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月を詠む  作者: 都合
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物心がついた時には、母という存在はいなかった。父という存在は、忙しくて、家にいなかった。母と父という存在は、そのようなものである。


朝というものは、起きて採血をするものだった。昼というものは、勉学に励むものだった。夜というものは、採血をして眠りにつくものだった。




日常というものは、窓から外を眺めるものだった。




世の中というものには、父と母としきりに話すことができる「家族」というものがあるらしい。自分と同い年くらいの「兄弟」「姉妹」というものがあるらしい。それとは違う「友人」というものがあるらしい。




子供というのは、いつか親元から巣立ち、伴侶を見つけ、大人になっていくらしい。




「もの」と「らしい」を見つけて、それを準えていた。


それが私。




父からすれば、3人目の検体でしかなかった。らしい。







「それも変、だったんですね。私は何も知りませんでした」


ツクヨミ様の言う通り、私は屋敷の敷地から出たことがない。そもそも、出たいとも思ったことがない。きっとこれも「変」なのだろう。


やるせないなぁ。アマテラス様はここまでお見通しだったのだろう。




ぼたり、ぼたり。大粒の涙が静かに音を立てながら落ちていく。泣いている場合ではない。けれど、今は少しだけ。辛くて、悲しいから。そして、やるせないから。




俯いた視線の先に、握りしめて白くなった手がある。それはすぐに、大きな手に包まれて。もう片方の手は肩に回ってきて抱き寄せられる。それが心地よくて、安心できて。この先を考えなくてはならないのに、しばらくこのままがいいと。ひどくそう思ってしまった。

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