提案
ツクヨミ様と向かい合わせに座る。これは、あの時と同じ、だ。体が強張る。何を言われるのだろう。
「体調はどうだ?」
「変わりありません」
「何か困ったことはないか?」
「ないです」
「昼間は何をしていた」
「屋敷の中を散歩していました」
「何か見つけたのか」
「中庭に咲いている花がきれいでした」
「そうか」
「はい」
振られる話題は、当たり障りのない内容で、肩透かしをくらってしまう。ツツジは「大事な話」と言っていた。これがそうには思えず、困惑してしまう。
そして、沈黙。しん、と静まり返って、どうしていいか分からなくなる。ツクヨミ様は腕を組んで、視線は斜め下に向かっていた。
「名前、のことだが」
組んだ腕はそのまま、視線は私に向いている。目が合うと、少し困ったような表情をした。そして、息を吸う音が聞こえる。
「変えないか?」
想像もつかないような提案だった。
「えっ」
思わず、驚きの声が出てしまう。本題はこれだった。
「その、名前の意味があんまりだと思ってな…」
ひとつ、ふたつ、みっつ。そう、私の名前である「ミツ」は、数字の3という意味だ。決して良い意味ではない。真実を知った今は、むしろ嫌悪する気持ちさえある。
「お前がそのままで良いなら構わんが、どうする?」
嬉しい。素直にそう思えた。
「変えたいです」
嬉しい。意味のない名前が、意味のあるものになるとしたら。それは、とてもとても。嬉しい。
私は前のめりになって返事をした。




