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二月は紫水晶(ー)
紫苑は首元に大きなブローチをしていた。ベリーショートの黒髪はほっそりした長めの首元を誇示しているかのようにも見えたが、首元には大きめの紫色の水晶のブローチを常に付けていた。祖母の遺品らしいそれは、真っ二つに割られた美しい表面を見せつけていた。紫水晶の石言葉そのままの高貴さを称えて。
紫苑は絵に描いたようなお嬢様で、品行方正で、心清く、所作も正しく、非の打ち所のない令嬢であった。読書が趣味で、多くを語らず、怒ることなどまるで知らないといった体であると思われた。