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月を詠む  作者: 都合
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無知

「筆頭の三番目か」




私は知らないことが多すぎる。もしかしたら、私は何も知らないのかもしれない。これまで生きてきた中で知ったこと、経験してきたこと、これがもし世の中のほんの一部なら?ううん、もしかしたら、私の知っていること、経験してきたことが偽りだったなら。


私の中の常識はひっくり返る。そして、そこで見えてくるものは何だろう。




「お前さんには悪いが、最悪の場合、根源を絶たせてもらうぞ」




私が婚姻をすることになったのは、業の出現、業の進化だ。スサノオ様のあの言葉、業の出現及び進化には何らかの原因がある。「根源」とはそういうことだろう。業に進化されてしまっては妖も対処ができなくなる、ということ。そして、その未来が遠からず来るということ。




「この里に何をするつもりだ!」


「お前なんか花嫁でもなんでもない!!悪鬼め!!!」


「業の手下め!!出ていけ!!!」




私は業と何らかの関係があるのだろう。だから。




「辛い、悲しい、やるせない、そんな気持ちになった時、あなたの隣にはツクヨミが居るわ。きっと手を握ってくれるから、頼ってあげてね」




私の知らないことを知った時、辛くて、悲しくて、やるせない気持ちになるのかもしれない。そんな気持ちになってしまうような事が真実なのかもしれない。いや、それが真実なのだろう。




あぁ、何にも知らないんだ、私。




勉学も武道もひたむきに頑張っていたつもりだった。将来は家を支え、華族としてこの国の一端を担うなどと。戯言だった。なんだ、蓋を開けてみれば、何もものを知らぬ、空のような人間ではないか。

辛い。今でさえ、自分の存在があやふやになったような感覚がする。悲しい。自分という輪郭がぼやけて、かろうじてある微かな中身が流れていく。やるせない。真実を知るということは、これ以上が襲い掛かるのか。




ぼたり、大粒のそれが目から落ちる。それは堰を切ったように、次々と。辛くても、悲しくても、やるせなくても、どんなにそう感じても。私は知らなくてはいけない。このままは嫌だ。何も知らないまま、勘違いをしたまま、なんて。嫌。




真実を知って、私は、私にできることをしたい。

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