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月を詠む  作者: 都合
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根源

視界に白銀、刀が風を切る音、あぁ、だめ。もう涙が止まらない。


「怪我は?」


来てくれた。あんな小さい声、聞こえているわけがないのに、届いたのではないかと思ってしまう。


「め、目の前に、わたしが…」


恐怖をぬぐうように、羽織の襟元をつかんだまま、自分を抱きしめる。その手は冷たくて、震えていて、どうしようもなく無力だった。


ツクヨミ様はしゃがみ込んで、私と同じ目線に合わせる。


「すまない、遅くなった」


ゆっくりと抱き寄せられて、無事を確認した後、そのまま力強く抱きしめられる。少し呼吸がしづらいくらい、でも、不思議。それに苦しさはなくて、寧ろひどく安心した。まだ涙は止まらない。私はツクヨミ様の背中に手をまわして、きつく抱き着いた。





「落ち着いたか」


事態は収束したらしい。というのも、あの後どうしても涙も体の震えも止まらず、ツクヨミ様に抱きかかえられていた。私が目撃した業が最後の一体だったらしく、討伐に出ていた他の妖がツクヨミ様に報告している声が聞こえていた。


「はい」


今は、私の自室に来て、抱きかかえられたままソファーに座っている。涙も体の震えも止まり、呼吸も落ち着いてきた。


「助けてくれて、ありがとうございました」


「間に合って良かった」


沈黙。私が聞きたいと望んだ真実は、自分の目で実際に見て知ることになってしまった。ツクヨミ様が夢を渡って、アマテラス様が心を見てまで探した人物。「嫁に寄越せ」の本当の意味。それに私が選ばれた理由。


「その、見たんだろう」


ツクヨミ様は気まずそうに会話を切り出す。私を抱える手に力が入って、それが伝わってくる。


「…はい」






「業を進化させていたのは、私だったんですね」






また、強く抱きしめられる。なんで、そう思ったけど。それ以上に、真実が私の体を抉って仕方がなかった。その痛みに涙は枯れて、思考は溶けていく。

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