13話:占奈さん・天夜くんの占い結果
占奈さんがどこに行ってしまったのか、何を考えているのか、全く手がかりが掴めない。占奈さんの顔が脳裏に浮かび、その笑顔や悲しげな表情が交互に現れ、心が揺れ動く。焦りと不安が胸を締め付け、占奈さんを見つけることができない現実に苛立ちを覚える。
「あの場所かもしれない!」
ふと、思い出した。占奈さんが寂しげにしていたあの場所なら、今の占奈さんもそこにいるかもしれないという直感が走った。以前、雨の日に二人で話した教室。あの日、雨の音を聞きながら、占奈さんは自分の夢について語ってくれた。その記憶が胸に焼き付いている。
僕は再び廊下を駆け抜け、あの教室に向かう。心臓の鼓動が一層激しくなり、緊張と期待が入り混じった感情が胸に広がる。占奈さんがいない孤独感と、占奈さんがそこにいるかもしれない希望が入り混じる。教室のドアに手をかけ、一瞬躊躇するも、深呼吸をして意を決して扉を開けた。
教室の中は静かで、まるで時間が止まっているかのようだった。窓から差し込む陽の光が、教室全体を柔らかく包み込んでいる。その中に、窓際に立つ占奈さんの姿が見えた。彼女は水晶玉を抱きしめるように持ちながら、外の景色をじっと見つめていた。
「占奈さん!」
僕の声に反応して、占奈さんが振り返る。その目には驚きと喜びが交錯していた。彼女の目に浮かんだ涙がキラリと光る。
「天夜くん…」
占奈さんの声が震えている。占奈さんの瞳には涙が浮かんでいた。その涙を見ると、僕の胸に締め付けられるような痛みが走った。
僕は一歩一歩、占奈さんに近づきながら、胸の中の思いを整理する。教室の窓から差し込む昼の陽光が、二人の影を床に落としている。外の喧騒が遠く感じられるほど、教室の中は静かで、ただ僕たち二人だけの空間が広がっていた。
「占奈さん、どうしてここに……」
「ここに来ると、なんだか気持ちが落ち着くの。あのね、天夜くん……」
占奈さんは目を伏せて静かに言った。占奈さんの声はかすかに震えていて、まるで心の内を吐露することに躊躇しているかのようだった。占奈さんの沈黙が続く。僕は占奈さんが何を言いたいのか、心の中で想像しながら待つ。占奈さんの視線が床に落ち、唇を噛みしめる様子が、言葉にできない思いを抱えていることを物語っていた。
窓の外では木々が風に揺れ、蝉の声が遠くから微かに聞こえてくる。教室の静けさが、二人の間に漂う緊張感を一層引き立てる。占奈さんの息遣いがかすかに聞こえ、占奈さんが言葉を探している様子が伝わってくる。
僕の心臓が早鐘のように打ち始める。占奈さんの言葉を待ちながら、自分も何を言えばいいのか迷う。教室の時計の針が一秒一秒進む音が、やけに大きく感じられた。
占奈さんは視線を下に向けたまま、唇を噛みしめ、言葉を絞り出すように口を開いた。
「天夜くん、夏休みが始まると思ったらね、寂しい気持ちになってきて……だからね、その……」
占奈さんの言葉が途切れる。占奈さんの顔が少し赤くなり、涙が滲んだ瞳が揺れ動く。占奈さんの緊張が手に取るように伝わってきて、僕の心もドキドキと高鳴る。
教室の静寂が二人を包み込み、言葉にできない思いが空気中に漂う。占奈さんの涙が一筋、頬を伝い落ちるのを見て、僕の胸は締め付けられるように痛んだ。占奈さんの寂しさを感じ、僕も同じ気持ちであることを伝えたくて、勇気を振り絞った。
「僕も……僕も寂しいよ、占奈さんと、会えないのが……だから、その……」
僕たちは互いの気持ちを探り合うように見つめ合った。心の中で言葉が渦巻き、何を言えばいいのか迷う。無言のまま、教室の静寂が二人の間に漂い、心臓の鼓動が響くように感じた。
