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12話:凛音さんの占い結果【ソードの2】

 教室内はざわめきが絶えず、各自が返却されたテスト用紙を見ながら友達と感想を言い合っている。僕は、返却されたテストを手に持ちながら席に戻る。


天夜あまよくん、どうだった?」


 占奈うらなさんが微笑みながら尋ねる。その笑顔は、まるで温かい陽だまりのように僕の心を癒やしてくれる。占奈うらなさんの大きな瞳は好奇心と期待に輝いている。


「全体的にいつもより点数が高かったよ。特に、数学は高かったんだ。」


 僕は照れくさそうに答えるが、心の中では嬉しさがこみ上げていた。頑張った甲斐があったと実感している。占奈うらなさんの視線が僕を見守る中、テストの点数以上の喜びが胸に広がる。


 占奈うらなさんの微笑みがさらに輝きを増す。占奈うらなさんの笑顔は、まるで太陽の光が増していくかのように、僕の心を温める。


「すごいね!頑張ったんだね!」


 占奈うらなさんは嬉しそうに言いながら、僕の頭を優しく撫でてくれる。その手のひらの温もりが、僕の心に優しく伝わってきた。柔らかな感触とその優しさに包まれ、僕はしばし言葉を失った。


 好きな子に頭を撫でられるなんて、こんな喜びがあるなんて知らなかった。教室のざわめきが遠くに感じられ、二人だけの世界が広がっているように思えた。


占奈うらなさんのおまじないのおかげだよ!」


 僕は思わず本音を漏らしてしまった。言葉が口をついて出た瞬間、心臓が跳ね上がるのを感じる。


「おまじないって?」


 占奈うらなさんが不思議そうに首をかしげる。その仕草がまた可愛らしい。占奈うらなさんの大きな瞳が純粋な疑問を投げかけてくる。


「な、なんでもない!」


 僕は慌てて否定する。顔が熱くなり、心臓が早鐘のように打ち鳴らされるのを感じながら、占奈うらなさんの顔を直視できない。視線を逸らしながらも、占奈うらなさんの存在感が強く感じられ、ドキドキが止まらない。占奈うらなさんに追及される前に別の話題を振る。


占奈うらなさんはテストどうだったの?」


 占奈うらなさんは自信満々にテストを持ち上げ、軽く肩をそびやかせながら一歩前に出た。占奈うらなさんの目は輝き、口元には得意げな笑みが浮かんでいる。


「ふふん、見てみて!」


 と言いながら、テスト用紙を僕の前に差し出してくる。その動きには、自信と誇りが溢れていて、まるで自分の努力を証明するかのようだ。占奈うらなさんの姿がなんとも可愛らしい。


 僕はテスト用紙を見て目を見張る。全て90点台で、占奈うらなさんの頭の良さが改めて実感できる。その成績に驚きと感心の声を漏らす。


占奈うらなさん、すごいね。」


 僕は心から感心しながら言う。占奈うらなさんの努力と成果に対する純粋な敬意が込められた言葉だ。


 占奈うらなさんは少し照れながらも目を輝かせて、


天夜あまよくん、私も褒めて?」


 とお願いする。占奈うらなさんの頬がほんのり赤くなっていて、その姿がなんとも愛らしい。占奈うらなさんの言葉に、僕の心臓はさらに早く鼓動を打ち始める。


 僕は心臓がドキドキしているのを感じながらも、占奈うらなさんの頭を優しく撫で返す。柔らかくて、心地よい感触が手に伝わってくる。髪の毛がさらさらと指の間をすり抜ける感触が心地よく、手のひらに残る温もりが嬉しかった。胸が高鳴り、全身が熱くなるのを感じた。


「本当にすごいよ、占奈うらなさん。」


 僕の声が少し震えているのが自分でもわかる。占奈うらなさんの近さとその愛らしさに、言葉がうまく出てこない。


 占奈うらなさんは嬉しそうに微笑みながら、


「えへへへ」


 と声を漏らし、身体を左右に揺らす。その仕草がまた可愛くて、僕の心は一層温かくなる。占奈うらなさんとの触れ合いが、僕にとって最高のご褒美だった。


 占奈うらなさんの目が僕をじっと見つめ、その瞳に引き込まれそうになる。この瞬間が永遠に続けばいいと願わずにはいられなかった。占奈うらなさんの瞳の中に映る自分の姿が、何とも言えない幸福感を与えてくれる。


