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第88話 タマちゃん、カワルヨ?

 コノツギ王国からソレカラ王国までは、馬車で行く場合、寄り道をせずに進んだとして1か月ほど掛かる距離にある。


 タブンナからコノツギの距離に比べるとかなり遠いけれど、それは『世界の森』を挟んだ先にあるからだ。

 このアルデナイデという世界は3つの大陸から成っており、今いるこの大陸はその陸地の半分を『世界の森』が占めている。


 大陸中央にある『世界の森』の東にあるのが「タブンナ王国」。

 そこから少し北方へ向かった海岸沿いにあるのが「コノツギ王国」。

 そして大きく森を挟んだ西にある、この大陸で最も大きな国が「ソレカラ王国」である。

 俺たちは北の海岸沿いを通って、道中にある3つの国を通り抜けながら「ソレカラ王国」を目指していくルートを取っている。


 女神アルマーノ様の話によれば、ヴリトラの封印が完全に解けるまで多少は時間に余裕がある。

 それまでに俺はヴリトラを1人でも倒せるだけの力をつけなければいけないんだけど……。


「1人とか無理じゃね!」


「わっ!びっくりした!」


「あ、タマちゃんごめん」


 おっと、つい本音が出ちゃった。

 無関係のタマちゃんはもちろん、ロリ様だってヴリトラとの戦いに巻き込むつもりはないんだけど……。

 世界の存在を喰らう怪物だよ?

 個人が強くなったからってどうにかなるもんなの?

 そんな怪物、前の勇者たちはどうやって封印したんだよ……。


 やっぱりあれか?あのSF兵器でぶっ飛ばしたのか?


 アルマーノ様が言うには、その為に与えられている力が『その他』らしいんだけど、今のところそこまで人外の強さになっているというわけじゃない。

 マルダイのおっさんが言ったように、1人で国を亡ぼすなんてことが出来るようになるまでに何年かかるか予想も出来ない。


 もし出来るようになったとして、じゃあそれでヴリトラと戦えるかといえば、それはまだ全然無理だと思う。

 あれを倒すというのは、そういう物理的な力に頼ってどうこうなる話じゃないんだろう。

 きっとロリ様の持っている力がそのキーになるんだろうとは分かっているんだけど、そのロリ様を巻き込まないように戦うとなると……そして結局同じ考えがずっと堂々巡りしている。


「やっぱ無理じゃね!!」


「うわっ!……何が無理なんですか?」


「あ、キニシナイデ。こっちの話だから」


「いや、そんな顔でそんなこと言われても気にしますよ?」


 ん?そんな思いつめた顔してた?

 まあ、してただろうね。それだけ真剣に考えてたからさ。


「タイセイ様、ずっと脳みそがお留守の顔をしておりますよ?」


「俺の表情筋頑張れ!!」




 夜もすっかりと()け、晩飯を終えた俺たちは焚火を囲んで座っていた。

 コノツギ王国を出て7日。

 明日の昼頃には最初の通過点となる国、「カワルヨ王国」に到着する予定だ。


「ふん、ふふーん、ふふふーん」


 食後のお茶を飲みながら鼻歌を歌っているタマちゃん。

 借金のことはすっかりと忘れた様子で、かなりご機嫌のようだ。


「タマキ殿、ずいぶんとご機嫌のご様子ですな」


 バックスさんがクッキーを摘まみながら――おい!クッキーまだ残ってたのか!?俺のは!?


「だってやっと明日はカワルヨに着きますからね!どんな職業に転職しようか考えてるだけで楽しいです!」


「――え!?転職?」


 タマちゃん、それ俺聞いてないけど?

 カワルヨには寄るけど、それは食料とか補給したり、久しぶりにちゃんとしたお風呂に入りたいからだよね?


「ん?タイセイさんも前から言ってたじゃないですか。上位職に転職した方が良いって」


「う、うん。それは言ってたけど、タマちゃんが今は無理だって言ってたから……」


「だってカワルヨまではタブンナから結構遠いですし、ここまでずっと何だかんだと忙しかったんで、じゃあちょっと転職しに行ってきますってわけにはいかなかったでしょう?」


「え、あ……転職するにはカワルヨに行かないと駄目なの?」


「そりゃあそうですよ?転職の儀が行われている神殿はカワルヨにしかありませんから」


「ある程度レベルとステータスが上がったら、自動的に転職出来る職業が表示されるとかじゃなくて?」


「そんな出鱈目なことが出来るのはタイセイさんだけです」


 いや、俺は転職自体出来ないんだけど……。


「タイセイ様はカワルヨにある『ドーレ神殿』のことをご存じなかったんですか?」


「ええ……。今初めて聞きました……」


 やめて、そんな可哀そうな人を見る目で見ないでください。

 知らないことは恥じゃないんです。

 知ろうとしないことが恥なんです。


『知ろうともしていなかったと思いますが?YES/YES?』


 急に出てくんな!

 知らなかったことをどうやって聞けっていうんだよ!

 そもそも自分が転職出来ないんだから、そこまで気にしてなかったんだよ。


「この世界に生まれた人は、ほんの一部の例外を除いて天職と言われている職業を授かって生まれてきます。これは天が最初に与えた職業という意味合いで使われている言葉で、それを全うする人は少数派のようですね。ほとんどの人は途中で他の職業に転職いたします」


 天職からの転職ね。

 天職ってくらいだから元々適してる職業が与えられてるんじゃないの?


「私も生まれた時の天職は『駄菓子屋店主』でしたから。しかし城に勤めるようになって『騎士見習い』、『国家公務員 騎士部』へ転職いたしました」


「……それは波乱万丈な」


 貴族家に生まれた天職が『駄菓子屋店主』って、最初から爵位を継ぐ予定じゃないよって言われてるようなもんだよね……。

 で、駄菓子屋どこよ?


「そうやって自分のなりたい職業に近づくために経験を積んで転職していくのです。ですから、タマキ様が未だに初級職である『弓兵士』であることの方が不思議なのです。あれだけのお力をお持ちなのですから、私はずっと上級職の何かだと思っておりましたわ」


「ええ、それは私もですよ。タマキ殿のような弓も剣も一流の方が『弓兵士』だと言っているのは、何か知られたくない秘密でもあるのかと思って詮索はいたしませんでしたが」


 剣が一流になってるかどうかは素人の俺には分からないけど、騎士であるバックスさんがそう言うならそうなんだろう。

 よく俺生きてるな……。


「い、いや、私なんてタイセイさんに比べたら全然まだまだですから!それに……この力のほとんどはタイセイさんから貰ったスキルの影響でしょうし……。そう思ったら、私なんかが転職に浮かれていて良いんでしょうか……」


「そのスキルを使いこなせているのはタマキ様のお力でしょう?先日バックスが言っておりましたでしょう?ステータスだけが強くなっても、剣も握ったことのない私では戦えないと。ですから、その力を自分のものとしているのですから、それもタマキ様の実力だと思いますわ」


 ロリ様、めっちゃ良いことを言った。

 そう、俺自身も戦闘経験が必要だと考えて訓練を重ねてきた。

 タマちゃんはそんな俺に付き合う形で同じように経験を積んできた。

 だから、今のタマちゃんの力は本物だと思う。

 きっと上位職について能力が上がったとしても、その下地は十分に付いているはずだよ。


「あ、でも、私は剣を握ったことがなくても、城の兵士たちは吹っ飛ばしましたけども」


 そう言ってロリ様は愉快そうに笑った。


 全部台無しだよ!!





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