4話:占奈さんの占い結果【靴】
僕は朝からソワソワしていた。待ち合わせ場所の駅前商業施設に向かう。道すがら、心臓の鼓動が早まるのを感じる。街路樹の緑が鮮やかで、夏の陽射しがやけに眩しい。
今日は、占奈さんとの初デート。緊張と期待が入り混じって、胸がドキドキして止まらない。
待ち合わせ場所に着くと、すぐに占奈さんが現れ、笑顔で手を振りながら近づいてきた。紫のワンピースに身を包んだ占奈さんは、まるで夢から抜け出してきたように美しかった。彼女の髪は軽く風に揺れ、瞳にはいつもの輝きが宿っている。
『おはよう、天夜くん!待たせちゃってごめんね』
占奈さんの声は、まるで音楽のように耳に心地よかった。彼女の声が聞こえるだけで、心臓の鼓動がさらに速くなった。
『おはよう、占奈さん。僕も今来たところだよ』
占奈さんの笑顔はまるで太陽のようで、その眩しさに目を細める。占奈さんの頬がほんのり赤く染まっているのを見て、僕も顔が熱くなるのを感じた。占奈さんの笑顔を見るだけで、胸の中が温かくなっていく。
二人で水晶玉ショップへ向かう途中、僕たちは並んで歩いた。占奈さんの隣にいるだけで、心がウキウキと弾むような気持ちになる。占奈さんが楽しそうに話すたびに、その声が僕の心に響いて、胸がじんわりと温かくなっていく。
『今日はね、いろんな種類の水晶玉が見られるお店に行くんだよ。私の紫色の水晶玉もね、そこから買ったの』
占奈さんの声は、小さな子供がクリスマスプレゼントを待ちきれないような、純粋な喜びに満ちていた。彼女の目はキラキラと輝き、その輝きに僕も自然と引き込まれていく。
『紫色の水晶玉って、何か特別な意味があるの?』
僕は興味津々で聞いてみる。占奈さんの話を聞くことで、もっと占奈さんのことを知りたい、もっと占奈さんと一緒にいたいという気持ちが強くなる。
『うん!紫色の水晶玉はアメジストって言って、精神の安定や浄化の力があるんだよ。私のお祖母ちゃんがね、この色が好きだったんだ』
占奈さんは嬉しそうに語る。その瞳には、占奈さんの大切な思い出が映し出されているかのようだった。占奈さんの話を聞いていると、僕の胸の中に温かい光が灯るような気がした。
僕たちが並んで歩く道には、夏の陽射しが降り注ぎ、街路樹の緑が鮮やかに揺れている。占奈さんの隣にいるだけで、世界がキラキラと輝いて見える。占奈さんが笑うたびに、その笑顔が僕の心を満たし、僕も自然と笑顔になる。
『占奈さんが紫色の水晶玉を大切にしている理由がよくわかったよ』
占奈さんがこんなにも楽しそうに話してくれることが、僕にとって何よりも嬉しかった。占奈さんの笑顔が、僕の心を温かく包み込んでくれる。
僕たちはゆっくりと歩きながら、お互いの話に耳を傾けた。占奈さんとの時間が、まるで夢の中にいるかのように心地よく、そして幸せだった。
このままずっと、占奈さんと一緒にいられたらどんなに素晴らしいだろうと、僕は心の中で思った。
水晶玉ショップへ入ると、そこには大小さまざまな水晶玉が並んでいた。ガラスケースに反射する光がキラキラと輝いていて、神秘的な雰囲気が漂っている。占奈さんは興奮気味にあちこちを見て回り、まるで子供のように楽しんでいた。
『見て見て、天夜くん!この水晶玉、すごく綺麗だよ!』
占奈さんが手に取ったのは、淡いピンク色のローズクォーツだった。彼女の手の中で、柔らかな光を放っている。
「わあ、すごい……」
僕が驚きの声を漏らすと、占奈さんは嬉しそうに微笑んだ。その微笑みが、僕の心をますます温かく包み込んでくれる。
占奈さんは真剣な顔でいくつかの水晶玉を見比べていた。紫色の水晶玉を二つ手に取り、悩んでいるようだった。
『どっちがいいと思う?』
僕は水晶玉を見比べてみたが、正直言って違いがよくわからない。でも、占奈さんが真剣に僕の意見を求めているから、適当に答えるわけにはいかない。
『うーん、どっちも綺麗だけど……こっちかな?』
僕は左の水晶玉を指差した。占奈さんはその水晶玉を見つめ、にやけながら微笑んだ。
「これにする!天夜くんが選んでくれたんだもん。大事にするね」
占奈さんのその言葉と笑顔に、僕の心臓はさらに高鳴った。占奈さんの無邪気で純粋な反応が、僕にとって何よりも尊く感じられた。
僕たちは、選んだ水晶玉を大事に包んでもらい、店を後にした。占奈さんが楽しそうに水晶玉を抱えている姿が、僕の胸に焼き付いて離れなかった。占奈さんと一緒に過ごすこの時間が、まるで宝石のように輝いて見える。僕はこの瞬間を、大切に胸に刻んだ。
水晶玉を購入した後、二人でカフェに向かう。カフェのテラス席に座り、注文を待っている間も占奈さんは水晶玉を大事そうに抱えていた。その姿はまるで大切な宝物を抱える子供のようで、僕の心は温かくなった。
「天夜くん、今この新しい水晶玉で占ってあげる!」
