3話:占奈さんの占い結果【星】
家に帰ると、すぐにスマホを取り出し、占奈さんにLANEでメッセージを送ろうとした。心臓がドキドキと高鳴り、指先が震える。彼女との会話と笑顔が、頭の中で鮮やかに浮かんでくる。
『初めまして』
は大げさだし、距離が遠すぎる気がする。
『占奈さんと一緒に過ごせて嬉しかった』
一緒に過ごせたのが嬉しいと言いたいけど、気持ち悪く思われるかもしれない。打ち直しては消しを繰り返す。
結局、シンプルが一番だと思い直し、
『今日ありがとう』
とだけ書いて、メッセージを送信した。
数分間、画面を開いたまま既読を待っていたが、なかなかつかなかった。期待しすぎたのかな。少し落ち込みながらも、夜ご飯の時間になり、食卓へスマホを持って向かう。心の中で、もしかしてすぐに返事が来るかもと、わずかな希望を抱いて。
ご飯を食べているときも、今日の嬉しさ、LANEの返信の期待と不安、いろいろな気持ちが高ぶっていて、ご飯の味がまるで感じられない。家族の会話もあまり耳に入ってこない。その時、LANEの通知のバイブレーションがポケットの中から伝わり、全身を駆け抜けていく。
心臓が一気に高鳴り、胸がドキドキする。希望に満ち溢れた僕は、突然目覚めた早食いの才能を活かし、あっという間に平らげた。
「ごちそうさま!」
スマホを取り出して、占奈さんからのメッセージを確認するために、急いで自分の部屋に駆け込んだ。心の中で、ドキドキと期待が膨らんでいく。
『私の方こそありがとうね。一緒に待ってくれて嬉しかった』
そのメッセージを見た瞬間、心臓が高鳴りすぎて胸から飛び出るんじゃないかと思った。顔が熱くなり、指が震える。僕の心の中で、占奈さんの言葉が何度も響き渡る。このままの勢いで、さっき消した文字を打ち直す。
『僕も占奈さんと一緒に過ごせて嬉しかった』
手の汗が止まらない。メッセージが送信され、画面を見つめ続ける。心臓の鼓動がますます速くなり、ドキドキが止まらない。しばらくして画面が点灯し、新しいメッセージが届く。
『本当に天夜くんは優しいね』
画面に表示されたその言葉に、心臓がさらに激しく跳ねる。目を見開いて、そのメッセージを何度も読み返す。
『そんなことないよ』
恥ずかしさで謙遜するように打ち込む。手が震えるのを感じながら、すぐに占奈さんからLANEが来る。
『占い外れても嫌な顔しないで、笑ってくれるもん』
占奈さんのメッセージからも、彼女の嬉しさが伝わってくる。僕は微笑んだ。彼女の言葉には、どこか温かみがあって、心がじんわりと温かくなる。
『いや、本当はちゃんと当てないとなんだけどね』
占奈さんの落ち着いた文章からも、その中に感じられるほのかな喜びが伝わってくる。
『今週の土曜日、水晶玉一緒に見に行こうね』
そのメッセージに、胸がまたドキドキし始める。占奈さんとのデートの約束が、さらに現実味を帯びてくるのを感じながら、僕はスマホをしっかりと握りしめた。嬉しさと期待が入り混じり、もう抑えきれないほどの感情が胸に広がっていた。
それから水晶玉デートの日程を決めるやりとりを何度かした。3日後、11時に駅の前にある商業施設待ち合わせになった。人生初デート、嬉しさでいっぱい。でも、正直なにをしたらいいのかわからない。水晶玉を見に行ったあとは、何をしたらいいんだろう。頭の中であれこれとシミュレーションを繰り返すけど、どれもピンとこない。
ベッドに横になりながら、占奈さんとのデートのことを考える。頭の中には、占奈さんの笑顔と、水晶玉を覗き込む真剣な姿が浮かんでくる。これからどんな時間が待っているのか、楽しみで仕方がない。
水晶玉を覗く占奈さんを想像したときに、ふとあることを思いついた。
『占いってLANEで遠隔でできるの?』
つい、好奇心で聞いてしまった。
『その発想は無かった。ちょっと待っててね』
数分後、突然テレビ電話がかかってきた。
「え、え、え……」
慌てて部屋の扉に鍵をかけ、机の上を片付けて椅子に座る。画面には、寝間着姿の占奈さんが映っていた。紫色のパジャマに身を包み、水晶玉を抱えてベッドの上に座っている彼女の姿に、心臓が跳ね上がる。
『こんばんは。天夜くん』
緊張して声が出ない。画面越しに見る占奈さんの無邪気な笑顔に、一瞬で心を奪われてしまった。
『あれ、天夜くん?聞こえてる?』
『ご、ごめん、聞こえてるよ』
『なんか、ちょっと恥ずかしいね。ふふふ』
毎日学校で会っているのに、今は特別な瞬間に感じる。緊張と恥ずかしさで手の汗が止まらない。
『今夜の天夜くんを占ってあげる!』
太ももの間に挟まれた水晶玉に手をかざし、真剣に見つめる占奈さん。その姿があまりに可愛くて、心の中で叫んでしまう。
(こんなの無料で見ていいものなのだろうか。もう、可愛すぎる。お金払うから毎日見させて欲しい)
『見えてきたよー! 星! いいことあるよ~』
『ありがとう、占奈さん。星が見えるのかな』
カーテンを開けてみるが、曇り空で星は見えない。
『あれー、外れちゃったー』
占奈さんがつぶやく。
『これから見えるのかも』
悲しませないようにすかさずフォローを入れる。
『遠隔だから精度悪いのかも。ふふ。もっと練習しなきゃ』
『僕で練習してください』
と言おうとした瞬間、部屋の扉がたたかれる。
『お兄ちゃん。お風呂入りなさいってお母さんがうるさいよー』
扉を強く何度もたたかれる。
『なんで鍵かかってるのーもう、お兄ちゃん!』
なんと空気の読めない妹なんだ。でも仕方がない。
『わかった今行くから!』
『ごめんね、占奈さん、うるさいからちょっと行ってくるね』
テレビ電話を切りたくなかったが、本当に仕方がない。お母さんを怒らせるととんでもないことが起きる。
『天夜くん。今日は本当にありがとうね。また、占ってあげる。おやすみ』
スマホを握りしめ、占奈さんの声が耳に残る中、扉を開ける。そして、心の中で微笑む。
『お風呂に入ってくるね』と占奈さんにメッセージを送り、リビングに向かう。そこで妹が星のペンダントを付けているのを見つける。
『それどうしたんだ?』
『え?友達と先週買いに行ったんだよ、可愛いでしょ?』
驚き、興奮しながら尋ねる。
『どこで!!』
『駅前の新しいお店だよ』
妹のペンダントを見て、僕は一瞬で頭の中が占奈さんのことでいっぱいになった。心臓がまた激しく高鳴る。占奈さんがこのペンダントを気に入るだろうと想像すると、胸の中に熱い喜びが広がっていく。
水晶玉を見に行ったあと、一緒にこのお店にも行きたい。占奈さんが喜ぶ姿を想像すると、もう浮かれてしまって仕方がない。心の中で、水晶玉デートの妄想がどんどん膨らんでいく。
湯船につかりながら、夜空を見る。まだ曇っていて、星は見えないけれど、僕の頭の中には占奈さんと星がたくさん見えている。
『いいことあったよ!
占い当たっているよ!占奈さん!』