最適解
「あの、アマテラス様に治療を依頼してくださっと聞きました。ありがとうございます」
とにかく、私が伝えるべきことは治療のお礼だ。アマテラス様の話から、急いで呼んでくれたのは間違いない。
「構わない」
ツクヨミ様はアマテラス様の座っていた椅子に座る。少しゆっくり話ができるのかと思い、私はずっと気になっていたことを聞く。
「あ、あの。差し出がましいとは存じますが、その、あの場にいた妖達は…?」
激昂させてしまったのは、自分のせいだ。あの時、ツクヨミ様は「捕らえておけ」と言っていた。処罰に関しては私は何も言えない。でも、せめて。彼らだけが悪いわけではないことを伝えておきたい。
「なぜ気にする?」
声が少し低くなる。もしかして怒っている?でも、これは伝えておかないと自分の気が済まない。勇気を振り絞って話す。
「あの時、自室から言い争うような声が聞こえてきたんです。朝からツツジの姿が見えなかったので、気になって部屋を出て行ってしまいました」
ツクヨミ様は私の話を静かに聞いてくれる。「それで」と促されて続きを話す。
「私の姿を見て、妖達をより怒らせてしまったんだと思います。なので、私が出ていかなかったらあんなことには…」
ここまで話して言い淀む。そう、どうすれば良かったのか。あのままツツジに任せておけば、でも、ツクヨミ様が帰宅する前に暴力を振るわれてしまっていたとしたら。何が最適解だったのだろう。
「話は分かった。しかし、処分はする。彼らはしてはいけない事をしてしまった」
ツクヨミ様の言葉に思わず俯いてしまう。ここは、最後まで話を聞いてもらえただけ感謝しよう。
「処分はするが、悪いようにはしない。安心してくれ」
ため息まじりに聞こえてきた言葉は、私を安心させるには十分な言葉だった。俯いた顔を上げ、ツクヨミ様にお礼を言う。
「ありがとうございます」
私の言葉を聞いたツクヨミ様は、不思議そうな顔をする。
「しかし、治ったとはいえ、自分に暴力を振るった相手を気にするか」
「暴力を良しとは思いませんが、ツクヨミ様の里の妖です。あそこまで怒るのには何か理由があるのではないかと思ったんです」
「そうか」
ツクヨミ様は驚いているのか、少しだけ目を丸くした。そして、椅子から立ち上がって「今日はもう休め」部屋を去っていった。




