて、切ない。こんな気持ち、初めて。こんな気持ち、知らない。一粒、涙が流れる。あぁ、この気持ちって、なに。

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