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十月は電気石(七)
とはいえそんな素振りは微塵にも、彼女にも店内のお客様方にも見せることなく、スンとした「すまし顔」で仕事を続けているところ、矢作は空気を壊してくれる。
「ココちゃん、ありがと。」
わざわざカウンターまでやって来てからグラスを掲げ、矢作はお代わりを要求しているらしい。すぐ図に乗りやがってと思うところをグッと堪えてやる。
「おねぇさん、ココちゃんていうの?」
「そ、虹の子って書いてココって読むんだよ。」
この店には来るには早そうな若い女の子に対して、矢作はいかにも常連然としていやがる。ま、アタシのことなんて、スキに言ってくれりゃあいいさ。




