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第85話 王家に伝わる伝説の武器

 どこかで見たことのある派手やかな場所。

 高い天井には魔石の施された豪華なシャンデリアがいくつもぶら下がり、大理石のような高級そうな鉱石で作られている床には、真紅の絨毯が入り口から正面に向かって伸びている。

 絨毯を挟むように左右に並ぶ鋼の鎧を着た騎士たちは、ぴくりとも動かずに直立不動の姿勢で立っている。


 ここはコノツギ王国の謁見の間。

 壇上の玉座に座っている中年の一歩手前くらいの渋い見た目のおじさんがこの国の国王であり、ロリ様の父親でもあるヒューナード・ボランド……なんちゃら国王様。

 その隣に座っている綺麗な女性がロリ様の母親の王妃様で、その逆側に座っているのが兄であり、第1王子でもある王太子。歳は15歳とのこと。

 その隣に座っているのが2番目の兄の第2王子で12歳。

 そしてそしてその横にちょこんと座っているのがロリ様。めちゃめちゃニコニコしながらこっち見てるな。

 まあ、この国のロイヤルファミリー勢ぞろいということだ。

 それぞれ紹介はされたけど、全員フルネームで言ってこられたので、とてもではないけど覚えられない……。いきなり短縮系で呼ぶのも失礼だし、そもそもどこを縮めて良いかすら分からん。


「世界を喰らう悪神か……」


 王様は、その渋めの顔に似合った渋めの低い声でそう言った。

 うーん、渋い。


「そして初代ロマノフ王がその悪神を封印し世界を救った勇者で、我々がその子孫とは……。そのような大事が伝えられなかったということは、何とも不思議で……恐ろしいことよな」


「こんな話を信じてくれるんですか?」


 突然こんなことを言われて、普通なら信じられないと思うけど……。

 しかも自分の娘がそれに関係してるんだし。

 普通は怪しいと思わない?


「ああ。娘が生まれつき特異な力を持っている意味が、これで少しは分かった気がするのでな。それに――」


 王様は王妃様に軽く目配せをすると、王妃様も神妙な顔つきで頷いた。


「我が王家には初代国王の遺された不思議な武器があるのだ。我々王家にすら使用を禁止されているのだが、そもそも我々にはどのように使うのかも不明なのだよ。そして何故そのような物があるのか、ずっと謎だったのだが……」


 王妃様がすっと立ち上がり、俺たちの前まで降りてくる。


「その武器というのは、世界に危機が迫った時に勇者にお渡しするようにとの初代国王様の言葉が残されております。前に十六夜さんたちが来られた時にこのお話をしたのですけど……自分たちには必要ないとおっしゃられました」


 ああ、それでロリ様が鈴木さんたちの事を知っていたのか。


「あれはもしかすると、自分たちが真の勇者ではないということを知っていたのかもしれません……」


 え?まさか……そんな……。

 じゃあ3人はそれを分かった上で魔王討伐なんか続けてるってこと?

 俺には待っててくれたら大丈夫みたいなことを言って……。


「しかし、今度こそ本当に渡す時なのでしょう。お2人とも私に付いてきていただけますか?ロリエレット、あなたも一緒に来なさい」


「え?あ、はい……」

「はい。お母さま」


「王家に伝わる武器は、厳重な封印の施された部屋にあります。そして王家の血を引くものしかその部屋の扉を開けることが出来ないのです」


「あ、そうなんですね……」


 だからロリ様を一緒に……いや、ロリ様の反応を見る限り違うな……。

 俺は王妃様の肩越しに王様を見ると、目が合った瞬間にそっと目を逸らされた。


 ああ、開けられるのは王妃様の方なのね。

 あんた婿養子なのな。



 謁見の間を出て、長い長い廊下を歩く。

 階段を下り、下り、下り――地下何階なのか分からなくなった頃、突き当りに巨大な扉が見えてきた。

 マルダイのおっさんのいた部屋の扉と同じくらいの巨大な扉。


「こちらです」


 その扉の前に到着すると、王妃様はその扉の入り口にそっと右手をかざした。


「ひらけゴマ!!」


 アナクロが過ぎる!!


 そんな間抜けな合図に反応したのか、扉がゆっくりと奥へと開いていく。


「今のは王家に伝わる封印を解除する呪文なのです」


 絶対に初代勇者の中に日本人おるな!


 そして王妃様を先頭に部屋の中へ入っていく。

 すると真っ暗だった部屋の中に自然と明かりが灯りだし、その部屋の中央に……え?


「これが王家に伝わっている伝説の武器です」


 これが……伝説の武器……。

 ああ、一目見て分かる。これが普通の威力ではないだろうって。

 世界の危機にしか使っちゃ駄目なのは間違いない。


「あの……名前とかってあります?」


「ええ、私たちには意味が分からない言葉なんですけども――


『高機動型大陸間弾道反陽子爆弾搭載ミサイル射出砲』と呼ばれております」


 戦車のようなキャタピラの付いた砲台に積まれた巨大なミサイル。

 その白銀のスタイリッシュなフォルムは明らかにこの世界にそぐわない。


「武器じゃなくて兵器じゃん!!」


『反陽子爆弾とは

反対の性質を持つ素粒子を反粒子と呼び、 反粒子で構成された物質を反物質と呼びます。 反物質は通常の物質と触れると物質の状態から エネルギーの状態に変化します。 このエネルギーは質量に対し核融合の100倍、 核分裂の1000倍に相当し、それを利用した爆弾のことです』


 つまり?


『爆発すると世界が消滅します』


「絶対にいりません!!」


「あら?あなたたちも?」


「タイセイさん、これ貰っとかないんですか?これからの移動が楽になりそうですよ?」


「ああ!それでしたら私も乗ってみたいです!」


「駄目!絶対に駄目!!こんなの乗って移動してたら、どっちが世界を滅ぼす悪神か分かんなくなるから!!」


 そもそもこれは乗物じゃねーよ!

 乗ってるやつがいたらそいつが魔王だわ!


「そうですか……。では、また別の勇者が来た時にでも――」


「それも駄目です!!金輪際!未来永劫!この世界の平和の為にも絶対にここには誰も入れさせないでください!!そいつがたとえ勇者だったとしても!!」


 こんな戦力、抑止力どころの騒ぎじゃねーよ。

 どこの馬鹿がこんなもんを初代勇者に与えたんだ!!


 にこぉ。

 まんまるな白いやつの笑顔が脳裏を過る。


 ああ、あいつか……。


「王妃様。さっきの言葉訂正します。全部が終わったらこいつ貸してください」


 これならあの世界ごとあいつを吹っ飛ばせるかもしれないな。






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