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第29話 ダーウィンは来ないぞ

「じゃあ、ここに依頼完了のサインをお願いします」


 翌朝、俺たちはコボルト4匹を討伐したことを村長へと報告した。


「いやあ、本当にありがとうございました!!これでこの村も救われます!!」


 まるで巨大な魔物とかから村を救ったかのように感激している村長さん。


 家の外では、倒したコボルトの亡骸を前に喜びの声を上げている村の人たち。


 何か、めちゃくちゃ気恥ずかしい。


「では、これで依頼完了ということで。また何かありましたらギルドまでご依頼ください」


 こういう時のタマちゃんは、きちんとした言葉遣いが出来るから不思議だ。


 普段がふざけ過ぎてるのか?


「はい!何かあった時は必ず依頼いたします!!絶対に!!明日にでも!!」


 いや、解決したとこだから。


 今回の事がそんなに嬉しかったのか、村長さんは過剰なまでに喜んでいる。


 名前が気になっていたけど、さすがに深読みしすぎたみたい。


 村長さんごめんね。


 村長の家を出ると、そこにいた村の人たちからも感謝の声をかけられる。


 俺はその声に下をうつむいたままで、「はい、あ、ども」くらいしか返せないままに村を後にしたのだった。


 こないだは成長したと思ったんだけどなあ。




「あら?もう終わったの?」


 ギルドには昼前には戻ってこれた。


 依頼を受けて実質1日ほどで帰ってきた俺たちに、対応をしてくれたライラさんが驚いたようにそう言った。


「はい、運よく昨日の晩にコボルトたちが来てくれたもんで」


「へえ、あなたたちって、運にも恵まれてるみたいね」


「ええー。私たちだって、ちゃんと強くなってるんですからー」


 ライラさんの言ったことに、タマちゃんが不満そうに耳を立てる。


 口は尖らせない。


「あ、ごめんなさい。そういう意味で言ったんじゃんないのよ。どんなに強くなっても、運が悪くて命を落としたり、大怪我をする冒険者って多いの。だから、あなたたちがそういう運を持っているなら、きっとこの先も大丈夫なのかなって思って」


 ステータス上、タマちゃんのLUKは低い。


 俺に至っては占いになっていて判断出来ない。


 でも、ライラさんが言っているのは、そういうものじゃないんだと思う。


 もっと、こう――天運といったら大げさだけど、その人の生まれ持った星とかそういうやつなんじゃないかな?って思う。


 俺は日本では運が悪いなって思ってた。


 そんな時、突然この世界に召喚されて、しかも勇者召喚に巻き込まれたって聞いた時には、本当に最悪だって思った。


 でも、今はこの世界で楽しく生活することが出来ている。


 どちらかといえば、運良く生きていけてるんじゃないかって思う。


 だから、ライラさんが言っているのは、そういう人生全体を通しての運とかそういうのじゃないかな。


 俺は――今は自分の運が悪いとか思ってないし、タマちゃんやライラさんに出会えた事だって、むしろ幸運なことだったと思ってる。


 他に出会った人たちだって、一人のポンコツの除いてみんな良い人だった。


 もし、このまま時が過ぎて、元の世界に帰る時がきたら、俺は喜んで帰ることが出来るだろうか?そんな風に考えるくらい楽しく生きていけている。


 きっとこの先も、もっと楽しい事があるんだろうなって。


「でも私、LUKの数値低いですよ?」


 あ、タマちゃん。その話は俺の中で綺麗に終わったところだからもう良いよ。




『職業【コボルト】のステータスを装備しますかYES/NO』


「YES」


 ギルドで報酬を受け取った俺たちは、すでに恒例となったスキル研究会を開くべく、いつも通りの俺の部屋へと集まった。


 コボルトのステータスを確認したところ、持っていたスキルは「俊敏性上昇(極小)」という、前にウルフが持っていたのと同じスキルだった。


 それならタマちゃんにと思ったのだが、ふと思ったのだ。


 同じスキルを2つ装備することは出来ないのか?って。


 もしそれが出来たなら、本当にチートなんじゃないか?


『召喚者ソノダ・タイセイは職業【コボルト】のステータスをサブ職業スロットに装備しました。

 職業【コボルト】を装備したことで、各種ステータスが上昇しました。


 職業【コボルト】のスキル、「俊敏性上昇(極小)」はすでに上位スキル「俊敏性上昇(小)を装備している為、これを装備することは出来ません』


 ああ、どうやら下位スキルは装備出来ないみたいだ。

『スキル「俊敏性(極小)」を使用して、スキル「俊敏性(小)を進化しますか?YES/NO』


 え?進化?


「……YES」


 よく分からないけど、俺は無意識にそう答えていた。


『スキル「俊敏性(極小)を代償として、スキル「俊敏性(小)の進化を開始します。


 ――失敗。

 再度実行します。


 ――失敗。

 進化に必要な情報を解析します。


 スキル「俊敏性(小)」を進化させるにはコストが不足しています。


 スキル「俊敏性(極小)を装備インベントリへと収納します。

 

 全てのデータ移行が終了しましたので、職業【コボルト】のステータスは廃棄されます』


 ……どういうこと?失敗したのは分かるけど……コスト不足?


 もっと集めたら進化出来るってこと?


 勇者が持っていたのでさえ(小)でしょ?


 モヒカンのおかげで、(大)があることは分かってるから、そこまでは最低でも進化させられるということになる。


 うわっ!これやべえ!!


 レベル上げて、スキル進化させてってやっていけば、絶対に勇者より強くなれるじゃん!!


 今までは、スキル集めて能力底上げしていったら、それなりに強くなれるだろうとは思っていたけどさ。


 とにかく、まずは「俊敏性(極小)」を持ってそうな魔物を狙って倒していきたい。


 それで、どれだけの数があれば進化出来るか試したい。


 新たな目的を見つけた俺は、よほどにやにやしていたのだろう。


 気が付いた時には、タマちゃんが椅子の下に隠れて怯えていた。



 はーい、タマちゃん出ておいでー。おじさんは怖くないよー。




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