「天夜くん、私……言いたいこと、うまく言えなくて……」
占奈さんの声が震える。占奈さんの目が真剣で、何かを決意しているように見えた。占奈さんの緊張が手に取るように伝わってきて、僕の心もドキドキと高鳴る。占奈さんは視線を下に向け、言葉を探している様子が伺える。
「占奈さん、僕も同じだよ。言いたいけど、言えないことがたくさんある。でも、今は……僕が言うよ」
僕も声を震わせながら答えた。占奈さんの気持ちに気づき、同じ気持ちであることを伝えたくて仕方なかった。
占奈さんは一瞬黙って、何かを決意したように顔を上げた。
「待って、天夜くん。私が言いたいことがあるの」
占奈さんの目には決意と不安が入り混じっていた。僕はその気持ちに気づき、心の中で占奈さんを応援する。
占奈さんはゆっくりと水晶玉を取り出し、机の上に置いた。その動作は緊張しているのが伝わるほど慎重だった。
「今の天夜くんの気持ち、占ってあげる。」
占奈さんの声が震えているのがわかる。僕は一瞬驚きながらも、占奈さんの意図を理解し、静かに頷いた。
「ぼ、ぼくも占奈さんの気持ち占いたい!」
僕の言葉に、占奈さんは目を見開いて驚いたが、すぐに微笑んで頷いた。
「じゃあ、一緒に占いしよう。」
占奈さんは、自分が言いたい気持ちを抱えながらも、僕と一緒に占うことに喜びを感じているのが伝わった。その涙は安堵と嬉しさが混じっているようだった。
「誰かと一緒に占いをするのは、天夜くんが初めてだよ。」
僕たちは机を挟んで向かい合い、占奈さんが水晶玉に手をかざした。僕も同じように手をかざすと、占奈さんは僕の手を恋人繋ぎで握りしめた。占奈さんの手が僕の手を包み込み、その温かさが心に広がった。まるでこの瞬間、僕たちの心が一つになっているかのようだった。
「見えてきた?」
占奈さんの声が優しく響く。近くで感じる占奈さんの温もりに、僕は一層緊張する。
「うん、見えるよ」
僕は答えるが、実際には何も見えていない。しかし、占奈さんの気持ちは、占奈さんの瞳や手の温もりから伝わってくるようだった。
「天夜くんの今の気持ちは……」
占奈さんの声が静かに続く。占奈さんの表情は真剣そのもので、僕の心の中を見透かすような瞳が僕を見つめる。占奈さんの手のひらが微かに震えているのを感じ、僕はその手をしっかりと握り返した。占奈さんの緊張が伝わり、僕も一層気持ちを込める。
「占奈さんの今の気持ちは……」
僕も声を重ねる。占奈さんの目を見つめると、緊張で息が止まりそうになる。僕たちの間に漂う静寂が、一層深く感じられる。外の風景がぼんやりと視界に映り、まるで二人だけの世界に包まれているかのようだ。
「『夏休みも一緒に居たい』」
二人は同時に言葉を発した。そして、互いに微笑み合う。握り合った手から伝わる温かさが、心を満たしていく。言葉に出したことで、気持ちが一層強く感じられた。占奈さんの目には、ほっとしたような輝きが戻り、僕の心も安堵で満たされた。
占奈さんの目に涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。僕は慌ててポケットからハンカチを取り出し、彼女に差し出した。占奈さんの涙を拭うその手が、再び僕の手を包む。
「楽しい夏休みにしようね、天夜くん!」
占奈さんは涙を拭きながら、微笑んでそう言った。占奈さんの笑顔が再び輝きを取り戻し、僕の胸にも温かい希望が広がった。外の光が一層明るくなり、二人の未来を照らしているかのようだった。