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二月は紫水晶(四)
紫苑はとにかく倉橋探偵と喫茶店に入った。学校からほど近い、級友の誰かには見られても、先生たちには見つからないといった微妙な場所に位置していた。それくらいのことは紫苑も心得ていた。
むしろ気が気ではなかったのは運転手の石原で、紫苑の行動にはヒヤヒヤさせられっ放しであった。
倉橋はとにかく、紫苑の首元に光り輝く紫水晶のブローチについて尋ねた。
「ですから、これはお祖母様の形見です。」
聞けば紫苑の祖母は亡くなる際に、紫苑の双子の姉妹、京華には蛍石の耳飾りを、翠姫には金緑石の腕輪を遺したそうだった。