 その瞬間、萩村はぎむらが教室に入ってきて、僕に向かって声をかける。


「おーい、天夜あまよ、夏休み遊ぼうぜ!」


 僕は驚きつつも萩村はぎむらの顔を見る。


「は、萩村はぎむら。そっか、もう夏休みか」


 僕は少し考えながら返事をする。占奈うらなさんとの特別な瞬間を壊された感じがしたが、それでも彼の無邪気な提案に心が踊る。


「みんなでゲーム大会とか楽しそうだろ?」


 萩村はぎむらが目を輝かせながら言う。その笑顔は無邪気で、本当に楽しみにしているのが伝わってくる。彼の無垢な興奮が周囲に伝染していくのを感じた。


「それは楽しみかも」


 僕は占奈うらなさんの方をちらりと見る。占奈うらなさんは一瞬、何かを言いたそうな顔をしていたが、すぐに微笑んで見せた。


「どうした、天夜あまよ?」


 萩村はぎむらが不思議そうに尋ねる。


「いや、なんでもない。楽しみにしてるよ!」


 僕は笑顔で答えるが、心の中では少しの不安と占奈うらなさんに対する申し訳なさが混じっていた。


 萩村はぎむらの奴、空気読めないなと思いつつも、その無邪気さが少し羨ましくもあった。彼の提案があまりにも楽しそうで、僕の心も自然と弾む。夏休みの予定が埋まっていくのは楽しいことだと思う。


「じゃあ、また後でな!」


 萩村はぎむらは満足げに笑いながら、自分の席に戻っていった。彼の無邪気な姿を見送ると、僕も少し気持ちが軽くなった。夏休みに向けての期待が胸に広がり、少しの不安と楽しみが入り混じった感情が心を満たしていった。


 一方、萩村はぎむらと入れ替わりで桜葉さくらばさんが占奈うらなさんに声をかける。


うらちゃん、夏休み一緒に遊ばない?」


さくらちゃん。何して遊ぶ?」


 占奈うらなさんが嬉しそうに尋ねる。彼女の顔には期待と興奮が混じり、目が輝いている。


「あのねー新しくできたお店に行きたいし、映画も見に行きたい!」


 桜葉さくらばさんが笑顔で答える。その声は楽しそうで、二人が一緒に過ごす時間を本当に楽しみにしているのが伝わってくる。


「いいね!さくらちゃんと一緒にお出かけするの楽しみ!」


 占奈うらなさんが嬉しそうに笑う。その笑顔は本当に幸せそうで、見ているだけでこちらも嬉しくなる。


「細かい日程は連絡するね!」


 桜葉さくらばさんがそう言い残して、教室を去っていった。


 占奈うらなさんは僕の方を見つめ、少し不安そうな表情を見せる。


天夜あまよくん、夏休みの予定って何かあるの?」


 占奈うらなさんがそわそわしながら尋ねる。占奈うらなの声には微かな緊張が混じっているのが感じられた。


「うーん、萩村はぎむらと遊ぶのと、家族と過ごすくらいかな。占奈うらなさんは桜葉さくらばさんと遊ぶんだよね?」


 僕は占奈うらなさんの顔をじっと見ながら答える。彼女の瞳が一瞬揺れ動いたように見えた。


 占奈うらなさんは頬を膨らませて、


「私はそうだけど……天夜くんはそうなんだね……」


 と小声で答える。その声には微かな寂しさが混じっているのを感じた。占奈うらなの視線が一瞬だけ下を向き、目元に陰りが差したのを見逃さなかった。


 その後、午前中の間、占奈うらなさんは少しそっけない態度をとる。授業中、占奈うらなさんは髪の毛先をくるくると巻きながら、何度も口をむーっととんがらせている。ノートにペンを走らせる音もどこか荒々しく感じた。時折僕の方をちらっと見ては視線を逸らし、そのたびに僕の心はざわついた。占奈うらなさんの仕草一つ一つが、彼女の心の中の不安を物語っているようだった。


 占奈うらなさんが何を考えているのか知りたいけれど、その手がかりが掴めずにいた。占奈うらなさんが不機嫌な理由が分からず、僕もどう対処すれば良いのか分からず、もどかしい気持ちで過ごしていた。占奈うらなさんの態度がいつもと違うことに気づきながらも、何もできない自分に苛立ちを感じていた。


 昼休みになって、占奈うらなさんは一人で教室を飛び出してしまった。占奈うらなさんの姿が見えなくなるのを見送った瞬間、胸に痛みが走る。僕はすぐに追いかけようと立ち上がったが、占奈うらなさんの姿は見当たらない。いつも通り、花壇に行っても占奈うらなさんはいない。胸の中に焦りと不安が広がる。占奈うらなさんがどこに行ったのか、何を考えているのか、全くわからなかった。