占奈さんが水晶玉に手をかざし、真剣な表情で見つめ始める。占奈さんの顔に浮かぶ集中の色と、その可愛らしい仕草に、僕は思わず見とれてしまう。瞳に映る水晶玉の輝きが、占奈さんの美しさを一層引き立てていた。
「見えてきたよー! 靴! いいことあるよ~」
「靴……ありがとう、占奈さん。」
占奈さんの占いに少し戸惑いながらも、僕は笑顔で返事をする。ランチが運ばれてきて、僕たちは美味しい料理を楽しみながら、楽しい会話に花を咲かせた。占奈さんの笑顔が絶えず、その明るい笑い声が僕の心を軽くしてくれる。
占奈さんがサラダをフォークでつつきながら、嬉しそうに話す姿を見ていると、僕の胸はどんどん膨らんでいく。占奈さんの無邪気な笑顔と、楽しそうに話す様子に、僕の心は完全に奪われていた。
だけど、占奈さんの占いが気になって仕方がない。「靴」と言われたけど、靴で何がいいことなのだろう。頭の中でいろいろと考えを巡らせてみる。
「靴でいいことって、例えば新しい靴を買うとか、靴がぴったり合って気持ちいいとか、そんな感じなのかな?」
僕が半ば独り言のように呟くと、占奈さんは微笑みながら首をかしげた。
「うーん、どうだろうね。占いは必ずしも具体的じゃないから、色んな可能性があるんだよ。でも、天夜くんにとっていいことが起きるなら、それでいいんじゃないかな?」
占奈さんの無邪気な答えに、僕はまた笑顔になった。
そうか、占いの結果は必ずしも具体的なことではないかもしれないけれど、それが僕にとっての楽しみでもあるのかもしれない。占奈さんの言葉に勇気づけられ、僕はこのデートの一瞬一瞬を大切にしようと思った。
ランチを終えて、街を歩いていると、占奈さんが突然足を引きずり始めた。
「占奈さん、大丈夫?」
「うん……靴擦れしちゃったみたい……」
占奈さんは痛そうに顔をしかめている。すぐ近くのベンチに座り、足の状態を見た。こすれて赤くなり、少し血が出ているのを見て、僕の心は痛んだ。
「せっかくのデートなのに、迷惑かけてごめんね。これじゃあ占いも外れたよね。全然いいことじゃない。ごめんなさい」
占奈さんは、涙目になりながら落ちこんでしまう。そんな彼女の姿を見て、僕はせっかくのデートをこんな形で終わらせたくないと思った。いつもの笑顔でいて欲しい一心で、僕は決心した。
「占奈さん、連れていきたいお店があるんだ。一緒に来て欲しい」
占奈さんはハッと目を見開き、少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで答えた。
「行きたい」
手を差し出すと、占奈さんは少し戸惑いつつも、手を握り返してくれた。占奈さんの手の温もりが伝わってきて、僕の心はドキドキしながらも、優しい気持ちで満たされた。
「ゆっくりでいいからね」
手を繋ぎながら、僕たちはゆっくりと歩き始めた。占奈さんの一歩一歩を支えながら、一緒に歩けることが嬉しくて仕方がなかった。占奈さんの隣で感じる温かさが、僕の胸を幸せで満たしてくれる。
ペンダントショップが近づくと、僕は占奈さんに向かって微笑んだ。
「ここだよ」
占奈さんは驚いた表情で店の前に立ち止まり、僕を見つめた。
「占奈さん好きそうだなって思って」
占奈さんは微笑みながら店内に足を踏み入れた。僕たちは手を繋いだまま、様々なペンダントを見て回った。占奈さんの目がキラキラと輝き、まるで宝物を見つけた子供のように無邪気だった。
「これ、どうかな?」
僕が星の形をしたペンダントを手に取って見せると、占奈さんの目がさらに輝きを増した。
「本当に?私に?」
「うん、とっても似合うと思う。これ、プレゼントするよ」
僕がペンダントを手に取って渡すと、彼女の頬が少し赤くなり、瞳がさらに輝きを増した。
「ありがとう、天夜くん!本当に嬉しい!」
占奈さんの笑顔が再び輝き、その姿に僕の胸は熱くなった。占奈さんがこんなにも喜んでくれることが、何よりも嬉しかった。
夕方の風景が美しく染まる中、僕たちは手を繋いで歩き続けた。占奈さんがふと足を止め、水晶玉を取り出した。
「最後に、もう一度占ってみるね」
占奈さんが水晶玉に手をかざし、真剣な表情で見つめる。その姿があまりに美しくて、僕は息を呑んだ。周囲の雑音が消え、彼女と僕だけの世界が広がる。
「今日はね、幸せな日だったよ」
占奈さんの言葉に、僕の心は温かく包まれた。占奈さんの笑顔が夕日に照らされて、一層輝いて見えた。占奈さんの瞳には、僕たちの今日の思い出が映っているようだった。
その瞬間、僕は彼女の手をぎゅっと握り返した。占奈さんも驚いたように僕を見つめたが、すぐに微笑んでくれた。
「ありがとう、天夜くん。今日は本当に楽しかった」
僕はその言葉に感動し、心の中で叫んだ。
『今日は本当に幸せな日だったよ。
占い当たっているよ、占奈さん。
ありがとう。』