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第90話 タマちゃん、カワッタヨ

 王都ビフォアフの中心部に王城があるが、今回はお城にも王様にも用はない。

 観光客のように遠目にお城を眺めながら大通りを進んでいくと、十字架はないけど一見すると教会のような大きな建物が見えてきた。

 『ドーレ神殿』とは言うものの、見た目は神殿ではなく教会。

 この世界に来て初めて神様に関係するものを見た気がする。


 ずっと気にはなっていた。

 まんまるやら、アルマーノ様やら、ちゃんとした神様やちゃんとしてない神様がいるにも関わらず、この世界の人たちは一切神様に対する信仰を持っていない。

 ファンタジー世界ではあちこちに教会があるイメージなのに、そんなのはどこの街でも見た事がない。

 『ドーレ神殿』にしたって、『神殿』なんて大層な名前が付いているのに、そこは転職する為の施設でしかない。

 そもそも誰も神様なんて存在を知らないのだ。

 この世界で神の存在を知っているのは、俺とロリ様だけ。

 つまり、直接会った事のある人しか知らない。

 いや、正確にはタマちゃんとバックスさん、あとコノツギの王族の人たちは俺が話したから知ってるけど、それがどういうものなのかについての認識はあまりはっきりとは持っていないだろう。

 これは想像だけど、ヴリトラが喰らったという自分自身に関係する記憶――ヴリトラを封印した勇者の功績が忘れられているということは、そこには彼らを喚びよせた神様の記憶も含まれていたのではないかと考えられる。

 神という言葉だけが残り、それが何を指すのかすら分からない。

 かつて始まりの三国を興した勇者がいた。彼らは建国を行った者であり、召喚の儀と何故か魔王を討伐する者という何の脈略も無い認識だけが残された。

 しかし誰もそのことに疑問を持たない歪な世界。

 考えれば考える程気持ちが悪くなってくる。




 神殿の入り口には数人の人族の人が並んでいて、受付をした俺たちはその列に並ぶ。

 受付の人いわく、今日は空いているんでラッキーですね。とのこと。

 待つ事一時間ほど。

 扉が開いて次の方どうぞと犬耳の女性が声をかけてきた。

 前の人たちは誰も出てこないので、どうやら入り口と出口は別になっているようだ。


 ロリ様とバックスさんはお留守番。俺はタマちゃんの付き添いで中に入る。

 高い天井までの吹き抜け。大きなステンドグラスが明り取りの役目をはたしていて、中は結構明るかった。

中央には真っ赤な絨毯が真っすぐに奥に向かって伸びていて、俺たちはその奥にいる人物に向かって歩いていった。


「えっと……羊人族の方?」


 その人物は神父の様な恰好をしていて、その服から露出している部分はもこもこした白い体毛に覆われており、少し突き出した口元も含めて羊にしか見えない人物。

 カワルヨにあるダーレ神殿の神官だというメリーさん。

 神の存在を知らないのに神官。


「はははっ!よく間違われるのですよ」


 メリーさんはそう笑って頭の部分の毛をかき分けると、そこからは小さな2本の角が姿を現した。


「私はこう見えて山羊人族なのですよ。他の者よりも少々毛深いのでよく羊人族と間違われるのですけどね」


 いいや、そんなことはない。

 山羊が毛深くなったって羊になるはずがない。


「……そうなんですねえ」


「はははっ!そうなんですよ!」


 だが、大人な俺はそんなことでつっこまない。


「まあ、山羊人族と羊人族とのハーフなんですけどね」


「じゃあ、羊の方を名乗れよ!!」


 その見た目で何故に山羊を選んだ!?