「やっほー、天夜あまよくん!」


 突然、明るい声が背後から聞こえた。振り向くと、凜音りんねさんが笑顔で近づいてくる。その声には、まるで風が心地よく吹き抜けるような安心感があった。彼女の笑顔を見ると、少しだけ心が軽くなる気がした。


「あれ、真理まりちゃんは?」


 凜音りんねさんが心配そうに尋ねる。


「えっと……占奈うらなさんが急に飛び出して行っちゃって……」


 僕は焦りを抑えきれずに説明する。自分の無力さに苛立ちを覚えながら、焦りのままに話す。


 凜音りんねさんはため息をつきながら、


「もーほんとに君たちって。特に天夜あまよくん。もう少し真理まりちゃんを大切にしてあげて」


 呆れたように言う。その言葉が胸に突き刺さる。凜音りんねさんの言葉に僕の心に深く響いた。


「た、大切に……しているよ。僕は占奈うらなさんが困ってたら助けたいんだ。でも、今日は分からなくて……」


 僕は焦りと戸惑いを隠しきれず、声が震える。自分の無力さに対する苛立ちが声に滲んでいた。


 凜音りんねさんは僕の顔をじっと見つめ、優しく微笑む。


「仕方ないな。私の占いは高いんだよ! 今日は特別だよ!」


 その笑顔に少しだけ心が落ち着く。彼女の温かい眼差しと励ましの言葉に、わずかな希望を感じながら、占奈うらなさんを見つけ出すための手がかりを得ようと決意する。


 凜音りんねさんは、神秘的な微笑みを浮かべながらタロットカードを取り出した。彼女の指先がカードを慎重にシャッフルし始めると、カードが彼女の手の中で滑らかに動く音が教室の静寂の中に響き渡った。その音はまるで未来を予見する儀式の始まりを告げるようで、僕の胸の高鳴りが一層強くなった。


「じゃあ、天夜あまよくん、カードを一枚引いてみて」


 凜音りんねさんが優しく促す。彼女の眼差しには不思議な力が宿っていて、僕の心の奥底を見透かされているような気がした。


 僕は震える手で一枚のカードを引き抜いた。手のひらには緊張の汗がじわりと滲んでいる。カードを凜音りんねさんに渡すとき、まるで運命の一端を握りしめているような感覚に襲われた。心臓の鼓動が耳に響き渡る。


 凜音りんねさんはカードをじっくりと見つめ、眉をわずかにひそめた。


「これは……『ソードの2』のカードね」


 彼女の声は低く、慎重な響きを帯びていた。その一言で、空気が一瞬にして重くなる。


「ソードの2?」


 僕の声は驚きに震えていた。カードに描かれた剣のイラストが目に飛び込んできて、心がざわめく。何か重大なことが明かされる予感に、息を呑んだ。


 凜音りんねさんはカードを手に取りながら、静かに説明を始めた。


「このカードはね、真理まりちゃんが心の中で何かを決断しようとしていたけど、まだ言い出せなかった過去を示しているわ」


 凜音りんねさんの視線が僕に注がれる。その瞳の奥には、温かさと洞察力が溢れていた。凜音りんねさんの言葉が心に刺さり、占奈うらなさんの気持ちがより一層理解できるようになった。


占奈うらなさんは、僕に何か言いたいことがあるの?」


 僕は勇気を振り絞って尋ねた。自分の心の中にある疑問が次第に形を成していく。


 凜音りんねさんは穏やかな笑みを浮かべ、


「じゃあ天夜あまよくんはさ、占奈うらなさんに言いたいことは無いの?」


 と優しく背中を押してくれる。その言葉は、まるで僕の心に光を灯すかのように感じられた。彼女の励ましが僕の心を強くしてくれる。


「ありがとう、凜音りんねさん。僕、占奈うらなさん探してくる」


 僕は感謝の気持ちを込めて答えた。凜音りんねさんの助言が、僕の胸に響き、次に取るべき行動を明確にしてくれる。


 凜音りんねさんは満足そうに頷き、


「さあ、これで占いはおしまい。後は自分で頑張ってね。占いを現実にするのは、想いと行動だよ」


 その言葉が、僕の心に深く刻まれ、新たな決意を抱かせた。


 今、僕が占奈さんに伝えたいこと。


 きっと、占奈さんはあそこにいるのかもしれない。

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