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第87話 旅は道ずれ、世は快晴

「良い天気ですねえ。絶好の旅日和ですわ」


「そうですね……」


「これだけ天気が良いと、何もなくとも気分が上がりますなあ!」


「そうですね……」


「見てくださいタイセイ様!凄く綺麗な鳥がいますわ!」


「そうですね……」


「あら?どうされましたの?あまり元気が無いようにお見受けしますけど」


「そうですね……」


「おお!姫様!おそらくタイセイ殿はお腹が空いておいでなのです!」


「ああ!そうでしたか!国を出てから何も食べていらっしゃらないですものね!」


「タマちゃん……」


「なんでしょうか……」


「助けて……」


「いえ、私が助けてもらいたいですよ……」


 君の助けてと俺の助けては全然違う意味なんだろうね……。


「では、適当なところでお昼ご飯といたしましょう!」


 ピクニックか!!



 結局、ロリ様とバックスさんは俺たちと一緒にソレカラ王国に行くことになった。

 ロリ様はドレス、バックスさんは派手な貴族服だったので、完全に冗談で言っているんだと思ってたんだけど……。


「ふふふ。見ていてください!!――風よ!服よー!!」


 ロリ様がそんなことを叫ぶと、突風と共にゴスロリのようなメイド服がどこからともなく飛んできて――


「とおっ!!」


 その掛け声に合わせて、来ていたドレスがすぽっと脱げる。

 そして、竜巻のようにロリ様の周りを飛んでいたメイド服がしゅるるるっとロリ様へと装着された。

 魔法のステッキ無しでも変身出来るんだあ……。


「キラーン!!どうです!レベルが上がったお陰で、こんなことも出来るようになりました!タイセイ様見てくれていましたか?」


 はい……いろいろと《《見えて》》ました。

 そっかあ……ドレスの下ってああなってるんだ……。


 で、そんなロリ様の隣でバックスさんはいそいそと自力で前に見た商人の恰好に着替えていた。


「えっと……何でメイド服なんですか?」


 趣味かな?


「これでしたら一緒にいてもタイセイ様のお世話係として見られるでしょう!誰にも私が姫だと分かりません!」


「いや、姫だとは分からないでしょうけど、その方がかえって目立ちますから。……いや!ついてきちゃ駄目ですよ!王様に怒られますよ!」


 というよりも、今度こそ王女誘拐犯として追われることになりかねない。


「大丈夫です!お父様の許可はいただいております!」


「嘘っ!!」


 え?そんなわけないでしょ?

 王女が勇者とはいえ、冒険者について行くのを許すとかあるの?


「嘘ではございませんわ。お母さまなんて、『敵は手強いけれども頑張って勝って来なさい』とおっしゃっておりました」


「勝つって悪神に?」


 ロリ様連れて悪神と戦うつもりは無いけど……。


「多分……そうでしょう。他に誰かと戦う予定は入っておりませんもの」


「そうで……ございますね。はい」


 ん?バックスさんの俺を見る目が生暖かいのは気のせいか?


「え、でも、護衛がバックスさん1人というのは……」


 いくらなんでも少なすぎない?

 どっちかというと、俺たちがロリ様の護衛部隊に編入するくらいでもおかしくない気がするけど?


「ええと、お父様も最初は反対されてたのですが、お母さまが別室に連れて行ってお話されてから態度を一転されまして……。その代わり、精鋭の一個師団を同行させるようにとおっしゃられました」


 婿養子よ、一体何を言われたのか。


「じゃあ、その一個師団は……」


「それが、ロリ姫様が必要ないとおっしゃられまして……」


「だってタイセイ様たちがいらっしゃるんですから必要ないでしょう?」

 精鋭の一個師団と比べられてもなあ。



「しかし王もそれで納得するはずもなく、そこで姫様が、『それなら私に勝つことが出来れば同行を許します。私よりも弱い護衛はいりません』とおっしゃられて……」


 この流れはめちゃめちゃ嫌な予感しかしない。


「それでその者たちとロリ姫様が模擬戦を――」


「あ、もう良いです。理解しました。結末も分かりましたから」


 レベルやステータスだけじゃ駄目だって言ったけど、そんなの関係ないくらいの力差があったんだろうね。

 さっきの着替えを見てたら何となく想像がつく。

 この姫様、スキルだけは完全に使いこなせてる。

 おそらく、その兵士さんたちは近づくことも出来なかったはず。


「ご想像の通りかと思いますが、兵士たちは全員吹き飛ばされてしまいました……」


「そうしたら、お父様も笑顔で了承してくださいましたわ!」


「笑顔というより、顔が引きつっておりましたけれども……」


 そりゃあ引きつりもするわ。

 つい数日前まで戦ったこともないレベル1だった娘が、目の前で王様自慢の精鋭たちを倒しちゃったんだから。


「反抗期が来たんだなと寂し気におっしゃっておられましたけど、私は反抗などしておりませんわ」


 娘がこんな反抗なんぞした日には、世のお父さんたちの命がいくつあっても足りんな。

 最悪、反抗が犯行になるとか何とか……。


 王様どんまい!

 あなたの娘さんは立派に(レベル的に)成長していますよ!



「この干し肉というものは、最初は固くてクセがあって苦手でしたけれど、慣れてくると美味しく感じますわね」


「ダンジョンで最初にロリ様が食べてるのを見た時は面白かったですよ。全然嚙み切れなくて、休憩終わってからも、ずっと口をもぐもぐしてましたからね」


「もう!それは忘れてください!恥ずかしい……」


「はははっ。まだあれから数日しか経っていないのに、随分と昔の事のように感じますなあ。この穏やかな天気で気持ちが楽になっているせいでしょうか?」


「そうかもしれないですね」


 俺は芝生に寝転んで、思いっきり身体を伸ばす。

 うーん。気持ちが――


「和んじゃった!!これじゃあ本当にピクニックじゃん!!」


「タイセイさん、温かいお茶が入りましたよ」


「あ、タマちゃんありが――ピクニックじゃん!!どこから温かいお茶もってきたの?!」


「え?ロリ姫様がもっていた魔法瓶とかいう筒に温かいお茶が入ってたんですけど?」


「魔法瓶!?え?ステンレス!?」


「えっと、そのすてんれすは分からないですけど、あれですよ」


 タマちゃんがそう言って見た方向には、とても見慣れた金属製の筒のような容器を持っているロリ様がいた。

 うん。魔法瓶だね。


「あの……それは?」


「え?これは王家に伝わる魔道具で、『魔法瓶』というものです」


 名前もそのまま魔法瓶だった。


「これには大量の水を入れておくことが出来ますの。それも入れた時の温度をそのまま保つことが出来るという便利な魔道具なのですわ」


 本当に完璧に魔法瓶だった。

 魔法のかかった、むしろ魔法瓶の上位種だった。


 それなら普通の水入れておいて欲しかったけど、温かいお茶は思いの外美味しかったんで黙っておくことにした。


 こうして俺とタマちゃん、ロリ様にバックスさんのソレカラ王国へのピクニックは始まったのだった。


「あ、タイセイ様。デザートにクッキーもありますけれど」


「いただきます!」




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