「羊毛よりカシミアの方が高価じゃないですか」


「それ売れるの!?」




「では、転職をご希望されるのは、そちらの女性だけなのですか?」


「は、はい!よろしくお願いします!」


 転職するのが初めてのタマちゃん。

 そもそもどうやるのかすらも知らないので、神殿に入って来た時からかなり緊張している。

 ここに通されるまでに、何回も「痛いんですかね?」と俺に聞いてきた。

 予防接種か。


「まずはステータスボードを開いてください。その後に、こちらにある石板の上に両手の平を乗せて魔力を流し込んでください」


「はい――ステータスオープン」


 タマちゃんの目の前にステータスボードが開かれる。

 当然それはタマちゃんと俺にしか見えていない。

 そして緊張した足取りで石板のところへと近づいていき、覚悟を決めたように目を瞑ってそっと手の平をその上に乗せた。

 石板がぼんやりと光を放ち出したかと思うと、それはあっという間に強い光となってタマちゃんの全身を包んでいく。


「では目を開けてステータスボードを見てください。そこに今もあなたが選ぶことの出来る職業が表示されているはずです」


「――え?」


 メリー神官はそう言っているけど、俺には特に何も見えなかった。


「これが私の選べる職業……」


 しかしタマちゃんには見えているらしい。

 どういうこと?転職はステータスが見える俺にも見えないってこと?

 いや、見えないのが普通なんだろうけどさ。


 じっとステータスボードを見つめるタマちゃん。

 多分、そこにはいくつかの職業が見えているんだろう。

 どんな職業が選べるのか分からなかったので、特に事前に打ち合わせとかはしていないし、そもそもタマちゃんの人生に関わる選択なので俺が口を出すような事でもない。

 近いうちに別々の道を歩いて行くことになるんだから……。


「……決めました」


 数分悩んだ末にそう呟いたタマちゃん。

 その間、俺もメリー神官も一言も口を開くことなく見守っていた。


「よろしいですか?一度選んでしまうと、次に変更するまで1年経たないと転職出来ませんよ?」


「はい、構いません」


「ではその職業を強く頭の中で念じてください」



 職業を強く念じるって何?

 剣士!剣士!剣士!って感じか?


 タマちゃんの身体が再び強い光を放つ。

 おおっ!転職イベントっぽい!!


 そして数秒。その光はゆっくりとタマちゃんの中に吸い込まれるようにして消えていった。


「これで転職の儀は終了いたしました」


 メリー神官がそう言って微笑む。

 あなた、説明するためだけにいるんですね。


「タマちゃん……」


 見た目的には何も変わった様子は……。


「これは!?」


 メリー神官が驚きの声を上げる。


 変わったところあったあぁぁ。


「タイセイさん!どうですかこれ?」


 そう言ってくるりと身体を反転させるタマちゃん。

 そのお尻のところに――


「これ可愛くないです?ずっと欲しかったんですよ!!」


 長いもふもふの尻尾が……。


「これで私が猫獣人のハーフだって分かってもらえます?」


 1……2……3……。


「今までは耳しか特徴なかったですからね!ふふん!」


 7……8……9。

 根元から分かれた9本のもふもふした尻尾がふぁさふぁさと嬉しそうに動いていた。


「タマちゃん……これ何?尻尾生えてるんだけど?」


 どういうこと?!何の職業になったらこんなことになるの?!


「私もこういうのは見たことがございませんな……」


 メリー神官も、もこもこの毛に埋もれかけている目を丸くして尻尾を見つめている。


 そして俺は出たままだったタマちゃんのステータスボードを見て驚愕した。



名前  タマキ

職業  九尾の猫又

レベル  47

HP  610/610

MP  480/480

STR  127       DEF   83

INT   75       DEX   85

AGI   137       LUK    18

EXP   4299/  5200


【固有スキル】

九尾の蛍火

(固有火魔法)

九尾の結界

(固有火魔法)

九尾の印綬

(戦闘時MP量200%アップ、魔法効果200%アップ、対魔法防御200%アップ)

【スキル】

「気配察知(中)」(任意)「命中率上昇(中)」(常時)

「俊敏性上昇(中)」(常時)「対魔法耐性(小)」(常時)

「集中力上昇(小)」(戦闘時)「毒耐性(中)」(常時)

「魔力操作(小)」(戦闘時)「対精神異常(小)」(常時)

【称号】

蘇りし勇者の血脈


【装備】

魔弾の弓

火トカゲの胸当て

岩亀の籠手

超超おしゃれなブーツ



 タマちゃんがいろいろとぶっ壊れていた……。




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