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月を詠む  作者: 都合
28/61

提案

ツクヨミ様と向かい合わせに座る。これは、あの時と同じ、だ。体が強張る。何を言われるのだろう。


「体調はどうだ?」

「変わりありません」

「何か困ったことはないか?」

「ないです」

「昼間は何をしていた」

「屋敷の中を散歩していました」

「何か見つけたのか」

「中庭に咲いている花がきれいでした」

「そうか」

「はい」


振られる話題は、当たり障りのない内容で、肩透かしをくらってしまう。ツツジは「大事な話」と言っていた。これがそうには思えず、困惑してしまう。


そして、沈黙。しん、と静まり返って、どうしていいか分からなくなる。ツクヨミ様は腕を組んで、視線は斜め下に向かっていた。


「名前、のことだが」


組んだ腕はそのまま、視線は私に向いている。目が合うと、少し困ったような表情をした。そして、息を吸う音が聞こえる。


「変えないか?」


想像もつかないような提案だった。


「えっ」


思わず、驚きの声が出てしまう。本題はこれだった。


「その、名前の意味があんまりだと思ってな…」


ひとつ、ふたつ、みっつ。そう、私の名前である「ミツ」は、数字の3という意味だ。決して良い意味ではない。真実を知った今は、むしろ嫌悪する気持ちさえある。


「お前がそのままで良いなら構わんが、どうする?」


嬉しい。素直にそう思えた。


「変えたいです」


嬉しい。意味のない名前が、意味のあるものになるとしたら。それは、とてもとても。嬉しい。


私は前のめりになって返事をした。

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